日々、思う事、常々

デュシェンヌ・スマイル

　どうだろう。もしもあなたが、一日笑顔でいるだけで、千円支給されるとしたら。
　一日千円、月にして、約三万円。一日笑っている、ただそれだけなのに、月々三万円も支給されるとしたら、それは決して悪い話ではない、そう、あなたは思わないか？
　 ところが実際には、そんなうまい話はない。国民全員、ただ笑っているというだけで、月額三万円も支払われては、国は、一日に一千二百五十八億もの大金を失う。こうなれば、ただちに日本は財政難へと陥る事だろう。これはそう、日が西から昇るというような絵空事なのだ。
　いっぽうで、一日笑顔でいるという事が、実は一日千円以上の価値があるという事を、あまり知られていない。
　心理学者、リー・アン・ハーカーと、ダーカー・ケルトナーの教授らが、カリフォルニアのミルズ・カレッジ(私立女子大学)で、長期研究を行った結果、卒業アルバムの写真で、デュシェンヌ・スマイルという、本物の笑顔を見せていた女性と、そうでなかった女性とで、三〇年後の生活において、その幸福度を測ってみた所、笑顔だった女性の方が、現在の結婚生活に満足しており、心理的に安定している傾向があったのだ。作り笑いではなく、心から笑っている事が前提となるが、それでも、ただ笑っているというだけで、一日千円、三〇年で九〇万円という、その金額以上の幸福を、彼女らは勝ち取っていたのだ。
　さらにこの笑顔の研究で、健康の面においても、非常に興味深い効果が認められていて、それは人が笑う事で、ナチュラルキラー細胞という、免疫細胞が元気に動き出し、がんになる腫瘍細胞や、ウイルス感染細胞といった、私たちにとって悪でしかない病気に対して、拒絶を示してくれるというのだ。いやはや、笑いは人の薬などと、昔の人はよく言ったものだ。
　このように、期待される研究結果が、私たちの笑顔の奥に秘められている。朝起きて、笑って、ランチで笑って、夜も笑って布団に入る、ただそれだけなのに、なんてすばらしい効果が私たちの生活に福音をもたらす事か。
　一日千円、月にして、約三万円。一日笑っている、ただそれだけで、月々三万円、それ以上の価値が、私たちの未来に約束されると聞いたら、それは決して悪い話ではない、そう、あなたは思わないか？