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旅立ちの日
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シエラはちらっと窓を見た。ロード邸の玄関に一台の馬車が停まっている。
シエラはもう一度ドアを叩いて、
「ジャニス、ほら出てきなさいったら、もうお迎えの馬車が来たわ」
「…………………」
ドアノブをガチャガチャ回して、またドンドンとドアを叩く。
「もうどうしてしまったというの? 昨日はあんなにいい子にしていたじゃない。二度と会えないわけじゃないんだから、ちゃんとわたしの見送りに顔を出してよ」
この日のシエラは メイトリアール教会の聖歌隊に入隊するというので、白いヘアバンドを巻き、水色のチュニックを着て、足元に大きなボストンバッグを置いていた。
「ねえったら!」
スカートをつかんだサイラが廊下を走って来る。
「シエラ! まだモタモタしている! さっきからジェニファー様がお待ちよ!」
「だって、この通りなんだもの」と困った顔で振り返るシエラ、
「最後にジャニスの顔を見なければ わたし、メイトリアール教会へは行かれないわ」
サイラは急いでバッグを手にして、
「そんなの放っておきなさい! 朝からイジけてイジけて、もうどうにもならなかったんだから。さあ行くわよシエラ」
両手にバッグを抱え、サイラはもう廊下の半分も行っていた。
シエラはぴたりとドアに張り付いて、
「ジャニス、聞こえてる? わたしたちもう会えないってわけじゃないんだから、そんなに落ち込まないで。わたしはいつも教会にいる。日曜のミサに来れば、いつでも会える。だから、ね、そんなに悲しまないで」
部屋の中から物音一つ聞こえて来ない。
「じゃあわたし行くけど、いい? ジェニファーさんをあまり困らせてはダメよ? わかった?」
廊下の先からホアキンまで顔を出す。
シエラはうんと頷いて見せ、廊下を中程まで行ったあと、踵を返してもう一度自分の部屋へ戻った。
「まだ、この部屋とお別れをしていなかったわ。
一年間、この部屋で生活をして、本当に色々な事があったな」
ガードナー先生にレッスンを断られて落ち込んだ日もあった。
サイラと夜遅くまで笑いころげた日もあった。
ソフィの悲しい過去を聞いて枕をぬらした日もあった。
ドーラから泣きながら手紙を投げられた日もあった。
「さようなら、愛しきわたしのお部屋、あなたのことは一生忘れないわ」
ひと呼吸おいてから、シエラは急いで部屋から出て行った。
廊下が静かになって、外から人の声が聞こえて来るようになった頃、ジャニスの部屋のドアがそっと開いた。
ジェニファーは馬車の入口の所に立って、お尻を叩くようにシエラを馬車へ乗せた。
「いったい何をそんなにのんびりとしていたんだい。約束の時間に遅れてしまうじゃないか」
ホアキンに手荷物を預け、シエラは座席を移動する。
隣でドーラがハットのつばを下げ、
「おはようシエラ」
「おはようドーラ」
二人はぎこちないながらも、自然と話せるようになっていた。
シエラは馬車の窓から青い空を見上げて、
「今日はわたしたちの門出にふさわしいお天気じゃない? 昨日の夜は風が強かったから少し心配していたんだー。もしこれがどしゃぶりの雨だったらわたし、みんなと別れを惜しんで泣いているのか、天気が悪くて泣いているのか、分からなくなってしまう所だったわ」
ドーラはうつむき加減で、
「そうね。いい天気で良かったかも知れないわね。でもわたし、天気なんてホントはどうでもいいの。ねえシエラ、あなた緊張しない?」
「緊張?」と すっとんきょうな声が返る。
ドーラは両方の指を組み合わせて、
「そうよ。だってこれからあの格式高いメイトリアール教会での生活が始まるのよ? どんな厳しい生活が待っているのか、さっぱり想像もつかない。だからわたし、不安で不安で」
シエラは肩を揺らして笑った。
「まあドーラ、あなたなんて心細い事を言うの? これからどんな生活になるかさっぱり分からないからこそ、スリリングなんじゃない? ドーラがいま読んでいる小説だってそうでしょう? まったく予想がつかない展開が待っているから、ハラハラドキドキするの。それが初めからストーリーが分かっていたら、ぜんぜんつまらないものになってしまうわ」
ジャネットが懐中時計で時間を確認しながら、
「シエラの言う通りだよ。これからどんどん人前に出て、どんどん新しい事にチャレンジしていかなければならないんだ。それなのに、近所の聖歌隊に入るだけでそんな青い顔をしていたら、先が思いやられるよ。まあ、シエラはもうちょっと緊張した方が可愛げがあるけどね。
さ、出発するよ」
合図を受けて馭者は馬にムチを入れた。
馬車を見送る人たちがゆっくりと手を振った。ジェニファー、サイラ、その他のメイドたち、それから後ろの方にホアキン。サイラなどはハンカチで涙を拭っていた。
シエラは窓から身を乗り出して、大きく腕を振っていたが、すぐに異変に気が付き馬車の中へ引っ込んだ。
「止めて!」
席を移動しながら、御者の背中を叩くシエラ、あわてた御者が手綱を引いて、大きく馬がいななく。
「どうしたんだい急に、あぶないじゃないか」
ジャネットが前のめりから体勢を戻す。
「ジャニスが部屋から出て来たの。ちょっとごめんなさい」
「なになに」と二人とも窓の外へ顔を出す。ロード邸の大きな玄関から、スカートを蹴ってジャニスが走って来る。
動いている馬車から飛び降りるシエラ、そのまま体を開いて走って来たジャニスを受け止めた。
「シエラ姉ちゃん!」
泣き腫らした目をして、ジャニスが相手の胸の中から顔を上げる。そのままいきおい余って 二人は草むらに倒れ込んだ。仰向けになって、両手を広げて、白い雲の流れを見上げるシエラ、
「ジャニス、やっと出て来てくれたわね。あなたの元気な顔を見ないとわたし、晴れやかな気持ちで旅立ちを迎える事ができないわ」
青い空に決意を固めた目が現れる。
「あたしも行く! メイトリアール教会へ行く!」
「は?」
「あたしもメイトリアール教会に行って、聖歌隊に入る!」
シエラの肩が強く揺すられた。
「ちょっと、あなた何を言っているの? ジャニスはロード邸に残ってジェニファーさんの手助けをするの、昨日そう約束したじゃない」
「行くの!」
シエラの眉間にしわがよった。
起き上がって、ためしにジャニスの手を引っ張ってみた。ジャニスはシエラの服を固くつかんで放さない。
ジャネットが馬車から降りて来た。
「なに遊んでいるんだい。早くしな」
「先生、この通りなの。どうしたらいい?」
ジャネットのまゆがつり上がった。
「どうしたらいいってあんた、なにをのん気な事を言っているんだい! とっくに出発時間は過ぎているんだよ! ヒルトン先生があんたたちの事を待っていらっしゃるのだから、遊んでないで早く馬車へ戻りな」
シエラは顔を曇らせて、
「でも、この子がこの目をした時、もうどうにもならないの。誰の言葉も耳に入らない」
杖を突いて、ジェニファーがこちらへ歩いて来る。
「連れて行きな、シエラ。今日いちにち、教会で遊ばせておけば、この子も気がすむだろう」
ジャニスは満面の笑みで二人の間に座っていた。
シエラは大きなため息を落とし、ドーラは大きな目をしていた。
「シエラ姉ちゃん、あそこ、誰かが手を振っている」
「え?」
ちょうどラウスハットを出た辺りで、遠くからみんなの歓声が聞こえた。窓から顔を出すと、みずうみの底が透けて見える水面に、一隻のボートがゆっくりと動いていた。
「みんな」
オールを動かすマークや、大きく手を振るエズメ、花飾りをつけたジェシカの姿があった。
「シエラー、がんばれー!」
エズメとジェシカが大きな旗を振っていた。
シエラは窓から体を出して、大きく両手を振って、
「みんなー、ありがとー!」
その背中をジャネットがつかむ。
「嬉しいのは分かるけど、それ以上やると馬車から落ちるよ」
ジャニスもシエラの脇から顔を出し、ニコニコしながら手を振っていた。
「友達に見送りに来てもらって、ホントうらやましい」
ドーラは帽子のつばを下げて、窓から顔をそむける。
「でも、見送りの中にルイスの姿がないわね。おかしいわ。ルイスとシエラはいつも一緒だったじゃない。どうしたのかしら?」
それを聞いてシエラの動きが止まった。
シエラはもう一度ドアを叩いて、
「ジャニス、ほら出てきなさいったら、もうお迎えの馬車が来たわ」
「…………………」
ドアノブをガチャガチャ回して、またドンドンとドアを叩く。
「もうどうしてしまったというの? 昨日はあんなにいい子にしていたじゃない。二度と会えないわけじゃないんだから、ちゃんとわたしの見送りに顔を出してよ」
この日のシエラは メイトリアール教会の聖歌隊に入隊するというので、白いヘアバンドを巻き、水色のチュニックを着て、足元に大きなボストンバッグを置いていた。
「ねえったら!」
スカートをつかんだサイラが廊下を走って来る。
「シエラ! まだモタモタしている! さっきからジェニファー様がお待ちよ!」
「だって、この通りなんだもの」と困った顔で振り返るシエラ、
「最後にジャニスの顔を見なければ わたし、メイトリアール教会へは行かれないわ」
サイラは急いでバッグを手にして、
「そんなの放っておきなさい! 朝からイジけてイジけて、もうどうにもならなかったんだから。さあ行くわよシエラ」
両手にバッグを抱え、サイラはもう廊下の半分も行っていた。
シエラはぴたりとドアに張り付いて、
「ジャニス、聞こえてる? わたしたちもう会えないってわけじゃないんだから、そんなに落ち込まないで。わたしはいつも教会にいる。日曜のミサに来れば、いつでも会える。だから、ね、そんなに悲しまないで」
部屋の中から物音一つ聞こえて来ない。
「じゃあわたし行くけど、いい? ジェニファーさんをあまり困らせてはダメよ? わかった?」
廊下の先からホアキンまで顔を出す。
シエラはうんと頷いて見せ、廊下を中程まで行ったあと、踵を返してもう一度自分の部屋へ戻った。
「まだ、この部屋とお別れをしていなかったわ。
一年間、この部屋で生活をして、本当に色々な事があったな」
ガードナー先生にレッスンを断られて落ち込んだ日もあった。
サイラと夜遅くまで笑いころげた日もあった。
ソフィの悲しい過去を聞いて枕をぬらした日もあった。
ドーラから泣きながら手紙を投げられた日もあった。
「さようなら、愛しきわたしのお部屋、あなたのことは一生忘れないわ」
ひと呼吸おいてから、シエラは急いで部屋から出て行った。
廊下が静かになって、外から人の声が聞こえて来るようになった頃、ジャニスの部屋のドアがそっと開いた。
ジェニファーは馬車の入口の所に立って、お尻を叩くようにシエラを馬車へ乗せた。
「いったい何をそんなにのんびりとしていたんだい。約束の時間に遅れてしまうじゃないか」
ホアキンに手荷物を預け、シエラは座席を移動する。
隣でドーラがハットのつばを下げ、
「おはようシエラ」
「おはようドーラ」
二人はぎこちないながらも、自然と話せるようになっていた。
シエラは馬車の窓から青い空を見上げて、
「今日はわたしたちの門出にふさわしいお天気じゃない? 昨日の夜は風が強かったから少し心配していたんだー。もしこれがどしゃぶりの雨だったらわたし、みんなと別れを惜しんで泣いているのか、天気が悪くて泣いているのか、分からなくなってしまう所だったわ」
ドーラはうつむき加減で、
「そうね。いい天気で良かったかも知れないわね。でもわたし、天気なんてホントはどうでもいいの。ねえシエラ、あなた緊張しない?」
「緊張?」と すっとんきょうな声が返る。
ドーラは両方の指を組み合わせて、
「そうよ。だってこれからあの格式高いメイトリアール教会での生活が始まるのよ? どんな厳しい生活が待っているのか、さっぱり想像もつかない。だからわたし、不安で不安で」
シエラは肩を揺らして笑った。
「まあドーラ、あなたなんて心細い事を言うの? これからどんな生活になるかさっぱり分からないからこそ、スリリングなんじゃない? ドーラがいま読んでいる小説だってそうでしょう? まったく予想がつかない展開が待っているから、ハラハラドキドキするの。それが初めからストーリーが分かっていたら、ぜんぜんつまらないものになってしまうわ」
ジャネットが懐中時計で時間を確認しながら、
「シエラの言う通りだよ。これからどんどん人前に出て、どんどん新しい事にチャレンジしていかなければならないんだ。それなのに、近所の聖歌隊に入るだけでそんな青い顔をしていたら、先が思いやられるよ。まあ、シエラはもうちょっと緊張した方が可愛げがあるけどね。
さ、出発するよ」
合図を受けて馭者は馬にムチを入れた。
馬車を見送る人たちがゆっくりと手を振った。ジェニファー、サイラ、その他のメイドたち、それから後ろの方にホアキン。サイラなどはハンカチで涙を拭っていた。
シエラは窓から身を乗り出して、大きく腕を振っていたが、すぐに異変に気が付き馬車の中へ引っ込んだ。
「止めて!」
席を移動しながら、御者の背中を叩くシエラ、あわてた御者が手綱を引いて、大きく馬がいななく。
「どうしたんだい急に、あぶないじゃないか」
ジャネットが前のめりから体勢を戻す。
「ジャニスが部屋から出て来たの。ちょっとごめんなさい」
「なになに」と二人とも窓の外へ顔を出す。ロード邸の大きな玄関から、スカートを蹴ってジャニスが走って来る。
動いている馬車から飛び降りるシエラ、そのまま体を開いて走って来たジャニスを受け止めた。
「シエラ姉ちゃん!」
泣き腫らした目をして、ジャニスが相手の胸の中から顔を上げる。そのままいきおい余って 二人は草むらに倒れ込んだ。仰向けになって、両手を広げて、白い雲の流れを見上げるシエラ、
「ジャニス、やっと出て来てくれたわね。あなたの元気な顔を見ないとわたし、晴れやかな気持ちで旅立ちを迎える事ができないわ」
青い空に決意を固めた目が現れる。
「あたしも行く! メイトリアール教会へ行く!」
「は?」
「あたしもメイトリアール教会に行って、聖歌隊に入る!」
シエラの肩が強く揺すられた。
「ちょっと、あなた何を言っているの? ジャニスはロード邸に残ってジェニファーさんの手助けをするの、昨日そう約束したじゃない」
「行くの!」
シエラの眉間にしわがよった。
起き上がって、ためしにジャニスの手を引っ張ってみた。ジャニスはシエラの服を固くつかんで放さない。
ジャネットが馬車から降りて来た。
「なに遊んでいるんだい。早くしな」
「先生、この通りなの。どうしたらいい?」
ジャネットのまゆがつり上がった。
「どうしたらいいってあんた、なにをのん気な事を言っているんだい! とっくに出発時間は過ぎているんだよ! ヒルトン先生があんたたちの事を待っていらっしゃるのだから、遊んでないで早く馬車へ戻りな」
シエラは顔を曇らせて、
「でも、この子がこの目をした時、もうどうにもならないの。誰の言葉も耳に入らない」
杖を突いて、ジェニファーがこちらへ歩いて来る。
「連れて行きな、シエラ。今日いちにち、教会で遊ばせておけば、この子も気がすむだろう」
ジャニスは満面の笑みで二人の間に座っていた。
シエラは大きなため息を落とし、ドーラは大きな目をしていた。
「シエラ姉ちゃん、あそこ、誰かが手を振っている」
「え?」
ちょうどラウスハットを出た辺りで、遠くからみんなの歓声が聞こえた。窓から顔を出すと、みずうみの底が透けて見える水面に、一隻のボートがゆっくりと動いていた。
「みんな」
オールを動かすマークや、大きく手を振るエズメ、花飾りをつけたジェシカの姿があった。
「シエラー、がんばれー!」
エズメとジェシカが大きな旗を振っていた。
シエラは窓から体を出して、大きく両手を振って、
「みんなー、ありがとー!」
その背中をジャネットがつかむ。
「嬉しいのは分かるけど、それ以上やると馬車から落ちるよ」
ジャニスもシエラの脇から顔を出し、ニコニコしながら手を振っていた。
「友達に見送りに来てもらって、ホントうらやましい」
ドーラは帽子のつばを下げて、窓から顔をそむける。
「でも、見送りの中にルイスの姿がないわね。おかしいわ。ルイスとシエラはいつも一緒だったじゃない。どうしたのかしら?」
それを聞いてシエラの動きが止まった。
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