54 / 81
第54話 Dランクダンジョンの攻略褒賞
しおりを挟む「ふぅ、休憩」
枯死したエントの太い根を腰かける。
この辺りの地面はエントの噴き出した樹液で濡れていなかった。
時間的にはまだ14時だけど、転移ゲートが開くまでけっこう時間かかるよな。
濡れてない地面に下りたガチャが、俺の足元に来てじゃれている。
「ヴェルデ様、消毒しますよ」
消毒液を染みこませたハンカチを、アスターシアが俺の頬の傷に押し当ててくる。
少し傷に染みたが、耐えられない痛さではない。
「プロテクションシールドが弾けた音がした時は、一瞬だけヒヤリとしました」
「意外と面倒な敵だったんでね。少しだけ無茶はした」
「さすがDランクのダンジョンのボスモンスターだったというわけですね」
「ああ、一気に倒さないと延々と再生される厄介なやつだ」
「それを一人で倒されたとは……。すごい方です……。あ、すみません。消毒は終わりました。回復魔法どうぞ!」
消毒中に俺を見てボーっとしていたアスターシアが、我に返って慌ててハンカチをしまう。
「これくらいの傷はすぐに塞がるから、魔力は節約しとく。消毒ありがとうな」
「ど、どういたしまして! それと、ガチャ様が排出された金色コインはこちらです!」
なぜか顔を赤くしたアスターシアの手の中には、ガチャの排出した金色コインが7枚あった。
「7枚もあったのか!? ガチャ、えらいぞ! よしよし」
足元でじゃれついてたガチャの身体をわしゃわしゃして褒めてやる。
Dランクの討伐報酬は7枚か。
敵や罠があって面倒だけど、Gランクダンジョンを2日かけて回るよりかは効率的に金色コインが稼げるっぽい。
でも、ホーカムの街じゃほとんど発生しないんだろうけど。
Gランクが1枚でDが7枚って増え方だと、Eが5枚、Fが3枚って増え方かもしれないな。
「スキルの取得されますか?」
「そこまでの時間はなさそうだから、帰ってからにしとくよ。それに、攻略褒賞が入った宝箱が埋まってそうだし」
宝箱が発生しそうな場所には、枯死したエントの亡骸があった。
「とりあえず、足もとが悪いし、俺が行って見つけてくるからアスターシアたちはそこで休憩しててくれ」
「承知しました。作業後にお出しするおやつの準備をしておりますね。ガチャ様はもう少し運動してお腹減らさないとなしですよー」
おやつと聞いたガチャがアスターシアの近くによって身体をスリスリしておねだりをする。
ガチャ、食べすぎだぞ。プニプニも嫌いじゃないが、おデブは寿命を縮めるんだ。
「ガチャ様ー、取ってきてください」
枯死したエントの枝を拾ったアスターシアが樹液で汚れていない方に向かって投げた。
ガチャはその棒を拾うため、一生懸命に駆けていく。
ナイス、アスターシア! あれは、よい運動になりそうだ。
「ガチャ―頑張ってなー。あとで一緒におやつ食べようぜ!」
枝を追って駆けるガチャが俺に向かってレバーを回して応えてくれた。
可愛いやつめ。運動してるし、ちょっと、おやつ増量してもいいかも。
「さて、俺は自分の仕事しないとな」
俺は枯死したエントの亡骸に近づくと、解体スキルを発動させる。
身体が自動で動き出し、勢いよくエントの巨体をチャンピオンソードで切り倒していく。
さすがにこれだけデカいと、簡単に解体とはいかないか。
いつもよりも時間がかかる。
20分ほどで枯死したエントの亡骸はバラバラになり、エントの古木とエントの若芽が手に入った。
「あった、あった。この色は銅製か?」
亡骸の下から出てきた箱は、ピカピカの銅色をした箱だった。
危機感知を示す色の変化はないが、慎重を期して開ける前に鑑定をする。
―――――――――――――――――――――――――――――――
銅の宝箱
耐久値:200/200
罠:なし
状態:無施錠
――――――――――――――――――――――――――――――――
おっけ、問題なしっと。
銅の宝箱を開けると中身は指輪と背負うタイプのバッグだった。
鑑定してみた結果。
―――――――――――――――――――――――――――――――
光球の指輪
基礎防御力:5
属性:光
特別効果:使用するとMP消費なしで、光球が周囲を照らす。
エンチャント:不可
解説:小さな宝石が付いた指輪。光を放つ球を自身の近くに作り出す。
――――――――――――――――――――――――――――――――
光源を発生させる指輪みたいだ。
MP消費がないのはありがたい。
探索時はアスターシアが光源となるランタンを持ってくれてるけど、魔石消費するし、自分用の光源として持っておくのもありか。
すぐさま光源の指輪をはめ、使用してみる。
指輪から放たれた光が光球になって、俺の肩の辺りに漂い始めた。
これくらいの明るさなら、洞窟の中の暗い場所でも十分に照らせそうだぞ。
これは俺が使うとしよう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
軽量化のバッグ
特別効果:バッグの中に入れた物の重量が軽減される
エンチャント:不可
解説:背負うタイプのバッグ。中身の重量を減らす効果が付与されている。
――――――――――――――――――――――――――――――――
こっちはバッグの中身を軽量化するやつだな。
ぶっちゃけ、俺には空間収納があるからいらない装備っぽい。
オークションで売り払ってもいいかも。
とりあえず2個ともエンチャント装備品だったな。
俺はチャンピオンソードと軽量化のバッグを空間収納にしまい込む。
宝箱の中身をゲットし終えた俺は、ガチャたちの方に視線を向けた。
「ガチャ様ー、もう一回ですよー」
アスターシアが棒を投げ、ガチャが必死になって拾いに行くのが見えた。
アスターシアは、意外とスパルタなのか……。
ガチャ、頑張れ! 走った後のおやつは美味しいぞ! うん、きっと美味い!
俺がアスターシアのもとに戻ると、ガチャも木の枝をレバーに器用に引っ掛けて戻ってきた。
「よしよし、えらいぞ! 疲れただろ! お水飲んでくれ!」
お椀に注いだ水をガチャの前に差し出すと、一気に中身が消え去った。
「よく頑張った! 一緒におやつ食おうぜ!」
俺はガチャの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
ガチャはレバーを回して喜んでくれた。
「では、こちらはヴェルデ様、こちらがガチャ様のおやつですね。ゆっくりお召し上がりください」
俺には焼いたクッキー、ガチャは薄く削ぎ切りされた干し肉で野菜が巻かれたものだった。
そっとガチャが野菜を避けたらしく、肉だけ消える。
「ガチャ様ー、野菜もお召し上がりください。リアリーさんも心配してますよ」
ガチャは明らかに野菜を食べたくなさそうで、盛りつけられた皿を前足で俺の方に押した。
「ガチャー、野菜は――」
『頑張って走ったのにこの仕打ち酷くない』って様子を見せないでー! 心が痛くなるからっ!
そんな様子を見せられると俺は――。
「はー、野菜うまぁ! やっぱおやつは野菜だよなぁー! ガチャ!」
「ヴェルデ様、それはガチャ様の!」
ガチャの皿に盛られた野菜を一気に口に押し込んだ。
お野菜美味しい。美味しいよ、ガチャ。
5
お気に入りに追加
2,506
あなたにおすすめの小説
おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
田舎の中古物件に移住したら、なぜか幼女が住んでいた~ダンジョンと座敷わらし憑きの民泊はいかがですか?~
k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
幸福が訪れると噂されるホテルで働いていた主人公は理不尽な理由で解雇された。
会社の寮に住んでいた彼はすぐに退居することになったが、児童養護施設で育った彼には帰る家がなかった。
彼はネットに記載してある田舎への移住をし、数年後には持ち家になるという広告を見かける。
少し怪しいと思っていたものの、癒しを求めていざ移住を決意する。
ただ、家の中に知らない幼女がいた。
すぐに近所の住人に聞くと、どうやら座敷わらしがいるらしい。
危ない存在でもないと思った彼は、しばらくはその家に住むことにした。
んっ……?
この座敷わらし……。
思ったよりも人懐っこいぞ?
なぜか座敷わらしと仲良くなる主人公。
気づいた頃にはたくさんの妖怪が集まってきた。
不思議な家と妖怪?達と繰り広げるほのぼのスローライフ。
※なろう、カクヨムにも投稿
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる