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1章「ふたり」
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まるで、ふんわりと積もる雪のようだ。
彼女を初めて見た人なら誰しも皆そんなことを考えると言う。まるで日本人とは思えない整った顔立ちと、ブルーの血の通りが見える色白な肌、そしてそんな風貌から現れる可憐な笑顔は、大抵の男を出逢った一瞬で落とすとさえ言われている。
彼、マネージャーの大槻翔琉もまた、この日も。都内の撮影スタジオで大型送風機から流れ来る風にセミロングの髪を靡かせてポーズをとる彼女、松野雪の姿に見惚れていた。
「大槻さん?見惚れ過ぎですよ」
耳元で小さく聞こえた声に緩みきった貌をハッとさせて立ったまま背筋を引き締める。今年で32歳になる彼は、慌てて声の主、カメラアシスタントの三國こと三國沙耶を振り返った。三國は今年で29歳。モデルの張本人の松野雪とさして年は変わらないが、仕事の忙しさからか、スキンケアに手をかけられないらしく、いつもメイクやヘアケアはほんのりタイプである。
「み、見惚れてなんか……ないですよ!」
「いやぁ……でも、こんだけ綺麗やったら見惚れへん方が無理やろ?」
もう長く都内に住まう彼、ディレクターの野池こと野池謙介が二人にだけに聞こえる声でポツリと言った。ポーズを取り続ける雪の姿をその周辺にいる8人ほどのスタッフが見守る中、ディレクターである少し白髪の混じった彼、野池はやがて腕組みをする。先月で45歳になったと噂で聞いた彼。どうして、彼の口調から関西訛りが抜けた試しはない。
彼女を初めて見た人なら誰しも皆そんなことを考えると言う。まるで日本人とは思えない整った顔立ちと、ブルーの血の通りが見える色白な肌、そしてそんな風貌から現れる可憐な笑顔は、大抵の男を出逢った一瞬で落とすとさえ言われている。
彼、マネージャーの大槻翔琉もまた、この日も。都内の撮影スタジオで大型送風機から流れ来る風にセミロングの髪を靡かせてポーズをとる彼女、松野雪の姿に見惚れていた。
「大槻さん?見惚れ過ぎですよ」
耳元で小さく聞こえた声に緩みきった貌をハッとさせて立ったまま背筋を引き締める。今年で32歳になる彼は、慌てて声の主、カメラアシスタントの三國こと三國沙耶を振り返った。三國は今年で29歳。モデルの張本人の松野雪とさして年は変わらないが、仕事の忙しさからか、スキンケアに手をかけられないらしく、いつもメイクやヘアケアはほんのりタイプである。
「み、見惚れてなんか……ないですよ!」
「いやぁ……でも、こんだけ綺麗やったら見惚れへん方が無理やろ?」
もう長く都内に住まう彼、ディレクターの野池こと野池謙介が二人にだけに聞こえる声でポツリと言った。ポーズを取り続ける雪の姿をその周辺にいる8人ほどのスタッフが見守る中、ディレクターである少し白髪の混じった彼、野池はやがて腕組みをする。先月で45歳になったと噂で聞いた彼。どうして、彼の口調から関西訛りが抜けた試しはない。
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