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11話(6)#浴衣で寝ている貴方に欲情が止まらない?!寝ている間、失礼します?!

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 頭からバスタオルを被り、部屋に入る。いやいやいや、嘘でしょ。アリなの? この流れで、やめてくださいよ、如月さぁあああん!!


 ぐぅーー。


 そう、如月はなんだかんだ缶チューハイ1.5本を飲んでいた。久しぶりのお酒。ほろ酔い状態で露天風呂へ入浴し、酔いが回り、中々出てこない睦月を待ちきれず、寝てしまったのだ。


「ちょっとぉ~~勘弁してよ~~」


 身体の水滴をタオルで拭き取り、如月の隣に座る。頬が赤く染まり、気持ち良さそうに寝ている。ちゃっかり、浴衣を着ているが少しはだけている。


「ムラムラするんですけど……」


 生殺し過ぎる……。


 寝込みを襲う趣味はないんだよなぁ。
 手の甲で如月の頬に触れる。「ん~~」如月の声が漏れた。心臓の鼓動が早まる。


 まぁ、少しくらいなら? いいよね? 煽っといて、寝た方が悪いし? 帯の紐を解いていく。全部は脱がせず、少し、はだけているくらいがそそられる。


「はぁ~~。無理かも」


 下半身を中心に熱が身体中を巡る。元気すぎて困る。自分でどうにかするんで。少しだけ、少しだけ。もう少しだけ。如月の浴衣をめくる。


 あっーー。なんてえっちな!


 大丈夫、寝ている。如月は寝たら起きない。気づかれない。如月の様子を確認しながら、下着をずらし、腰やへそ周りに口付けをする。


「ん……」


 反応した。


 如月の様子をもう一度確認する。寝息が聞こえる。よし、寝ている。大丈夫だ。問題ない。今日は散々煽られたんだから、我慢するとか、無理ですからぁ~~。


 如月の下着の上に触れる。少し盛り上がっているところを撫でたり、口付けをして愛でる。浴衣をめくっていき、起きないように、優しく、そっと全身を愛撫する。


 時々、ぴくっと反応する如月がかわいい。あぁ、もう今日はダメだなぁ。もっと楽しみたいけど、限界。むりぃ~~。


「……はぁ……あっ……んんっ……」


 あ~~。うん。ごめん。怒るかな。絶対怒るな。分かる。でも、まぁ~~いっか。浴衣だけ羽織っておこう。


 全身に怠さと疲れが襲ってくる。なんだか起きていられなくて、そのまま隣に倒れ込み、目を閉じる。意識が少しずつ遠のいていった。



 ーー卯月&神谷 その頃


 寝慣れた和室とお布団で、すっかり気持ちよくなり、卯月は爆睡していた。


「寝相悪過ぎ!!」


 布団に対して、横に向きなり、足で蹴ってくるせいで全く眠れない。起き上がり、買っておいたビールを冷蔵庫から取り出し、開ける。


「もう!」


 苛つきながらビールを流し込む。ヤケ酒だ。


 それにしても僕も人が良すぎるだろう。酔っ払いの話を訊いて、泥水した同僚の介抱をして、センパイの恋人の我儘に付き合ってよく分からんもん見せられて、自分が引き起こしたくせに仲直りに協力して。


 なんて日だ!


「あぁ。今日、皐に電話出来なかった……」


 ヴーヴーヴー。


 スマホを確認する。
 着信、皐。すぐに出る。


「もしもし?!」


 皐からほぼかかってこないから、嬉しい。


「私への愛は、その程度だったのか。失望した、湊。二度とかけてくるな」


 ブチ。


「…………」


 耳からスマホを離し、画面を見つめる。通話時間、10秒程度。


「自分からかけてきたくせに!!」


 ビールを机に置き、頭を掻く。


 いつもある電話がなくて、寂しかったってことですか? 怒っているんですか? どういう意味ですか? 何を言って欲しいんですか? 愛情表現が歪みすぎて僕にはわかりません!!


「あーーもうっなんなんだよ」


 歪みきれない自分。愛に狂えと言われ、狂いきれない自分。自分ともどう付き合っていけばわからないのに、歪な愛を見せる皐に対して、どう対応していいかも分からない。


「僕って、皐に好きって伝えたことあったっけ……?」


 疑問が生じる。良くないな、色々。


 狂いきれないのは気持ちを伝えていないから? 気持ちを伝えたら何か変わる? この良く分からない関係性も、自分自身も、皐からの愛情も。早く、皐に会いたい。


 卯月の脚を持ち、真っ直ぐに寝かせ直す。蹴飛ばされた掛け布団を胸まで、そっと掛ける。


 子供らしい無抵抗な寝顔はとても愛らしく、頭の中でごちゃごちゃした感情が少し薄れた気がした。


 *


 ーー翌日 朝


「眩し……あ……」


 朝日で目が覚め、体を起こす。寝てしまった。どうしよう。申し訳ないことをした。


「睦月さん……すみません。私寝てしま……ん?」


 違和感。


 帯、締めて寝なかったっけ。寝相は割と良い方だ。締めが甘かった? そんな馬鹿な。完全に解けている。しかも、浴衣が乱れている。


「…………………」


 お腹の上の方に違和感。手で触ると、何かが乾燥したような、感覚。下着が微妙にズレている。隣で気持ち良さそうにうつ伏せで寝ている睦月を見る。


「おーーい」


 帯をしていない。怪しい。頬を軽く叩く。


「う~~……」


 口元が緩く、よだれが出ている。このまま有耶無耶にはさせない。


「睦月さぁーーん」


 もう一度、頬を叩く。起きろ。


「~~ねむいぃ……」


 薄目を開けた睦月と目が合う。


「夜、何をしてたのかな?」


 薄く笑い、顔を近づけて訊く。


「えっ……」


 目が泳いでいる。


「ん~~? なんか、お腹の上の辺がカピカピするんだよねぇ~~なんでこうなってるのか知ってる?」


 睦月の目をじっと見る。


「いや~~……如月が悪いんだって! 先に寝るからぁ!」


 仰向けに寝返りを打ち、両手で顔を隠している。


「やっぱり!! もう!!」


 思わず想像してしまい、羞恥で顔が赤くなる。


「だって~~浴衣の如月があんまりにも、えっちだったから~~」


 指の隙間から見つめてくる。そんな風にみて。かわいい!


「~~っもう二度と着ない!!!」


 ベッドから降り、新しいバスタオルを掴み、客室露天風呂へ行く。


「そんなこと言わないでよぉ~~中々良かったよ? 浴衣」
「待ってよ、如月ぃ~~あのさ、俺、超健康的なんだよね」
「は?」


 振り返り、睦月を見て、全てを察する。


 お願い……普通にお風呂入らせて……。

 


 *


 朝食は私と神谷、兄、如月の4人で仲良く食べた。兄が如月と仲直り出来たみたいで良かった。心なしか、前より2人が仲良くなった気がする。


「はぁ~~美味しぃ~~」


 兄が満足そうに杏仁豆腐をスプーンで食べているが、如月は箸が進んでいない。


「如月、少食だね」
「えぇ……なんか……疲れた……若いっていいね……」
「あんまり聞いてやるな」


「はい、如月あーーん」
「……会社の人もいますよ?」
「ん~~どう思われようと関係ないね。如月が居ればそれでいいや」


 如月の顔を見て、兄が目尻を下げ、微笑む姿は幸せそうだ。


 ぱくっ。


「美味しかった?」
「えぇ、とっても」


 朝から、らぶらぶだな、おい。如月の口元が緩んでいるのが見えた。



 帰り支度をし、フロントでチェックアウトをする。兄たちは会社の人たちと集まっている。


 私と如月はお開きが終わるまで、ロビーで兄を待っていた。


「もうすぐね、父の日兄の日があるの」


 会社の人に絡まれている兄を見て話す。


「あーー」


 如月は読んでいる本から目を離し、卯月を見た。


「カレーは失敗しちゃったでしょ、何作ろうかなって」
「また作る気なんですか……」


 如月の顔が渋い。


「用量を守れば良いんでしょ~~作れるって」
「う~~ん」


 如月が頭を人差し指でトントンと叩きながら真剣に考えている。


「あ、タコパにしましょう。きっと失敗しない」
「タコパ!!! 楽しそう!! そうしよう!!」


 兄の日というよりこれは自分がやりたい!!!


 たこ焼きパーティならきっと兄も楽しめるだろう。まだ少し先の予定だが、三人でタコパが出来ると思うと心踊る。


「お兄ちゃん、楽しそう」


 人に囲まれ、何か大声を出してる兄を見つめる。


「表情豊かで太陽みたいな人ですからねぇ。人が集まる」
「そういうところが好き?」
「ふふ。そうですね。少し暑苦しいけど」


 タコパで喜んでくれる姿を想像しながら、人に囲まれ、楽しそうに笑っている兄を如月とロビーから眺めた。


 *


「みたぞ~~佐野~~お前の彼女は年下か!!! しかも可愛い!!」


 後ろから同僚に思いっきり首を絞められる。


「ギブ!! ギブ!! 彼女違う!! 恋人年上!!」


 絞められている腕を叩く。


「え」


 腕が緩み、首の苦しさが解放される。


「13くらい上だよ、そいつの恋人」


 神谷がスーツケースを引きながら隣に来た。


「まさかのお姉様~~いいのそれ」


 怪訝な目で見られる。


「どういう意味……」


 首元にある腕を外す。


「いやぁ、佐野センパイの恋人、ちょーー美人ですからぁ~~見目麗しい! 色白いし、肌綺麗だし、まつ毛長いし、色っぽいし! アレはキますね~~(男だけど)」


 神谷がここぞとばかりに煽ってくる。やめろ。


「許すまじ!!! 天誅!!」


 再び首が締まる。


「やめて!! やめて!! 離して!!」
「何やってんの~~」


 上司が呆れ顔で現れた。


「抜け駆け反対の刑です」
「見ちゃったよ、朝食の時」


 上司がニヤリと笑う。


「え?」


 顔が引きつり、固まる。いや、別にいいんだけど。


「杏仁豆腐。綺麗な人だねぇ~~でもまさかだったわ~~良いと思うよ~~どうなの? どんな感じなの? いいの? 教えて~~」


 肩に腕が回され、上司に引き寄せられる。


「佐野センパイ、泥酔の借りは返してくださいよ」
「なに? 連れこんだの? なにちゃっかり!! 天誅!!!」
「痛っ! うるせーーーーー!!!」


 あぁ、もう早く帰りたい……。まったりしたい。明日有休を取っておいてよかった。ゆっくり休もう。


 飲みすぎて、失敗してしまったが、如月の気持ちを再確認出来た。


 蒼がきっかけで自分のセクシュアルマイノリティもはっきりした。女性への性的欲求がある。でも同様に如月男性へもある。バイセクシュアルかもしれない。


 女性へも性的魅力を感じる自分が、男性と付き合うことに、少しだけ不安を覚える。


 今はまだ、この不安と向き合いたくはない。如月と一緒に居たい。ただ、それだけ。分かりたくない現実から目を背けた。


「卯月、如月。お待たせ。一緒に帰ろう」
「遅いよぉ~~」
「早く帰りましょう」


 2人を見ると自然に笑みが溢れる。俺が笑えば2人も笑顔になる。安心感が得られ、その場の雰囲気が明るくなる。とても居心地が良い。さぁ、帰ろう。


 3人で横並びに歩き、帰路に着いた。

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