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17話 保護者が学校に来るのは面倒くさい!

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 期末テストを終えた。保護者会近づく。三者面談だ。んーー、どうする? お兄ちゃんに来てもらう? お父さんと言ってしまった如月に来てもらう? 微妙だ。

 とりあえずもう一度相談しよう。お風呂から上がり、リビングで横になって、くつろぐ兄に声をかける。

「もうすぐ保護者会があるんだけど……」
「え? いつ?」振り返り、卯月に訊く。
「7月あたまの平日」
「俺、有休使いまくってもうあんまり……」あーーね。おけ。
「如月に頼むかぁ」ちょうどお風呂から如月が出てきた。

「如月、やっぱり保護者会きてね」もらったプリントを渡す。
「ぇえ~~」プリントを受け取り見つめる。
「お願いしますよ、お父さん~~」如月は渋い顔をして、睦月のそばに座る。
「やだなぁ……睦月さん行ってよ」睦月にプリントを渡す。

「もう有休少ないんで」睦月はスマホをいじりながら答える。
「まぁいいけど」如月はスマホをいじる睦月を見つめる。自分の方を見てくれないのが不服なのか、面白くなさそうな顔をしている。

「誰かとメールしてるの?」如月の軽いヤキモチだね。
「いや、別にぃ」

 ほら、スマホから目離そうとしないから如月がイライラしてるよ。

「もーーそんなイライラしないで、会社の女の子だってば。しつこくご飯の誘いのメールが来て、断ってるの」

 むってしてる。あっ! 如月、お兄ちゃんの大事なとこ触った!

「ぁあっ ちょっ、な、なにするの!」お兄ちゃん、頬赤くなってるし。
「睦月さんのばか」如月こっちきた!
「えっ、ちょっとぉ~~ヤキモチ? ねぇ、今妬いてくれたの?」

 今更スマホから目、離しても遅いでしょ。

「卯月さん、保護者会行きます。頑張ります」如月は渡されたプリントを返す。
「ありがと。7月よろしくね」とはいえ、結構不安だ。
「はーい」如月は睦月のところへ再びいく。

「如月ぃ~~ヤキモチ~~? 他の人とメールしても俺は如月しか見えてないよ」

 毎日らぶらぶだな。私がいるとか関係なし!

「スマホばっかりで寂しかっただけですぅ」

 あ! ちゅーした! 1日何回するんだか。

「卯月さん、さっきから何見てるんですか」如月に指摘され、焦る。
「あ、いやぁ~~えへ」笑って誤魔化す。
「ま、良いですけど」

 またちゅーしてるし。何よ、何よ! 私もしてみたい!!

 体験するにはやっぱり恋人が必須かぁ。誰かを好きになるとか未だ分からないしな。早く高校生になりたい。とりあえず、色々検索してみよ~~っと。

 ーー好奇心が止まらない。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー

 ーー7月 保護者会


「如月遅いなぁ」

 教室の前で如月を待つ。そもそもだけど、まだお父さんで通っているのか、謎だ。あんな、バレバレの嘘、いまだにバレていないのか?

「佐野さん、こんにちわ」主任の先生が何故ここに?
「宮田先生、こんにちわーー」まぁこの辺を通ることもあるか。
「今日の保護者会だけど、同席しても良いかな?」

 え、えっ、ぇえええぇえ!!! ななななななんかしたっけ?? 学校をサボりまくった?? でも如月がうちへ来てから学校をサボることはなくなった。成績が悪いとか?! 友達は少ないけど、いじめとか受けてないし! 多分! え? 何? 何? こわい!

「あ~~いたいた、卯月さぁん! 遅くなりました。迷っちゃいました~~」

 相変わらずのオーバーサイズシャツ&テーパードパンツスタイルで来たか。今日は丸メガネ装備だな。如月と呼ぶのはダメだ。お父さんと呼ばなくては!

「遅いよ、お、お父さん~~」違和感しかない。
「へ? あ、は、はははいっ! 遅れてご、ごごめん、う、卯月」キョドるな!
「…………」やばい! 宮田が不審に思ってる!

「今面談してる人終わったら私の番だから」廊下に置かれた椅子に如月を案内する。
「ど、どうも……」大丈夫か?!
「佐野さんはご両親、亡くなってますよね」いきなり核心突いてきたーー!!

 如月の顔を見る。もう無理ですみたいな顔すんな! どうする? 流石にお父さんゴリ押しはキツいか。 下手な言い訳は状況悪化するか?!

「不純異性交遊になるようなことは学校側としては」

 違う違う違う!! 彼氏的な感じに思われてる!! 如月もなんか言え!! 2話あの時の堂々した感じはどうした!!

「あ、えっと……そういう関係ではないです」如月は手をもじもじさせながら答える。その仕草、逆に怪しいから!
「では、どういう関係ですか?」やばいやばいやばい! フォローしないと!

「兄の嫁です」どうだ。これは真実だ。
「男性ですよ。違いますよね」理解の壁ぐはっ!!
「どういった関係で「兄の嫁です」如月ゴリ押した!!!
「ふざけないでくだ「兄の嫁です」被せた!
「男性同士は結「兄の嫁です」良いぞ! 如月!

 そんな兄の嫁推しは、頭の硬そうな主任に通じるはずもなく。

「はぁ。別に嘘は言ってませんよ、先生。卯月さんのお兄さんの恋人……所謂、兄の嫁です」それで締めるなよ。

「お話は中でゆっくり聞きますから」もはや敗北。
「佐野さん、次どうぞ~~」担任の竹内が呼ぶ。如月と一緒に教室へ入る。後ろから宮田もついてくる。来るんかい!

「あ、お父さん! 来てくださったんですね!」竹内はパッと笑顔になる。イケメン最強。
「兄の嫁です」如月は髪を掻き上げ、竹内に微笑みかける。

「えっ? それってどういう意味ですか?」竹内の方が理解してくれそう! もう、宮田は捨てよう! 
「そういう意味だけど? センセ」如月は机に手を付け、先生に近づく。竹内に顔を近づけ、薄く笑いかけた。落として味方につける作戦か!! なるほど!!

「あっ、生徒の前で……ダメっ」いや、何もしてなくね?
「えと、先生……」如月は先生の反応に困惑しながら離れる。
「やはり、異性不純交遊があるのでは?」宮田に疑いをかけられる。
「それは断じてない」呆れながら、宮田に言い切り、席へつく。

 この年の差で何かあるように見える先生にも問題があるように私は思えるけどな。そんなに仲良さそうに見えるかな?
 如月が何か考えている。どうしたのだろう。

「睦月さんからしたら私は嫁で、私から見た睦月さんって旦那になるんですか?」如月は椅子を引きながら卯月に訊く。
「嫁じゃね?」兄が旦那ってなんか違和感。
「なるほど。お互い嫁なんですね」如月は首を傾げながら座った。

 保護者会が始まる。やはり、学校の様子を話されるのは恥ずかしい。如月はあまり興味がなさそうに、相槌を打つ。

「進路のことなのですが、行きたい高校はありますか?」それなーー。
「ないです……」卯月は俯く。
「成績に見合っていればどこでも良くないですか?」机に頬杖をつき、如月が言う。その態度どうなのか。

光峰ひかりみね高校はどうですか?」竹内が訊く。私の成績では微妙にハードルが高い。
「家から近くていいけど~~」
「佐野さんは最近成績が上がっているので、頑張れば行けるかもしれません!」うーーん。

「じゃ、光峰高校で」如月が面倒くさそうに話を進める。いやお前が決めるなよ。
「では光峰高校を目指して頑張ってみましょう」決まっちゃったよ!!
「いやぁ、出来るかなぁ? あは……」

「ちょっといいですか、やっぱり、兄の嫁というのは納得できません。一体どういう関係性で、一緒に住んでるんですか? それはどうなんですか?」おぃいぃい!! 宮田!! 食い気味で話戻すな!!

「……卯月さんのお兄さんの恋人ですが何か? 同性同士のカップルですよ。理解できないなら、それで結構ですから。これ以上土足でプライベートに入ってこないでください」如月は前髪をくるくる触りながら淡々と話す。

「……なら今日はお兄さんが来るべきでは? 何故恋人がくるのですか」宮田しつこいな。
「えーー? 義理の妹だからぁ?」なるほど!! 確かに!!

「先生~~もう終わりたいでーーす」手を挙げて、ギブアップを申し出る。
「センセ~~私もそろそろ帰りたいでーーす」如月は脚を組み、膝の上で指を組み始めた。態度わるい。

 なんだか廊下の外が騒がしくなってきた。廊下に目を向ける。人が集まっている。なんだ?

「如月先生が今来てるってホント?!」
「ここ? この教室?」
「みたいみたいみたい!」
「もう終わる? 出てくる?」

 アッーーーー!!
 最近なにも言われなかったからすっかり忘れてた!! 教室出づら!!

「騒がしくなってきてので、保護者会を終わります」終わっちまった!!!
「ありがとうございました」如月は軽く頭を下げ、席を立つ。外が騒がしいのは自分のせいだとは微塵も思ってないな。

「如月、今出てはダメだ」如月の服を掴む。
「え?」
「囲いに合う」窓の隙間から廊下の様子を伺う。うん、保護者も込みで結構集まっている。

「どうしろと?」眉を顰め、卯月に訊く。
「走って切り抜ける!!!」如月の手を握る。
「何そのパワー系の発想!!」
「追いかけられても走り去ればなんとかなる!!」親指を立て、笑って見せる。
「根性論~~~~」如月は泣いた。

「竹内先生、宮田先生、あざましたぁ~~」先生たちに軽く手を振り、ドアを思いっきり開ける。如月の手を引っ張り、廊下を駆け抜けた。

「廊下は走るなーー!!」竹内が叫ぶ。

 あはは、し~~らない。転けそうになりながら走る如月の手を引き、追っかけを振り切る。後ろを振り返る。もう誰も追いかけて来ていない。階段に腰掛け、休んだ。

「はぁ…はぁ……無理……はぁ……」如月は息切れして、ぐったりしている。
「大丈夫? でも撒けたよ? 一緒に帰ろ?」如月の背中をさする。

「そうですね……帰りましょう。まぁ、楽しかったですよ、保護者会。学校もすごく久しぶりに来ましたし、新鮮」如月は懐かしそうに校内を見つめる。
「少し見ていく?」階段から立ち上がり、如月に笑いかける。

「また追いかけられたらどうするんですか?」
「走って全員振り切る!!!」両手を腰に当て、胸を張る。撒ける自信はある。
「頭悪そうな作戦~~」如月は仕方なさそうに笑った。

 学校のこと、勉強のこと、他愛の話をしながら、通い慣れた校内を如月と巡る。如月は時々、壁に触れたりして、懐かしんでいるようだった。

「睦月さんは中学生の頃どんな感じだったんですか?」如月は誰もいない教室を覗いたりしながら卯月に訊く。
「お兄ちゃん? んーー今と変わらない気がする。成績はあんな見た目のくせに、オール5だったよ」何気に出来る兄である。

「オール5ですか……」顔を引きつらせている。
「乗せられて生徒会とか入るタイプだよ。如月は?」
「教室の隅で読書するインキャタイプです」ドヤ顔をしている。
「何それ~~」

 昔から本が好きだったんだね。如月らしい。

「私なんてそんなもんですよ。さ、帰りましょ。あれ?どこから来ましたっけ?」如月は首を傾ける。
「こっちだよ」如月を案内する。

 次からは保護者会はちゃんとお兄ちゃんに来てもらおう。如月が来ると色々、ややこしい。そして嘘はつくものではない。それでも如月と校内を見て過ごした時間は満たされるものだった。



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