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41話(7)帰ってきた佐野家!! お土産は物より話の方が盛り上がる?!
しおりを挟むーー帰宅 佐野家
「ただいまぁ!!」
玄関から兄の声がした。時刻は21時を過ぎている。中々帰ってこないから心配したけど、無事に帰ってきて良かった。
「お兄ちゃんおかえり」
「ただいま」
「はぁ~~疲れましたぁ」
両手にお土産袋を持った兄と、キャリーケースを2つ持った如月がリビングへ来た。お土産いっぱい。旅行は楽しめたかな?
「これ、卯月へお土産!!」
「ありがとう!!」
受け取った紙袋の中を覗くと入っていたのは『ます寿し』。お寿司かぁ。まぁいいけど。なんていうかスィーツとかさぁ、そういうの食べたかったよね。
すん……。
「睦月さん、ほらぁ~~っ!! だから甘金丹にした方が良いって言ったじゃないですかぁ」
「ぇえ~~!! がっつり食べれた方がお腹が膨れて幸せでしょ!!」
やはり、兄はセンスがない。でも私のために買ってきてくれたお土産。ありがたく頂く。
「コスモス綺麗だった??」
「すごく綺麗だったよ!! 写真見る?!」
「私、荷物片付けて来ますねー」
兄が私の隣に嬉しそうに座る。ウエストバッグからスマホを取り出し、写真の画面を見せてきた。
スマホには旅行中、如月と一緒に撮った写真がいっぱい入っており、2人の仲の良さに私も嬉しくなる。
「すごい、コスモス綺麗!!」
「でしょでしょ~~!! 卯月も来れば良かったのに」
「受験生だからね」
受験生だから行かなかった訳ではない。
私の存在は、この先にあるクリスマスも、カウントダウンも、初詣も、恋人同士で過ごしたいと願うイベントの全てを、きっと邪魔する。
だから、せめて、この旅行だけでも、2人で幸せに過ごせる時間を作ってあげたかった。
クリスマスの代わりにはならないかもしれないけど、それでも、2人にとって、かけがえのない時間と思い出になったはず。
この写真を見る限り。
「うわ、なにこの写真~~ちゅーしてるし」
「え゛っそっ……それは……えっと…そのっ……」
「しかもお兄ちゃん、ちょーデレ。やばいんだけど」
「やばくないし!!! てかもぉ見るな!!! やめろ!!! 返せ!!!」
自分が見せてきたくせに、スマホを取り返そうとしてくるとか何? しかも頬赤くして、今もデレ入ってますけど。
でもまだ写真見てるから、返してあげない。手を伸ばして、スマホを取り返そうとする兄を避けるように、手を後ろに下げる。
「私まだ見てる!!! なにこれ~~お兄ちゃん幸せ顔すぎ、きも」
「もぉ~~っ!! きもいとか言うなら返せ!!」
大半の写真が、コスモスをバックに幸福そうな兄を、如月が後ろからハグしている写真。らぶらぶ過ぎん? 完全に兄はねこなんだな。
でもそんならぶらぶな2人が好き。
もっともっと2人への理解が進んで、生きやすくなればいいのに。
「お兄ちゃんデレがひどいです」
「そっ……それは……だって……如月が好きだから……」
顔真っ赤にして何言ってるんだか。呆れてこたつの中に、もぞもぞと脚を入れていると、後ろから如月が兄を抱きしめた。
「何? もういっかい言って?」
「なんにもありません~~ばぁか」
「最近すぐばか言うんだから~~…ん」
いちゃらぶモードになってる。お兄ちゃん、如月に首の後ろ、ちゅーされてるし。これは気を遣って風呂にでも入るべき?
こたつの上のみかんを手にとり、皮を剥く。口の中にみかんを放り込む。もぐもぐ。おいし。
じっ。
如月と目が合いウインクされた。もう~~、風呂入れって? 仕方ないなぁ!! まぁちょうど入りたいと思ってたし、お風呂入るか!!!
「お風呂入ってくる、2人ともごゆっくり!!!」
「卯月さんもごゆっくり~~」
ジップロックにスマホを入れ、立ち上がる。スマホがあれば30分以上は余裕でお風呂に滞在出来る。如月にウインク仕返し、脱衣所へと向かった。
*
如月に抱きしめられながら、もぞもぞとこたつの中へ入る。こたつが特別良いなんて、思ったことなかったけど、こんな風にぎゅーしてこたつに入れるなら、良いものだ。
「睦月さん、私考えたんです」
「考えた? 何を?」
「もっといちゃいちゃを楽しみラブラブになる方法」
いちゃいちゃを楽しみラブラブになる方法? 何それ!!! そんなこと旅行中、考えてたの? 暇だな!!! 後ろを振り向き、如月を見つめる。
「既にいちゃいちゃもしてるし、ラブラブなのでは?」
「更なる高みを私は目指したいと思います!!!」
「…………(クソゲーの予感がする)」
更なる高みって何?!?! 一体、俺と何を目指してるって言うの?!?!
とはいえ、もっと如月とラブラブになれる方法があるならやってみてもいい!!! 仲良し度が増すということは、今以上に如月といちゃいちゃ出来るということ!!!
つまり、キスもハグもえっちも増える=万々歳!!! とりあえず、話だけでも聞いてみよう!!!
「どんな方法なの?」
「ボディタッチを禁じ、我慢して我慢して我慢して我慢して我慢して!!! 最高潮に性欲を高め合って、えっちする!!!」
「バカなの?」
首を傾け、白く濁った目で如月を見つめる。
これは以前、勝手にやられたレス地獄を俺公認の元、やろうとしているということか?!?! 確かに我慢し続ければ、解禁したときの快感は最高だ!!!(?)いやしかし、その1回のためだけに払う代償は大きすぎる!!!
「俺はそこまでの我慢は……」
「プラトニックこそ正義!!!」
「バカなの?」
目を瞑り何かを噛み締めるかのように語る如月に少し引く。
本当にこれをやったら、楽しいいちゃいちゃとラブラブがあるのか? すごく疑わしい!!! でも如月が嘘をついているような雰囲気はない!!! どうする?!?! 俺?!?!
「ちなみに期間は……」
「2週間」
「2週間?!?! なっが!!!! 2週間も俺に我慢しろというのかぁあぁあぁ!!!」
如月の肩を掴み揺らす。ゆさゆさ。
「ちょっ!!! やめて!!! 揺らさないで!!! ちなみに2週間の我慢後、ハロウィンコスでえっちする!!!」
「もぉ!!! バカなの?!?! 実はバカなんでしょ!!!」
「失礼な!!! 文献に則り、真面目に言ってます!!!」
再び目が白く濁る。
なんの文献?!?! 何を一体読んでるの?!?!
2週間後は確かにハロウィンの季節ですけど!!! ハロウィンコスでえっちする意味はそこにあるの?!?! それただの如月の癖でしょ!!!!
「まずハロウィンコスの必要性を感じない!!!」
どんっ。
リビングの床を拳で叩いた。
「睦月さんにはねこのコスをしてもらいます」
「それ如月が俺にただ着せたいだけでしょうがぁああぁあぁあ!!!」
ハロウィンコスとか言いながら、にゃんにゃんねこみみプレイリターン!!! やっぱただの癖!!!! 絶対阻止!!!
両手でバッテンを作り如月に見せる。
「却下!!!」
「え、やだ。もうコス注文したし」
「はぁああぁあぁあ?!?!」
ハロウィンコスやる以外認める気ないし!!! ねこのコス、ハロウィン関係なくね?!?!
いや、問題はハロウィンコスではない!!! 2週間の我慢っていう点!!! そんなに我慢したら、おっ俺……爆発する!!!! 絶対無理ぃいいいぃい!!!!
「あ、14日目までは、キスとハグのみで、ちょっとしたいちゃいちゃも寸止め程度に収めて生活しようかと」
「何それ?!?! 無理無理無理!!!! そんなことしたら死んじゃう!!! やだぁ!!!」
ぎゅう。
如月に抱きつき、ぬくもりを味わう。俺はきっと、このクソゲーを受け入れちゃうと思うから。今のうちにチャージしておかないと。
「ね? やってみません?」
「う~~ん……やだぁ……」
妖艶な瞳に真っ直ぐ見つめられ、黙ってしまう。如月が俺の頭をそっと撫でる。うぅ。本当にやらなきゃダメ?
「私、睦月さんともっとラブラブになりたいです」
「俺だってそれは同じだけどぉ……うぅ。いいよ、やるよ……」
嬉しそうな笑みを浮かべる如月に、俺のやりたくない、という気持ちは曖昧になる。仕方ないなぁ。
「じゃあ、今からでいいですか?」
「え゛今からやるの?!?!」
「うん」
はぁあぁあぁああ?!?! 今日からって急すぎだろ!!! 何故今から?!?! えっ?! 何?!?! なんで俺から離れるの?!?!
如月が抱きつく俺を離し、少しだけ距離を取る。
「じゃ、今日はもうキスとハグしませんので」
「はぁぁあぁああ?!?!」
えっ?!?! キスとハグ出来ないの?!?! アレ?!?! キスとハグのみ、みたいなこと言ってなかった?!?!
「一緒にお風呂入って裸みて、ぎゅーしながら寝ましょうね~~」
「見るだけ?!?! はぁあぁああ?!?! 抱き合って寝るの?!?! どういうこと?!?! なんのために?!?!」
ただ、性的欲求煽ってるだけじゃん!!!
「じゃ、執筆します。また後で~~」
「えっ?!?! ちょっ待っまだ話終わってないぃいぃいい!!!!」
如月のシャツを掴もうと手を伸ばす。あと少し届かず、掴めない。そんな俺にお構いなしに如月は和室へ行ってしまった。
なんていうか、全然説明になってない!!! そして、意味不明に始まった!!! もぉどうしよう~~っ!!!
さっきまで腕にあった如月のぬくもりが既に、もう思い出せない。
大丈夫。ボディタッチがなくたって、気持ちに変わりはない。不安になる気持ちを抑えるように、自分に言い聞かせた。
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