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サティ&テオ
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「人はなんのために生きるのでしょうかね?」
従者から突如として出された疑問に、サティは即答した。
「楽しいからよ! あとお菓子ね!!」
従者のテオから白い目で見られるが、サティは気にも止めない。
サティは、この長身・イケメン・有能という三拍子を揃えた従者の主人である。その見た目は縦の金髪ロールに、甘いピンクのロリータ服、フランス人形ばりの整った顔がついた130cmといったぐあいだ。いろんな人間に「小学何年生かな?」と身体を屈められるが、サティは立派な24歳である。
「お嬢様、バカなのですか?」
好きな推理小説にでてくる執事が言いそうなことを言われ、サティはムキー! となった。
「誰がお嬢様よ! あたしは奥様なの! お、く、さま!!」
「……そうでした」
従者テオは小さくため息を漏らした。
そう、驚くことに、この見た目は子供の24歳はもうすぐ結婚するのだ。相手は隣国のお金持ち。結構上の方にあるサティの身分とも十分に釣り合う、一流企業の社長様だ。
その社長様はロリコンなのか、なんなのか。サティに一目惚れをしただとかで、随分と熱烈なアプローチを仕掛けてきた。そして、そんな邪なる思惑を消し去るのがテオの役目である。
今は亡き旦那様に「サティを守ってくれ」と言われたあの日。自分の命を賭けてでも守ろうと誓ったのだ。全てはお嬢様のため。お嬢様の幸せのため。テオは不埒な相手から主人を守らんと使えるものは全てを使った。
しかしどこに抜け穴なぞあったのか、社長様はテオを出し抜き、子供の頃から見守ってきたお嬢様の心を奪ったのだ。
嗚呼、怨めしき。怨めしき。
お嬢様の夫となるあの男は、明日にでも下着をネズミに齧られればいいんだ。
「ちょっとテオ。なによそんな怖い顔して」
「いえいえ別になにもございませんとも」
「ほんとにぃ~?」
本当ですとテオが微笑むとサティは渋々納得したようだ。それより、と瞳を輝かせた。
「テオにお願いがあってね」
「なんでしょうか」
瞳どころか顔全体で輝きを放つ笑顔でサティは声をあげた。
「料理を教えてほしいの! ……あの人に、つくってあげたくて」
頬を桃色に染める姿の、なんと可愛らしいことか。
申し出を快く受けつつ、ひっそりと目頭を押さえる。
いつの間にこのお嬢様は大人になったのか。感動で涙が滲むと同時に、想われる男への嫉妬で熱い炎が燃えたぎる。
(やはりあの男、今のうちに……)
犯罪とは、バレなければ犯罪ではないのだ。
表には出さず、静かに計画を練るテオ。
そんなことを知らないサティは、生きる理由らしいお菓子(しかもお気に入りのテオの手作りクッキーだ)を頬張っている。
人はなんのために生きるのか。そんなことを呟いたのは、昨日読んだ小説のせいだった。その主人公は随分と苦悩していたようだが、自分の主人はすんなりと答えを出してしまった。
(自分が、生きる理由は――)
サティは楽しそうに口をもごもごと動かしている。
「ほんとにこれ美味しい! あの人にも食べてほしいわ!!」
幸せを隠しもしない表情でそんなことを言うのだから、質が悪い。
「……では、結婚式で出しましょうか」
「ほんとに!?」
「ええ」
「やったー! あの人も喜ぶわ!!」
主人の笑顔がいっそう輝いて、目が眩む。
彼女の望む光景が広がれば、その顔は今以上に喜色満面となるのだろう。さっきまで殺意を向けていた男を、少しだけ、ほんの少しだけ歓迎できそうな気がした。
従者から突如として出された疑問に、サティは即答した。
「楽しいからよ! あとお菓子ね!!」
従者のテオから白い目で見られるが、サティは気にも止めない。
サティは、この長身・イケメン・有能という三拍子を揃えた従者の主人である。その見た目は縦の金髪ロールに、甘いピンクのロリータ服、フランス人形ばりの整った顔がついた130cmといったぐあいだ。いろんな人間に「小学何年生かな?」と身体を屈められるが、サティは立派な24歳である。
「お嬢様、バカなのですか?」
好きな推理小説にでてくる執事が言いそうなことを言われ、サティはムキー! となった。
「誰がお嬢様よ! あたしは奥様なの! お、く、さま!!」
「……そうでした」
従者テオは小さくため息を漏らした。
そう、驚くことに、この見た目は子供の24歳はもうすぐ結婚するのだ。相手は隣国のお金持ち。結構上の方にあるサティの身分とも十分に釣り合う、一流企業の社長様だ。
その社長様はロリコンなのか、なんなのか。サティに一目惚れをしただとかで、随分と熱烈なアプローチを仕掛けてきた。そして、そんな邪なる思惑を消し去るのがテオの役目である。
今は亡き旦那様に「サティを守ってくれ」と言われたあの日。自分の命を賭けてでも守ろうと誓ったのだ。全てはお嬢様のため。お嬢様の幸せのため。テオは不埒な相手から主人を守らんと使えるものは全てを使った。
しかしどこに抜け穴なぞあったのか、社長様はテオを出し抜き、子供の頃から見守ってきたお嬢様の心を奪ったのだ。
嗚呼、怨めしき。怨めしき。
お嬢様の夫となるあの男は、明日にでも下着をネズミに齧られればいいんだ。
「ちょっとテオ。なによそんな怖い顔して」
「いえいえ別になにもございませんとも」
「ほんとにぃ~?」
本当ですとテオが微笑むとサティは渋々納得したようだ。それより、と瞳を輝かせた。
「テオにお願いがあってね」
「なんでしょうか」
瞳どころか顔全体で輝きを放つ笑顔でサティは声をあげた。
「料理を教えてほしいの! ……あの人に、つくってあげたくて」
頬を桃色に染める姿の、なんと可愛らしいことか。
申し出を快く受けつつ、ひっそりと目頭を押さえる。
いつの間にこのお嬢様は大人になったのか。感動で涙が滲むと同時に、想われる男への嫉妬で熱い炎が燃えたぎる。
(やはりあの男、今のうちに……)
犯罪とは、バレなければ犯罪ではないのだ。
表には出さず、静かに計画を練るテオ。
そんなことを知らないサティは、生きる理由らしいお菓子(しかもお気に入りのテオの手作りクッキーだ)を頬張っている。
人はなんのために生きるのか。そんなことを呟いたのは、昨日読んだ小説のせいだった。その主人公は随分と苦悩していたようだが、自分の主人はすんなりと答えを出してしまった。
(自分が、生きる理由は――)
サティは楽しそうに口をもごもごと動かしている。
「ほんとにこれ美味しい! あの人にも食べてほしいわ!!」
幸せを隠しもしない表情でそんなことを言うのだから、質が悪い。
「……では、結婚式で出しましょうか」
「ほんとに!?」
「ええ」
「やったー! あの人も喜ぶわ!!」
主人の笑顔がいっそう輝いて、目が眩む。
彼女の望む光景が広がれば、その顔は今以上に喜色満面となるのだろう。さっきまで殺意を向けていた男を、少しだけ、ほんの少しだけ歓迎できそうな気がした。
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