8 / 19
七.揺らぎの中で
しおりを挟む
七.揺らぎの中で
「君が追放されてから、しばらく僕らは行動を制限されてね。担当クリーナーが反逆行為によってそうなったのなら、当然のことなんだけど。それで、僕らはアイザワの協力があってホームを脱出してきたんだ。あのままホームに留まってもできることはなかっただろうから」
ナガレが焚き火の向こうで、あぐらをかいたままレイジに伝えた。脚の間に包まるソラを撫でながら、言葉を続ける。
「それなら、と思って君を追ってきたんだ。なんとかソラが君と合流できてよかったよ。おかげで居場所が特定できた」
ハセクラとの邂逅の後、夜明けを車内で迎えた一行は渋谷区を離れ、隣接する港区で、海辺の建造物の中へと身を寄せていた。海面が上昇したことに加え、長年の雨によって埋め立てられた地面が緩くなっていたこともあり、周辺には人間が寄り付かなくなった地域の一つだ。
レイジは東京に到着してからの顛末を話した。しかし、そこで覚えた感情についてまでは省き、当然のように、つい先日死亡したガーデンの女については伏せていた。
「カルミアを始めとして、大規模な徒党を組んでいる連中がいたなんてね。僕らがホームに籠っている間に東京は未知の土地になっていたということか」
「でもよう、考えてみたら自然だろ? 東京で生き抜くってなァ一人じゃあ相当厳しいぜ? オレっちらがホームで知らされてねえだけで、集団形成するのは、当たり前だと思うんだがなァ」
ニカイドウが缶詰のスープからスプーンを抜き取り、それで横に座るナガレを指しながら言った。
「情報が検閲されている辺りが、いよいよもって問題になってくるね」
「情報統制、ということか。だが、俺の記憶素子をホームに帰投直前にチェックしているのは、ナガレ、お前のはずだ」
「ふむ? すっと、秘密裏にオレっちらが情報抜き取るより先に、誰かが手を加えてるってか?」
ニカイドウがスプーンを咥え、思案げな表情を作った。
レイジは今までにガーデンの人間たちを、かような大規模な集団として認識している可能性があった。しかし、クリーナーはホーム帰投時に情報提出が義務付けられている。その時、あるいはそれ以前に記憶素子に干渉され、記録された情報ごと記憶が書き換えられているとしたら。そして、それを本人たちが認識できず、真実は隠されているものだとしたら、どうなるか。
集団を形成して生き抜こうとする人間たちに限らず、東京内で遭遇した巨大生物にしたって、レイジたちクリーナーは初めて目にしたわけではないのかもしれない。明らかな脅威に対して、その対策を講じられなくなるような処置を行う時点で、クリーナーたちには不都合しかない。
この恐ろしい推論に対して、レイジは組んだ手の内側に小さく言葉を吐く。
「俺たちは、何を守っていることになるんだ」
「そこだよレイジ。僕もさっきからそこが気になっていた。もしも、記憶の改竄が行われているのであれば、ホームは人間を守る気がないことになる」
「少なくとも、俺たちのような人間は駒の一つでしかないようだ」
ニカイドウが忌々しげに空のスープ缶をスプーンで打ち、忙しないリズムを刻む。
「マジで気に食わねェなァ。こういうのはよう。統括区か? 賢人脳会か? どいつがこんな気味悪ィことしてんだ?」
そのリズムをナガレがスープ缶を取り上げることで止めると、空き缶を地面に置いた。そして、いいかい、と言ってから話を始めた。
「整理しよう。この缶が統括区で、同心円内をホームとする。賢人脳会あるいは何らかの組織Xがこれを管理している。そうだね、それで、こっちの瓦礫の破片を東京としよう。ここには物資が運び込まれていた」
「そう、それは統括区の輸送車両が行なっていた」
「オーケイ、物資はホームから東京へ。この線で考えると、クリーナーがgarbageを狩る理由はなんだい?」
「待て待てナガレの兄さん、犯罪者の取り締まりや処理じゃねェとすると、そもそも追放が何の意味を持つってんだ?」
「いい質問だ」
ナガレはそう答えながら、直方体に近い石を拾い上げ横に倒すと、上にさらに小さな石を乗せると「僕の推察では人員の補充、ってことになる」と続けた。
レイジが、合点が行った、というように視線を緩やかに上げる。ちょうど、ナガレが人に見立てた小石を乗せた石を『東京』周辺に置くところだった。
「すると、クリーナーがしていたのは人口の調整ではなく、選別か?」
「調整していたとしても、対象人口はホームの方じゃない。きっと、メインは東京側の方だ」
ソラをかたわらに退かせると、ナガレがその辺りに転がっていた細く短い鉄筋を一本持ち上げ、二度、『東京』を叩く。硬質な音を受けて、ニカイドウがしかめ面を作り、腕を組んだ。
「兄さんの言葉に戻るとよう、garbageを狩る理由が余計に分からなくねェか。選別っつって、何のためにやんだァ?」
ナガレが軽く握った手を口元に当てながら思案する。
「ここは、何らかの大規模な実験場なんじゃないかと、僕は思うんだ」
「一体、何のための」
「例えば集団心理の実験。極限の状況下で、人が何をし、どうやって生き抜いていくかのシミュレーションってことが考えられる」
つまり、そのための選別。
「必要な人間だけふるいにかける。対象はここで生き抜けるだけの技術や行動力、あるいは暴力性を持った者たちだけ、ってとこじゃないかな」
話を進めていくうちに、他にもいくつかの発想が出た。
例えば、軍事的な実験場。東京都を舞台として、人間たちの闘争をモニタリング、そのデータを取ること。それを国外へ輸出し、乏しい資源しか持たない日本国の再建を目指す統括区の財源とすること。
例えば、一種の権力者層の娯楽施設。有毒雨に汚染された街並み自体を楽しむ人間がいても、この狂った世の中にあっては不思議ではない。そこには人間がいた方が面白いと考える層がいるのではないか。
例えば、上述の二つを併せた賭博場。そのような考え方をすること自体が吐き気を催すものだったが、それを裏付けるような存在が東京を闊歩していた。ガーデンの女たちが怪物と呼んでいた巨大生物だ。
「怪物が東京に放り込まれた生物兵器で、それをいかにして殺すか、という賭けが行われている。そういう仮説か?」
「うん。ハセクラの部屋にあったモニタは鑑賞、または管理のための物であったとも考えられる」
「旧い映画の影響は多分に含まれってけどよ、否定する材料は少ねェわな」
それからも議論は続いた。昼頃になるまで、一行は銘々の持論を展開した。その会話の中で、レイジは視界の拡張現実にノイズが走っていることに気付いた。始めは障害物の輪郭線を強調するソフトウェアの不具合に見えた。しかし、次第に何かが入り込んでいるようにも見えてくる。
記憶素子のバッテリは生体電気を流用している。故に、電力切れによる出力の低下などは考えられない。ならばこれは何か、という疑問がレイジの胸中に浮かぶ。おかしな症状だ。
『──それ以上はやめて──』
不意に聴覚情報が刺激されてレイジは声を上げた。
「なんだって?」
「え?」
「は?」
二人の反応に、レイジは聴こえた音声の出所が現実ではないことに行き当たる。彼は額に手を当て、深く呼吸してから、顔を手で拭った。知らず、ひどい汗をかいている。
「すまない、何かが、おかしいんだ。ハセクラの時も、おかしかった……」
ニカイドウとナガレが顔を見合わせ、そして、レイジへと視線を戻した。
「確かに、君から『すまない』なんて聞くのは初めてかもしれないね」
「だけじゃあねェよ。なーんかレイジっぽくねェわな。もっとお前はこう、『んなことどうでもいいからエマ助ける算段をしろ』ぐらい言いそうだと思ってたんだよ」
らしくない、との言葉に、レイジ自身もそう考えていた。まるで、自分が自分でないような感覚。手足の先が鈍く、体が怠い。視野も一つ後ろにずれが生じたかのように、現実味がない。すぐさま、記憶素子の心理学データベースが『離人感』というワードを呼び出し、その症状を視覚情報に表示した。レイジはそれを非表示にし、頭を振る。
思えば、ハセクラの時より前から変調はきたしていた。以前のように他者に無関心でいられなくなった。目的意識のみで動くことができなくなった。頭から離れない光景ができた。思いがけない執着が生まれた。これらの状態はレイジが今までに陥ったことのないものだった。少なくとも、ホームでクリーナーとなってからは。
彼にとっての第一義はエマを救い出し、その肉体に宿った呪縛を解くことだけだった。ハセクラの記憶情報を持ち帰り、研究機関に再生臓器の複製を作らせ、その上でエマの体内のそれを無力化すること。その計画だけが彼を突き動かしていた。
だが、彼は廃都東京において、捨ててきたはずの感傷、あるいは感情を取り戻そうとしているように感じていた。
「レイジ、君は疲れているのかもしれない。追放されてからこっち、ガーデンにいたとは言え、まともに休んではいないんじゃないのか? 動体センサーはいくつか設置しておくから、少し寝ておくといい」
「んだな。これからの方針については後ほど、ってな。車ン中に毛布やら持ってきてっから使っとけ使っとけ」
ニカイドウに背中を押され、装甲車両へと促されるレイジだったが、足取りは重かった。考えることを止めない脳の働く速度は増す一方だというのに。
そして、レイジは記憶の中の一言に思考は行き着いた。ハセクラが最後に放ったあの言葉だ。
首を少し振り向かせながら、レイジは問いかける。
「ナガレ、『ナンバー・ゼロツー』という言葉に何か心当たりはないか。ハセクラが最後に俺のことをそう呼んだ」
「ナンバー・ゼロツー……? 僕は何も……いや、ちょっと待ってくれ。どこかで何度か気にした覚えが……」
記憶を辿るナガレの眉根が寄る。
「あれじゃあねェか? レイジの記憶素子情報にちょこちょこ出てくる識別番号みてェなやつ」
「それだ!」
「俺の記憶素子に?」
ついに体を向き直らせ、レイジは珍しく強く声を上げた。
「そうそう、それだよ! 君の知覚した情報は一度暗号化されているんだけど、それを僕らで抜き取る時、一部の情報に02が末尾に含まれる文字列が入り込んでいた!」
「どうして今まで黙っていたんだ」
「……? 何度か話題に上げたはずだけど……。まあいい。とにかく、ちょっと確認してみよう。ソラ、おいで。レイジ、君は首の端子を開けてくれるかい」
ソラの尾から引き出した電極に、記憶素子直結用のアダプタを装着すると、ナガレはレイジの首筋にそれを挿し込んだ。レイジがいつものぞくりとする感覚を殊更強く感じていると、視覚情報のノイズが激しく踊った。
不快感に見舞われながらも耐えていると、ソラの投影したホロスクリーンを参照するナガレが、なんだこれは、と口走る。
「なな、なん、なんだ、ナガ、レレレ」
言語野がおかしくなった、とレイジは感じた。次いで、瞬きをすると壁が眼前に迫っていた。がつ、と鈍い音と共に額に冷たく硬い感触が押し付けられる。
壁が迫ってきた? いや、違う。自らが地面に倒れ込んだのだ。平行感覚がなく、自分が今どのような体勢にあるかが掴めない。
「ウィルス!? ニカイドウ、こっちに来て処理を手伝ってくれ! ソラもだ! このままだと脳が焼け付く!」
耳だけは冴えていた。ニカイドウが慌ただしく、バックパックから折り畳みキーボードを取り出した音がする。ナガレがホロスクリーン上のキーボードを操作する音と、非常にアナログなニカイドウのそれが重なり、遠く聴こえる雨音の中で響く。
「おい兄さん、こりゃウィルスじゃねえぞ!」
「自壊プログラムか!?」
「オレっちがバックアップ取るから、兄さんは根っこ掴んでくれ!」
がしゃがしゃ、とニカイドウが乱暴にキーボードを叩く音が一際大きく届く。
レイジは頭蓋骨の中に過剰な電気刺激を感じていた。眼球の奥にはじわりとした熱を持ち、双眸は見開かれてこそいたが、全く一定の像を結ばずにいる。それでも、記憶素子の情報は狂ったように文字列を浮かべては視覚情報の濁流を起こす。
それは全く筋道の整っていない内容であり自身が自身であることを失っていくような感覚を起こし彼は眼を瞑りたいとさえ思ったが叶わず体験したことのない頭痛とともにあれは誰だろうか誰か見覚えのない人間が鏡に映っているこれは誰だ誰だ誰だ一体何が起きている拳で鏡を殴りつけるとひび割れた鏡面には自分が同じように拳を突き出していてこんなのは自分ではない「全てを捨てて受け入れろ」誰だお前は「君はもはや君ではない」ふざけるな何を言っている「ナンバー・ゼロツー、君は今からナンバー・ゼロツーだ」何を言っている
「だ、だだだだ、誰だ、おお、お、まえ、は!」
絶叫。
「くっそ、間に合わねェ! 人格保護優先でやんぞ!」
「ソラ! 君も自分のプログラムに防壁を張るんだ! バックアップごと破壊される!」
「レイジおめェこんなんで死ぬんじゃあねェぞ!」
「レイジ! レイ──」
ぶつり、とレイジの意識が途絶えた。
応答を待っています。
応答を待っています。
記憶素子の不正なアクセスによりアポトーシスプログラムを起動してソフトウェアを終了しました。
再起動するにはなんらかのコマンドを入力してください。
──Wake up.
入力を確認しました。
再起動を開始します。
応答を待っています。
応答を待っています。
再起動まで三百六十秒。
再起動まで百十秒。
再起動まで八秒。
おはようございますナンバー・ゼロツー。
初期設定を行います。
ユーザーネームを入力してください。
──?
不正な入力です。
──My name is…?
不正な入力です。
──rage.
入力を確認しました。
ユーザーネーム“rage”を登録します。
よろしければyesを。再入力の際はnoを。
──yes.
Hello rage.
「レイジ、レイジ。起きてくれ」
「マジにこれで大丈夫なのか?」
「これしかないんだ、今の環境ではこうするしか……」
「しかし、全く動かねェぞ」
「だったらどうしたらよかったって言うんだ!」
「おっとっと、怒鳴るなよ兄さん!」
「ご、ごめん。ちょっと僕も疲れてしまったようだ……」
「しばらくかかりそうだしコーヒーでも淹れようぜ。この倉庫の中にアホほどきっちり密閉されたコーヒー豆の缶があったんだよ」
「はは……いつの間にそんなもの見つけていたんだい?」
「ここに来てからすぐに周辺漁ったじゃあねェか。あん時だあん時」
「僕の分は濃いめに淹れてくれるかい?」
「おうよ」
『毒入りか』
「違うよレイジ、今回はちゃんと……」
『それなら安心だ』
「レッ、レイジ!? 僕が分かるかい!?」
『ニカイドウ、ナガレは頭でも打ったのか』
「バッ、てめ! どうかしてんのはおめェだレイジ!」
『まだ本調子とは言い難いがな。それで、お前たちはいつまで俺を見下ろしているつもりなんだ。体が上手く動かせない。手を貸してくれ』
「……」
「……」
「レイジ、驚かないでくれよ」
『何をだ』
「君、既に起き上がっているんだよ」
『それは驚きだ。二人とも見ない間によく成長したな』
「違う、その……」
「レイジ、いいか、落ち着いて見んだぞ。ほれ、鏡だ」
『ソラがどうしたんだ』
「その、これが今の君の体なんだ。君は今、ソラの体に、人格を移し替えてあるんだよ」
「君が追放されてから、しばらく僕らは行動を制限されてね。担当クリーナーが反逆行為によってそうなったのなら、当然のことなんだけど。それで、僕らはアイザワの協力があってホームを脱出してきたんだ。あのままホームに留まってもできることはなかっただろうから」
ナガレが焚き火の向こうで、あぐらをかいたままレイジに伝えた。脚の間に包まるソラを撫でながら、言葉を続ける。
「それなら、と思って君を追ってきたんだ。なんとかソラが君と合流できてよかったよ。おかげで居場所が特定できた」
ハセクラとの邂逅の後、夜明けを車内で迎えた一行は渋谷区を離れ、隣接する港区で、海辺の建造物の中へと身を寄せていた。海面が上昇したことに加え、長年の雨によって埋め立てられた地面が緩くなっていたこともあり、周辺には人間が寄り付かなくなった地域の一つだ。
レイジは東京に到着してからの顛末を話した。しかし、そこで覚えた感情についてまでは省き、当然のように、つい先日死亡したガーデンの女については伏せていた。
「カルミアを始めとして、大規模な徒党を組んでいる連中がいたなんてね。僕らがホームに籠っている間に東京は未知の土地になっていたということか」
「でもよう、考えてみたら自然だろ? 東京で生き抜くってなァ一人じゃあ相当厳しいぜ? オレっちらがホームで知らされてねえだけで、集団形成するのは、当たり前だと思うんだがなァ」
ニカイドウが缶詰のスープからスプーンを抜き取り、それで横に座るナガレを指しながら言った。
「情報が検閲されている辺りが、いよいよもって問題になってくるね」
「情報統制、ということか。だが、俺の記憶素子をホームに帰投直前にチェックしているのは、ナガレ、お前のはずだ」
「ふむ? すっと、秘密裏にオレっちらが情報抜き取るより先に、誰かが手を加えてるってか?」
ニカイドウがスプーンを咥え、思案げな表情を作った。
レイジは今までにガーデンの人間たちを、かような大規模な集団として認識している可能性があった。しかし、クリーナーはホーム帰投時に情報提出が義務付けられている。その時、あるいはそれ以前に記憶素子に干渉され、記録された情報ごと記憶が書き換えられているとしたら。そして、それを本人たちが認識できず、真実は隠されているものだとしたら、どうなるか。
集団を形成して生き抜こうとする人間たちに限らず、東京内で遭遇した巨大生物にしたって、レイジたちクリーナーは初めて目にしたわけではないのかもしれない。明らかな脅威に対して、その対策を講じられなくなるような処置を行う時点で、クリーナーたちには不都合しかない。
この恐ろしい推論に対して、レイジは組んだ手の内側に小さく言葉を吐く。
「俺たちは、何を守っていることになるんだ」
「そこだよレイジ。僕もさっきからそこが気になっていた。もしも、記憶の改竄が行われているのであれば、ホームは人間を守る気がないことになる」
「少なくとも、俺たちのような人間は駒の一つでしかないようだ」
ニカイドウが忌々しげに空のスープ缶をスプーンで打ち、忙しないリズムを刻む。
「マジで気に食わねェなァ。こういうのはよう。統括区か? 賢人脳会か? どいつがこんな気味悪ィことしてんだ?」
そのリズムをナガレがスープ缶を取り上げることで止めると、空き缶を地面に置いた。そして、いいかい、と言ってから話を始めた。
「整理しよう。この缶が統括区で、同心円内をホームとする。賢人脳会あるいは何らかの組織Xがこれを管理している。そうだね、それで、こっちの瓦礫の破片を東京としよう。ここには物資が運び込まれていた」
「そう、それは統括区の輸送車両が行なっていた」
「オーケイ、物資はホームから東京へ。この線で考えると、クリーナーがgarbageを狩る理由はなんだい?」
「待て待てナガレの兄さん、犯罪者の取り締まりや処理じゃねェとすると、そもそも追放が何の意味を持つってんだ?」
「いい質問だ」
ナガレはそう答えながら、直方体に近い石を拾い上げ横に倒すと、上にさらに小さな石を乗せると「僕の推察では人員の補充、ってことになる」と続けた。
レイジが、合点が行った、というように視線を緩やかに上げる。ちょうど、ナガレが人に見立てた小石を乗せた石を『東京』周辺に置くところだった。
「すると、クリーナーがしていたのは人口の調整ではなく、選別か?」
「調整していたとしても、対象人口はホームの方じゃない。きっと、メインは東京側の方だ」
ソラをかたわらに退かせると、ナガレがその辺りに転がっていた細く短い鉄筋を一本持ち上げ、二度、『東京』を叩く。硬質な音を受けて、ニカイドウがしかめ面を作り、腕を組んだ。
「兄さんの言葉に戻るとよう、garbageを狩る理由が余計に分からなくねェか。選別っつって、何のためにやんだァ?」
ナガレが軽く握った手を口元に当てながら思案する。
「ここは、何らかの大規模な実験場なんじゃないかと、僕は思うんだ」
「一体、何のための」
「例えば集団心理の実験。極限の状況下で、人が何をし、どうやって生き抜いていくかのシミュレーションってことが考えられる」
つまり、そのための選別。
「必要な人間だけふるいにかける。対象はここで生き抜けるだけの技術や行動力、あるいは暴力性を持った者たちだけ、ってとこじゃないかな」
話を進めていくうちに、他にもいくつかの発想が出た。
例えば、軍事的な実験場。東京都を舞台として、人間たちの闘争をモニタリング、そのデータを取ること。それを国外へ輸出し、乏しい資源しか持たない日本国の再建を目指す統括区の財源とすること。
例えば、一種の権力者層の娯楽施設。有毒雨に汚染された街並み自体を楽しむ人間がいても、この狂った世の中にあっては不思議ではない。そこには人間がいた方が面白いと考える層がいるのではないか。
例えば、上述の二つを併せた賭博場。そのような考え方をすること自体が吐き気を催すものだったが、それを裏付けるような存在が東京を闊歩していた。ガーデンの女たちが怪物と呼んでいた巨大生物だ。
「怪物が東京に放り込まれた生物兵器で、それをいかにして殺すか、という賭けが行われている。そういう仮説か?」
「うん。ハセクラの部屋にあったモニタは鑑賞、または管理のための物であったとも考えられる」
「旧い映画の影響は多分に含まれってけどよ、否定する材料は少ねェわな」
それからも議論は続いた。昼頃になるまで、一行は銘々の持論を展開した。その会話の中で、レイジは視界の拡張現実にノイズが走っていることに気付いた。始めは障害物の輪郭線を強調するソフトウェアの不具合に見えた。しかし、次第に何かが入り込んでいるようにも見えてくる。
記憶素子のバッテリは生体電気を流用している。故に、電力切れによる出力の低下などは考えられない。ならばこれは何か、という疑問がレイジの胸中に浮かぶ。おかしな症状だ。
『──それ以上はやめて──』
不意に聴覚情報が刺激されてレイジは声を上げた。
「なんだって?」
「え?」
「は?」
二人の反応に、レイジは聴こえた音声の出所が現実ではないことに行き当たる。彼は額に手を当て、深く呼吸してから、顔を手で拭った。知らず、ひどい汗をかいている。
「すまない、何かが、おかしいんだ。ハセクラの時も、おかしかった……」
ニカイドウとナガレが顔を見合わせ、そして、レイジへと視線を戻した。
「確かに、君から『すまない』なんて聞くのは初めてかもしれないね」
「だけじゃあねェよ。なーんかレイジっぽくねェわな。もっとお前はこう、『んなことどうでもいいからエマ助ける算段をしろ』ぐらい言いそうだと思ってたんだよ」
らしくない、との言葉に、レイジ自身もそう考えていた。まるで、自分が自分でないような感覚。手足の先が鈍く、体が怠い。視野も一つ後ろにずれが生じたかのように、現実味がない。すぐさま、記憶素子の心理学データベースが『離人感』というワードを呼び出し、その症状を視覚情報に表示した。レイジはそれを非表示にし、頭を振る。
思えば、ハセクラの時より前から変調はきたしていた。以前のように他者に無関心でいられなくなった。目的意識のみで動くことができなくなった。頭から離れない光景ができた。思いがけない執着が生まれた。これらの状態はレイジが今までに陥ったことのないものだった。少なくとも、ホームでクリーナーとなってからは。
彼にとっての第一義はエマを救い出し、その肉体に宿った呪縛を解くことだけだった。ハセクラの記憶情報を持ち帰り、研究機関に再生臓器の複製を作らせ、その上でエマの体内のそれを無力化すること。その計画だけが彼を突き動かしていた。
だが、彼は廃都東京において、捨ててきたはずの感傷、あるいは感情を取り戻そうとしているように感じていた。
「レイジ、君は疲れているのかもしれない。追放されてからこっち、ガーデンにいたとは言え、まともに休んではいないんじゃないのか? 動体センサーはいくつか設置しておくから、少し寝ておくといい」
「んだな。これからの方針については後ほど、ってな。車ン中に毛布やら持ってきてっから使っとけ使っとけ」
ニカイドウに背中を押され、装甲車両へと促されるレイジだったが、足取りは重かった。考えることを止めない脳の働く速度は増す一方だというのに。
そして、レイジは記憶の中の一言に思考は行き着いた。ハセクラが最後に放ったあの言葉だ。
首を少し振り向かせながら、レイジは問いかける。
「ナガレ、『ナンバー・ゼロツー』という言葉に何か心当たりはないか。ハセクラが最後に俺のことをそう呼んだ」
「ナンバー・ゼロツー……? 僕は何も……いや、ちょっと待ってくれ。どこかで何度か気にした覚えが……」
記憶を辿るナガレの眉根が寄る。
「あれじゃあねェか? レイジの記憶素子情報にちょこちょこ出てくる識別番号みてェなやつ」
「それだ!」
「俺の記憶素子に?」
ついに体を向き直らせ、レイジは珍しく強く声を上げた。
「そうそう、それだよ! 君の知覚した情報は一度暗号化されているんだけど、それを僕らで抜き取る時、一部の情報に02が末尾に含まれる文字列が入り込んでいた!」
「どうして今まで黙っていたんだ」
「……? 何度か話題に上げたはずだけど……。まあいい。とにかく、ちょっと確認してみよう。ソラ、おいで。レイジ、君は首の端子を開けてくれるかい」
ソラの尾から引き出した電極に、記憶素子直結用のアダプタを装着すると、ナガレはレイジの首筋にそれを挿し込んだ。レイジがいつものぞくりとする感覚を殊更強く感じていると、視覚情報のノイズが激しく踊った。
不快感に見舞われながらも耐えていると、ソラの投影したホロスクリーンを参照するナガレが、なんだこれは、と口走る。
「なな、なん、なんだ、ナガ、レレレ」
言語野がおかしくなった、とレイジは感じた。次いで、瞬きをすると壁が眼前に迫っていた。がつ、と鈍い音と共に額に冷たく硬い感触が押し付けられる。
壁が迫ってきた? いや、違う。自らが地面に倒れ込んだのだ。平行感覚がなく、自分が今どのような体勢にあるかが掴めない。
「ウィルス!? ニカイドウ、こっちに来て処理を手伝ってくれ! ソラもだ! このままだと脳が焼け付く!」
耳だけは冴えていた。ニカイドウが慌ただしく、バックパックから折り畳みキーボードを取り出した音がする。ナガレがホロスクリーン上のキーボードを操作する音と、非常にアナログなニカイドウのそれが重なり、遠く聴こえる雨音の中で響く。
「おい兄さん、こりゃウィルスじゃねえぞ!」
「自壊プログラムか!?」
「オレっちがバックアップ取るから、兄さんは根っこ掴んでくれ!」
がしゃがしゃ、とニカイドウが乱暴にキーボードを叩く音が一際大きく届く。
レイジは頭蓋骨の中に過剰な電気刺激を感じていた。眼球の奥にはじわりとした熱を持ち、双眸は見開かれてこそいたが、全く一定の像を結ばずにいる。それでも、記憶素子の情報は狂ったように文字列を浮かべては視覚情報の濁流を起こす。
それは全く筋道の整っていない内容であり自身が自身であることを失っていくような感覚を起こし彼は眼を瞑りたいとさえ思ったが叶わず体験したことのない頭痛とともにあれは誰だろうか誰か見覚えのない人間が鏡に映っているこれは誰だ誰だ誰だ一体何が起きている拳で鏡を殴りつけるとひび割れた鏡面には自分が同じように拳を突き出していてこんなのは自分ではない「全てを捨てて受け入れろ」誰だお前は「君はもはや君ではない」ふざけるな何を言っている「ナンバー・ゼロツー、君は今からナンバー・ゼロツーだ」何を言っている
「だ、だだだだ、誰だ、おお、お、まえ、は!」
絶叫。
「くっそ、間に合わねェ! 人格保護優先でやんぞ!」
「ソラ! 君も自分のプログラムに防壁を張るんだ! バックアップごと破壊される!」
「レイジおめェこんなんで死ぬんじゃあねェぞ!」
「レイジ! レイ──」
ぶつり、とレイジの意識が途絶えた。
応答を待っています。
応答を待っています。
記憶素子の不正なアクセスによりアポトーシスプログラムを起動してソフトウェアを終了しました。
再起動するにはなんらかのコマンドを入力してください。
──Wake up.
入力を確認しました。
再起動を開始します。
応答を待っています。
応答を待っています。
再起動まで三百六十秒。
再起動まで百十秒。
再起動まで八秒。
おはようございますナンバー・ゼロツー。
初期設定を行います。
ユーザーネームを入力してください。
──?
不正な入力です。
──My name is…?
不正な入力です。
──rage.
入力を確認しました。
ユーザーネーム“rage”を登録します。
よろしければyesを。再入力の際はnoを。
──yes.
Hello rage.
「レイジ、レイジ。起きてくれ」
「マジにこれで大丈夫なのか?」
「これしかないんだ、今の環境ではこうするしか……」
「しかし、全く動かねェぞ」
「だったらどうしたらよかったって言うんだ!」
「おっとっと、怒鳴るなよ兄さん!」
「ご、ごめん。ちょっと僕も疲れてしまったようだ……」
「しばらくかかりそうだしコーヒーでも淹れようぜ。この倉庫の中にアホほどきっちり密閉されたコーヒー豆の缶があったんだよ」
「はは……いつの間にそんなもの見つけていたんだい?」
「ここに来てからすぐに周辺漁ったじゃあねェか。あん時だあん時」
「僕の分は濃いめに淹れてくれるかい?」
「おうよ」
『毒入りか』
「違うよレイジ、今回はちゃんと……」
『それなら安心だ』
「レッ、レイジ!? 僕が分かるかい!?」
『ニカイドウ、ナガレは頭でも打ったのか』
「バッ、てめ! どうかしてんのはおめェだレイジ!」
『まだ本調子とは言い難いがな。それで、お前たちはいつまで俺を見下ろしているつもりなんだ。体が上手く動かせない。手を貸してくれ』
「……」
「……」
「レイジ、驚かないでくれよ」
『何をだ』
「君、既に起き上がっているんだよ」
『それは驚きだ。二人とも見ない間によく成長したな』
「違う、その……」
「レイジ、いいか、落ち着いて見んだぞ。ほれ、鏡だ」
『ソラがどうしたんだ』
「その、これが今の君の体なんだ。君は今、ソラの体に、人格を移し替えてあるんだよ」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
世界樹とハネモノ少女 第一部
流川おるたな
ファンタジー
舞台は銀河系の星の一つである「アリヒュール」。
途方もなく大昔の話しだが、アリヒュールの世界は一本の大樹、つまり「世界樹」によって成り立っていた。
この世界樹にはいつからか意思が芽生え、世界がある程度成長して安定期を迎えると、自ら地上を離れ天空から世界を見守る守護者となる。
もちろん安定期とはいえ、この世界に存在する生命体の紛争は数えきれないほど起こった。
その安定期が5000年ほど経過した頃、世界樹は突如として、世界を崩壊させる者が現れる予兆を感じ取る。
世界を守るため、世界樹は7つの実を宿し世界各地に落としていった。
やがて落とされた実から人の姿をした赤子が生まれ成長していく。
世界樹の子供達の中には、他の6人と比べて明らかにハネモノ(規格外)の子供がいたのである。
これは世界樹の特別な子であるハネモノ少女の成長と冒険を描いた壮大な物語。
Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。
CoSMoS ∞ MaCHiNa ≠ ReBiRTH
L0K1
SF
機械仕掛けの宇宙は僕らの夢を見る――
西暦2000年――
Y2K問題が原因となり、そこから引き起こされたとされる遺伝子突然変異によって、異能超人が次々と誕生する。
その中で、元日を起点とし世界がタイムループしていることに気付いた一部の能力者たち。
その原因を探り、ループの阻止を試みる主人公一行。
幾度となく同じ時間を繰り返すたびに、一部の人間にだけ『メメント・デブリ』という記憶のゴミが蓄積されるようになっていき、その記憶のゴミを頼りに、彼らはループする世界を少しずつ変えていった……。
そうして、訪れた最終ループ。果たして、彼らの運命はいかに?
何不自由のない生活を送る高校生『鳳城 さとり』、幼馴染で彼が恋心を抱いている『卯月 愛唯』、もう一人の幼馴染で頼りになる親友の『黒金 銀太』、そして、謎の少女『海風 愛唯』。
オカルト好きな理系女子『水戸 雪音』や、まだ幼さが残るエキゾチック少女『天野 神子』とともに、世界の謎を解き明かしていく。
いずれ、『鳳城 さとり』は、謎の存在である『世界の理』と、謎の人物『鳴神』によって、自らに課せられた残酷な宿命を知ることになるだろう――
SMART CELL
MASAHOM
SF
全世界の超高度AIを結集した演算能力をたった1基で遥かに凌駕する超超高度AIが誕生し、第2のシンギュラリティを迎えた2155年末。大晦日を翌日に控え17歳の高校生、来栖レンはオカルト研究部の深夜の極秘集会の買い出し中に謎の宇宙船が東京湾に墜落したことを知る。翌日、突如として来栖家にアメリカ人の少女がレンの学校に留学するためホームステイしに来ることになった。少女の名前はエイダ・ミラー。冬休み中に美少女のエイダはレンと親しい関係性を築いていったが、登校初日、エイダは衝撃的な自己紹介を口にする。東京湾に墜落した宇宙船の生き残りであるというのだ。親しく接していたエイダの言葉に不穏な空気を感じ始めるレン。エイダと出会ったのを境にレンは地球深部から届くオカルト界隈では有名な謎のシグナル・通称Z信号にまつわる地球の真実と、人類の隠された機能について知ることになる。
※この作品はアナログハック・オープンリソースを使用しています。 https://www63.atwiki.jp/analoghack/
恋するジャガーノート
まふゆとら
SF
【全話挿絵つき!巨大怪獣バトル×怪獣擬人化ラブコメ!】
遊園地のヒーローショーでスーツアクターをしている主人公・ハヤトが拾ったのは、小さな怪獣・クロだった。
クロは自分を助けてくれたハヤトと心を通わせるが、ふとしたきっかけで力を暴走させ、巨大怪獣・ヴァニラスへと変貌してしまう。
対怪獣防衛組織JAGD(ヤクト)から攻撃を受けるヴァニラス=クロを救うため、奔走するハヤト。
道中で事故に遭って死にかけた彼を、母の形見のペンダントから現れた自称・妖精のシルフィが救う。
『ハヤト、力が欲しい? クロを救える、力が』
シルフィの言葉に頷いたハヤトは、彼女の協力を得てクロを救う事に成功するが、
光となって解けた怪獣の体は、なぜか美少女の姿に変わってしまい……?
ヒーローに憧れる記憶のない怪獣・クロ、超古代から蘇った不良怪獣・カノン、地球へ逃れてきた伝説の不死蝶・ティータ──
三人(体)の怪獣娘とハヤトによる、ドタバタな日常と手に汗握る戦いの日々が幕を開ける!
「pixivFANBOX」(https://mafuyutora.fanbox.cc/)と「Fantia」(fantia.jp/mafuyu_tora)では、会員登録不要で電子書籍のように読めるスタイル(縦書き)で公開しています!有料コースでは怪獣紹介ミニコーナーも!ぜひご覧ください!
※登場する怪獣・キャラクターは全てオリジナルです。
※全編挿絵付き。画像・文章の無断転載は禁止です。
最終防衛ライン・カゴシマ
ユキトシ時雨
SF
人を異形のバケモノへと変貌させる病『ヴァンパイア・シンドローム』の蔓延によって、日本に残される領土は九州の最南端『鹿児島』のみとなった。
生存権の奪還と吸血鬼たちの殲滅───それを悲願と抱える第四五独立鉄騎連隊〈サツマハヤト〉は人型兵器を用いて、抵抗をつづけるも勝機はまるで見えそうにない。
そして、東京育ちの少年・島津鋼太郎は〈サツマハヤト〉に所属する軍人ながらも、その性格ゆえに周囲との衝突を繰り返していた。挙句についたあだ名は”狂犬”である。
「俺の居場所はここじゃねぇ。どんなことをしてでも東京に帰るんだ」
そんな信念を抱いた鋼太郎のもとにとある誘いが持ち掛けられる。
問題児ばかりを集めた特殊機甲技術試験小隊────通称『ケロベロス小隊』への勧誘だった。
そこで出会ったのは地元をこよなく愛する少女・天璋院茜。鹿児島を大好きな変人少女と、東京への帰還のために戦う鋼太郎。両者の対立は必然といえよう。
自らの尊厳と居場所を取り戻すためのハードアクション・ここに堂々開幕ッ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる