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恵理ちゃんの家

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終始無言で片付けを済ませた私たちは、おばさんのご好意で冷たい麦茶を貰った。火照った頬に心地よく、でも心は少しもスッキリしなかった。

恵理ちゃんの部屋で丸テーブルを囲う私たちの空気はお通夜のように重い。


「あの……こんな時に本当にごめん。さっきのは、上手くいったの?」


重い沈黙を破ったのは恵理ちゃんだった。遠慮がちにそう尋ねる。

私たちは顔を見合わせると「分からない」と小さく首を振る。


「でも何かが起きてたんだよね……? 私はよく見えなかったんだけど、皆には何が見えていたの?」

「……説明した通り、俺たちはこの家に「オーサキ」って憑き物が憑いていて、それが悪さをしていると思ってたんだ」

「オーサキじゃなかったの?」


嘉正くんがちらりと私に視線を向ける。

うん、と力なく頷いた。


「間違いなくあの気配は……神様だった」

「神様!?」


恵理ちゃんは素っ頓狂な声を上げた。

間違うはずがない。あの圧倒的な気配、立ち上がることが出来ないほどの畏怖、そして鈴の音色。どれも神修で須賀真八司尊すがざねやつかのみことが現れた時と同じだった。


「でも……どうして神様が、あんなことを?」


確かにそうだ。私たちを見守り導く存在である神が、何故あんなことをしたんだろう。


「ごめん、その可能性もない訳では無いのに、妖か憑き物だと決めつけてた」

「その可能性……?」

「神が災いをもたらす時もあるということだよ」


恵理ちゃんは怯えたように息を飲んだ。

神が災いをもたらす……?


「でも……神様って私たちの味方なんだよね? なのになんで、ウチに災いをもたらそうとしたの?」

「願いを叶えてくれる存在という印象が味方だと思わせがちなんだけど、神は誰の味方でもないんだ。確かに俺たちの声を聞き入れてはくれるけど、何でもかんでも聞いてくれる訳じゃない。その人が正しい道を歩めるように導いているだけなんだ。だから、もし道を違えた場合、神はその間違いを正そうと俺たちにメッセージを送る」


あ、と声をあげれば嘉正くんは「その通りだよ」と一つ頷いた。

それなら全ての説明がつく。

神様が私たちにメッセージを送る方法が、今回の怪奇現象のような方法なんだ。


「怪奇現象にばかり目が言って他の可能性に気がつけなかった。そのせいで恵理ちゃんや家族を危険に晒してしまった。……本当にごめんなさい」


来光君が深々と頭を下げる。それに続いて私達も頭を下げれば「やだ頭上げてよ」と恵理ちゃんは困ったように両手を顔の前でぶんぶんと振った。


「解決は出来ていないけど、原因は分かったんだよね? それだけでも大進歩だよ! みんな本当にありがとう。怪我した二人にもお礼言わなくちゃね」


恵理ちゃんは困ったように笑って肩をすくめる。

思い出したように頬の痛みを感じ、そのお礼の言葉を素直に受け取ることが出来なかった。

膝の上でギュッと手を握りしめて、口を開く。


「恵理ちゃん、神棚に手を合わせてもいい……?」

「もちろんだよ。今の時間なら、おばあちゃんがお経────じゃなかった、ノリトを唱えてるかも」


こっち、と案内されて私たちは居間に入った。

 神棚の前に丸まった背中を見つける。おばあちゃん、と恵理ちゃんが声をかけると、おばあちゃんは目尻の皺を深くして振り返った。


「恵理ちゃん、お友達も。ちょっと待ってなぁ」


おばあちゃんはそう言うと、丁寧な二礼二拍手をして手を合わせた。耳に心地よい少し低めの柔らかな声は祓詞を唱えた。

傷付いた体に染み入るような尖った心を包み込むような。特別な力はないはずなのに、おばあちゃんの声は言祝ぎに満ちていた。

優しい風が神棚の扉からふわりと吹いた。目には見えないけれどもその風は、おばあちゃんの周りをグルグルと回ってまるで小さな渦巻きを起こす。

目を見開いてその光景を見つめる。

風が少しづつ強くなって卵色の柔らかい光に包まれる。

目の前の景色に息を飲んだ。


緋袴が見えた。灰色混じりの髪には熨斗の髪飾りが付けられ、丸い背中を包むのは白衣はくえだ。巫女装束を身につけた、恵理ちゃんのおばあちゃんが見える。

光はやがておばあちゃんの体に溶け込むようにして消えていく。

思わず目を擦れば、やっぱりおばあちゃんは巫女装束なんて身につけいなくて先程と変わらない背中がある。

丁寧に最後の一礼をしたおばあちゃん。その瞬間、ずっと見えていなかった物が見えた気がした。



「巫寿? どうしたの?」


固まったままの私を心配するように嘉正くんが顔を覗き込んだ。


「おばあちゃんが、今」

「おばあちゃん? なんの事?」

「え……皆は、見えてないの?」


他のふたりも、なんの事?と怪訝な顔をする。

今の光は私にしか見えていなかったんだ。


「おばあちゃんが祝詞を奏上している時、とても優しい風が吹いて、おばあちゃんの周りにあたたかい光が集まって……巫女装束を着たおばあちゃんが見えたの」

「私が……巫女装束を?」


おばあちゃんは驚いたように目を瞬かせた。

まるでそれが当たり前かのように巫女装束を着たおばあちゃんには違和感がなかった。寧ろその姿が本来の姿のように、あるべき場所へ戻ったような心地さえした。

もしそう感じたのが私の思い違いでなければ────。


「おばあちゃんは……どこかのお社の巫女さまですか?」


目を見開いたおばあちゃんはしばらくぽかんとして、ふふっと小さく笑った。


「そんな大層なお役目ではあらへんよ。毎日朝晩にこうして神棚に手を合わせてるだけやし」


少し恥ずかしそうに肩を竦めたおばあちゃん。


違った。もしかしたらと思ったのに。でもそうか、もし言霊の力があるとするならば先程の祝詞奏上で他のみんなも何かを感じたはずだ。

私だけが感じたということは、思い違いだったんだろうか。


「……もしかしたら神棚の御祭神さまに、巫女として認められたのかもしれない」

「認められる……?」

「かなり昔に、どこかの社の氏子うじこのひとりに、そういう事があったと父から聞いたことがある。社に毎日参拝するおじいさんが居て神主が代替わりする時に次の神主に選ばれたことがあるって」


神主は世襲制ではなく、社に祀られる御祭神の信託によって選ばれる。血の濃さや家系は関係なく、御祭神さまが選んだ次代の神主に相応しい仁徳のある人が選ばれる。

学校では確かにそう習った。


「おばあちゃんが、巫女……」

「確証は持てないけど、巫寿が見えたということはきっとそうなんだと思う。日々のお勤めをご覧になった御祭神さまがおばあちゃんを巫女として認めたんだよ」


あらまぁ、とおばあちゃんは少し嬉しそうに微笑んだ。


「でもおばあちゃんがこの神棚の巫女だとして……どう関係があるの?」


おばあちゃんがこの神棚の巫女なんだとしたら、私の考えはやっぱり間違っていなかった。


「────もしかしたら、この家から……この社からおばあちゃんを……巫女を追い出そうとしたことに腹を立てたんじゃないかな」


あ、と嘉正くんと来光くんが息を飲んだのが分かった。


「神様は味方ではなく導く方で……巫女をこの社から追い出すことは間違いだって伝えたかったんじゃないかな」


みんなで初めてこの家へ来た時の優しい風を思い出した。

社頭に優しく温かい空気が流れているのは、その社が栄えているからだ。心地よく感じるのは、きっと神様がその土地を守り愛し導いているからだ。

私たちは御祭神さまのその意思に気が付けず、災いとなって知らせようとしたその災いを打ち祓おうとしてしまった。

みんなで神棚の前に並んだその瞬間少しだけ指先がピリッとして、自分たちがしでかした間違いを思い知る。

本当に、禄輪さんが来てくれなければ今頃どうなっていたことか。

雷に打たれた慶賀くんたちも心配だった。早く帰って顔を見たい。けれどその前に、私たちにはすべきことがある。


ゆうを始めに深い二礼、音を揃えて二拍手。静かに目を閉じて「神棚拝詞」を唱えた、強く謝罪の気持ちを込めて。

神の言葉に背く事がどれほど重罪なのか、慶賀くん達の負った怪我で十分に思い知った。そして自分たちがどれどれ未熟で浅はかだったのかということも。

詞を唱え終えても、神棚からは何も感じられなかった。それが神様が出した答えなのだと思うと、胸が苦しくてしかたなかった。


重い空気のまま帰路についた。私たちの間に会話はない。

恵理ちゃんには伝えられることは全て伝えた。恵理ちゃんの家族がどこまでその話を信じてくれるのかは分からないけれど、後をどうするかはきっと家族で話し合って決めるのだろう。

ダンボールに入れた神具は朝に比べれば随分重く、足取りも心も重かった。


「泰紀たち……大丈夫かな」


家が近くなってそう呟いたのは来光くんだった。

どうにも答えることが出来なくて「そうだね」と項垂れるように相槌を打つ。


「早く帰ろう」


嘉正くんの言葉にひとつ頷き歩みを早めたその時、


「うわぁあああッ!」


耳をつんざくような絶叫が聞こえて全員が動きを停めた。聞き覚えのある声に言葉を失う。

顔を青くした二人が駆け出して、私も必死に足を動かした。


悲鳴は家に近づくにつれ大きくなった。声は私の部屋からではなく一階の角部屋、玉じいの家から聞こえた。

飛び込むように部屋へ入った。靴を脱ぐのももどかしい。耳を塞ぎたくなるような苦しさを堪える悲鳴は部屋中に響いていた。

廊下に神具のダンボールを置いて居間へ駆け込む。


「痛いよな! 辛いな! 頑張れ慶賀、もうすぐだからな!」


痛みをこらえるためにきつく閉じた瞼からはボロボロと大粒の涙が絶え間なく流れ落ち、痛みから逃れようと暴れる四肢は泰紀くんと玉じいがきつく押さえつけた。

口にはタオルをくわえ、それでも歯の隙間からは悲痛な叫び声が漏れていた。

想像を絶する光景に思わず後ずさった。カタンと障子に踵が当たって音が鳴ると、泰紀くんがはっと顔を上げた。


「手伝え嘉正、来光ッ!」


両頬を打たれたようにハッと我に帰ったふたりは慌てて横たわる慶賀くんの体を抑える。

ふたりが体に触れた瞬間、まるで火に炙られた鉄棒を押し付けられたかと思うほどの絶叫が部屋中に響く。


「頑張れ慶賀、頑張れ! すぐ終わるからな!」


顔を顰めた泰紀くんが何度もそう声をかける。

やめてくれと激しく首をふる慶賀くんに、何もすることが出来ず立ちすくんだ。

禄輪さんは詞を唱え続けた。聞いたことがないものだけれど、その声の調子が低く重いものだったので唱えているのは呪詞なのだと分かった。

みんなの隙間から見える慶賀くんの赤く爛れた肌が、少しづつ赤みが引いて元の色に戻り始めているのが分かる。

禄輪さんが唱えているのは、この傷を治すためのものなんだ。

呪詞の詠唱は一時間近く行われた。

最後に手の甲の爛れが消えた瞬間、慶賀くんは張り詰めた糸が切れたかのようにぷつりと気を失った。

咄嗟に息を確認した禄輪さんが、安心したように「問題ない」と言ったので、私たちは力が抜けたようにその場に座り込んだ。


「今のは……」


来光くんが不安げにそう尋ねる。

禄輪さんは深く息を吐いて私たちを見回した。


「詳しいことはまだ一年生のお前たちには教えられんが……慶賀と泰紀が受けたのは神がもたらす災いだ。神の災いの性質は言祝ぎだから祝詞で祓うことはできない。だから同程度の強い呪詞をぶつけて相殺したんだ」

「呪詞で相殺……」


乾いた咳をした禄輪さんに、玉じいは水の入ったコップを差し出した。両手でそれを受け取って、ほぼ一口でそれを飲み干す。


「覚えておきなさい。神の災いは本来人間が相殺できる程度のものでは無い。あらかたお前たちを少し脅かして反省させようと促して下さったんだろう。この程度で済んだ事に感謝しなさい」


真っ直ぐ目を見つめることが出来なくて、畳の縁に視線を落とす。顔を上げなさい、と言われても鉛のように頭が重かった。


「お前たちは自分の力を過信しすぎだ。確かにこの数ヶ月で現役の神職ですら遭遇しないような出来事を沢山経験した。確実に成長しているのは認めよう。けれどそれは全てたまたま運が良かっただけだ。本来のお前たちはまだ神職の見習い、未熟で出来ないことや知らないことの方が多い。今回のように敵わない相手と敵対した時に、お前達に待ち構えている未来は「死」だ」


どの言葉も確実に私の胸を刺していく。

自分の力を過信していたのも事実、なんでも出来るような気になっていたのも事実、自分たちの力で何とかできると思ったのも事実だ。

禄輪さんの言う通り、全部運が良かっただけ。

夏祭りの日に裏の鳥居で子供を救えたのも、偶然私たちの知っている祝詞で対処が出来たから。偶然唱えた祝詞だけでなんとかなる相手だったから。


すこしでもその偶然がかけていれば、きっと手も足も出なかっただろう。

私たちはそれほど未熟で弱い。誰かに助けてもらわないと、まだちゃんと戦うすべさえ持っていないんだ。


「二学期からは、その事をしっかり頭に入れて勉強に励みなさい。自分の弱さや未熟さを受け入れて、無力さを痛感すること。それが強くなる第一歩だ」


重い頭をあげれば、禄輪さんは目尻にシワを寄せて柔らかく微笑んだ。

その笑顔を見て心の中で張り詰めていた何かがはじける。情けないくらいに流れ出す涙が止まらなくて、何度も何度も手の甲で拭った。

皆のすすり泣く声が部屋に響く。

唇をかみ締めれば大きな掌が私の髪を撫でた。温かくて大きな手、頼りになる手、私が目指したいのはこんな手だ。


疲れ切っていた私達はその日は泥のように眠った。

みんなはもう一泊玉じいの家に泊まって、夕方近くにやっと起きだし遅い朝ごはんを食べた。

幸いなことに傷もすっかり癒えた泰紀くんと慶賀くんは、まだ少し疲れた顔をしていたけどもう具合は良いらしい。

みんなでもう一発ずつ禄輪さんから拳骨を頂戴してから、荷物を纏めて駅に向かった。


「────控えめに言って死ぬかと思った」


駅へ向かう道すがら、慶賀くんはげっそりした顔でそう言った。


「あれは例えるならそう……全身に包丁を突き立てられるような……」

「んなの生易しいぞ慶賀。全身の皮膚を力任せに剥かれる感じだったな」


私たちには想像もできないような痛みにごくりと息を飲んだ。


「ごめん、俺が」

「あー、やめろやめろ! 謝るなって!」


何か言いかけた嘉正くんを泰紀くんは苦笑いで片手で制した。


「俺たちもオーサキだって思ってたし、嘉正のやり方に納得して従ったんだ。それでこうなったんだから自業自得だって」

「そーそー。寧ろ女の子の巫寿がこうならなくって良かったよ! あとひょろひょろの来光もな」

「ちょっと感動してた僕の心返してくれる?」


あっという間にいつもの雰囲気に戻った私たちは談笑しながら、少し涼しくなった夕方の歩道をゆっくりと歩いた。

駅が見えてきて、誰かがこちらに向かって大きく手を振っているのが見えた。


「みーこー! みんなー!」

「恵理ちゃん!」


私たちは手を振り返して駆け寄った。


「あれ、恵理ちゃんどうしたの?」

「みこから今日みんなが帰るって聞いて、お見送りしたかったの」

「わざわざありがとう」


ううん、と少しはにかんで恵理ちゃんは肩を竦めた。

次の電車が来るまで少し時間があったので、駅の影に入ってみんなで少し立ち話をした。

恵理ちゃんは昨日の晩にした家族会議のことを話してくれた。

結局、おばあちゃんはやはり施設に入ることに決めたんだとか。でもそれはおばあちゃん自らの意思でそう決めたらしい。

今日の朝神棚に手を合わせた時に、御祭神さまにはそう報告したんだと教えてくれた。


「おばあちゃんの代わりになるかは分からないけど……これからは私が毎日手を合わせることにしたの。認めてもらえるかな」


恵理ちゃんは眉を下げて肩を竦めた。

泰紀くんが頭の後ろで手を組んで笑う。


「大丈夫だろ。恵理ちゃんってばーちゃんより言祝ぎが強いし」

「えっ、それって私にも皆みたいな素質があるって事?」

「んー、それとは少し違うけど、頑張り次第でばーちゃんみたな巫女にはなれると思うぜ」


恵理ちゃんは自分の両手の掌を不思議そうな顔で見つめた。

電車が車での短い間で、私たちはこれまであった出来事を振り返りながら色んな話をした。

巻き込んでしまった恵理ちゃんには申し訳なさがあったけれど、「不思議な経験が出来た」と喜んでいる姿をみて少しだけ安心した。

もうすぐ電車が到着するというアナウンスが聞こえて、嘉正くん達は「そろそろ行こうか」と鞄を肩にかけ直した。


「もうあと数日しかないけど、夏休み楽しんでね巫寿。恵理ちゃんも、また会おう」

「うん、みんなも楽しんで。また学校でね」


改札へ歩き出すみんなに手を振る。その時、


「あのっ!」


突然大きな声を出した恵理ちゃんに目を瞬かせる。

みんなも不思議そうに振り返った。


「ちょっといいかな……! 泰紀くん!」

「え、俺?」


驚いたように自分を指さして首を傾げた泰紀くんに、恵理ちゃんは顔を真っ赤にして頷いた。

小走りで戻ってきた泰紀くんは「どうした?」と首を傾げる。恵理ちゃんはばっと顔を上げた。



「……好きになっちゃいましたッ! 付き合ってください!!」



しん、と当たりが静まり返る。

改札口の前で待っていたみんなが目と口をカッと開いて固まっているのが見えた。

多分私も同じ顔だ。


「えぇええ!?」


人気の少ない駅のホームに泰紀くんの声が響いた。


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