日々、思う事、常々

くぼう無学

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人の悩み

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 人の悩み、人の苦しみは、想像する事にある。
 想像。そう、私たちは何かを想像して、悩んでいるのだ。
 例えば、こう。
 ある日あなたは、意図せず自分の悪い噂を聞いたとする。調子に乗っているだとか、へんな顔をしているとか、なんでもいい。そうしたら、どうか、そうしたら、なんだか、心の中にドロッとしたものが生まれないか。そいつが、胸を蝕んで、次の日には、あちこちで自分の悪口が言われていないか、心配にならないか。まったくそれは、心地の良いものではない。仲の良い友人さえ、裏では自分の悪口を言い合ってはいまいか、気が気じゃなくなる。世界がいっぺんに暗くなる。
 けれどもこれらは、全て、想像である。悪い、想像である。
 まず、噂は噂で、事実ではない。あなたは直接それが話されている会話を聞いたのか。そう、ウソかも知れない。そしてあちこちで自分の悪口を言われているような気がするのも、事実ではない。幽霊を見た事もないのに、やけに幽霊を怖がるのに似ている。さらに、仲のいい友人が自分の悪口を言っているのではないかというのも、事実ではない。むしろ、仲が良いのだから、悪口を言う確率は低い。総じて、みんな、悪い想像なのである。
 それではどうか、想像力のない人に、悩みなんてない。これは非常に失礼な言い方になるが、本能に生きてるい人に、悩みはない。
 鳥に、(これも鳥には失礼だが)、悩みはなさそうである。元気に鳴いて、子育てをして、しかるべき天命にしたがって、死んでいる。
 しかし我々はどうか。我われは十人見ても、一人は悩んでいるものである。悩んだ経験、それは私にもある。苦しんだ経験もある。
 たいてい我々は、お先まっ暗で悩んでいる。鏡に映る自分の姿を見て、このまま行ってもダメだ、この先なにも良い事はない。自分は失敗だった。残りの人生、何も良い事はない。たいてい我々は、未来を考えて、八方ふさがりになっている。
 そこでだ。我われに先が見えなければ、先が、一体どうなるか、分からなければ、悩まないのではないかしら。鳥は、先が分からない。傍から見ていて、つくづくそう思う。そら親鳥に向かって口を開けろ、一つでも多く虫を食べろ、さあ兄弟に負けるな。お! 空を飛べるようになった。自分でエサを取れるようになった。おっと、求愛がしたくなったぞ。なんだか分らんが、あちこち行っている内に、子供が出来た。このように、次から次へと、目まぐるしく、本能が肩を叩いて来る。それで、お終い。自分の行く末など案じてはおらん。
 想像力は、素晴らしい。想像力は、世界を創造する。けれどもその弊害について、我々は、関知していなければならない。想像するという恐ろしさを。
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