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十四話 幕間 クロカミ共和国1

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 精霊は遥か昔から存在する種族で、精霊と人間は共生関係を築いていた。

 精霊は魔力を持たない人間に魔力を貸しだし、人間が体内で変換して放出した魔法の残りかすのような魔力を精霊は好んで摂取していた。

 それは魔族に対しても同じだった。
 精霊は高い魔力を持つ魔族の体から溢れる魔力を吸収していった。

 魔力はそのようにして世界で循環されていたのだ。

 だがやがて人間と魔族が争うようになり、戦いが激しくなると精霊は人間と魔族、どちらか一方を選ばなくてはならなかった。

 精霊がついたのは人間側であった。

 自ら魔力を持つ人間はわずかであり、それを考えれば魔族が選ばれてもおかしくなかった。
 だが精霊は長寿種である魔族の加齢臭漂う魔力よりも若い人間の魔力を選んだ。
 この選択が人間と魔族の明暗を分けることになる。

 時の精霊王は高密度の魔力で創った勇者の剣を人間に与えた。
 そして勇者の剣を扱える者と、精霊にひときわ好かれる少女が同時期に生まれたことで、人間は魔族に勝利したのである。

 だが魔王が倒され、魔族が数を大きく減らしたことで魔力の循環が滞ってしまうと、精霊自身もその数を減らしていった。やがて勝利した人間も精霊が減った影響で魔法を使うことが少なくなっていった。






 アレクディア聖王国の南西に位置するクロカミ共和国は精霊の存在を疎ましく思っていた。

 近年グレイク流身体強化術が広まったことで軍事力が増強された共和国は、周辺国と衝突を起こすようになっていく。

 そして今日も各種対策会議が開かれていた。

「それで……勇者の仲間であったグレンが復活したというのは本当なのかね?」

「はっ、まず間違いないかと。グレンの側にラウラの姿があるのが何度も目撃されております」

「グレンはともかくラウラはいかんよ、ラウラは」
「確かにその通りですな」

 若い出席者が疑問の声をあげた。

「ですがラウラは人間同士の争いには関わって来ないのでは?」
「そういうことを言っているわけではないのだよ。まあ、君が理解する必要はない話だ」

「いずれにしても由々ゆゆしき問題ですな」
「ラウラはアレクディアを動かんだろうし、グレンにしても同様だろう」
「何か、良い考えがある者はいないか?」

 皆が押し黙る中、先程の若者が恐る恐る手をあげた。

「ラウラはこれまで積極的に動きませんでした。そうなったのはグレンが復活してからです。つまりグレンをおびき寄せればラウラもついて来るのではないでしょうか?」

「それは理解できる。だがどうやってグレンを誘い出すというのだ」

「先日、情報部より報告が上がってきました。それによるとグレンはアイドルなるものに熱中しているそうです」

「あいどる? それはなんだね?」
「いえ、私も詳しくは……」
「では君が責任者となって、あいどるでグレンを呼び寄せてくれたまえ。今日の会議はここまでとしよう」

 そうしてクロカミ共和国に一大アイドルプロジェクトが発足した。
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