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第3話 ルーネ・ゼファニヤ
しおりを挟む目を覚ますと目の前にムソンの肉体美があった。
ムソンは夜着から着替えていたところだった。
ルーネは定まらぬ意識のまま凝視した。そして一気に血が巡り、意識が覚醒していくのを感じた。
(んまあ!んまあ!夫なのにムソンの裸って初めて見たけど、こんなにたくましくて綺麗だったのね!まるで大理石でできた彫刻じゃないのっ!ところどころにある傷痕がまた……!)
「……」
じっと見ていると、ムソンもじっと見返してきた。
「え、えへ」
ルーネはつい引きつった笑みを返した。
「……先に朝食に行きます」
ムソンはプイっと寝室を出て行った。
ルーネは改めて周りを見回した。
おおきな鏡がある。そこの前まで行き、おどろいた。
若いのだ。自分が若返っていることにルーネはおどろいた。
死の直前には骨と皮だけの状態になっていたというのに、今は16歳ならではの肌の張りをしていた。そうはいっても、相変わらず青っ白いが。
「……これってもしかして時を遡ったってことかしら?」
ルーネはとんでもない事態に一分ばかし固まった。だが、だんだんに頭のなかで言葉が浮かんできた。
(……でも、わたし、その前に死にもしたわ)
(……死ぬよりおどろくことって、この世にあるのかしら?)
(……とにかく今生きてて、しかも若返っている)
(……じゃあ、死ぬ前に思った『生まれ変わったら娘らしく元気に楽しく生きてみたい』ってことをしたらいいんじゃないかしら?)
ルーネは鏡の前でニッコリ笑った。そこには比較的溌剌とした、人生を楽しむには十分な体があった。
「生まれ変わりではないけど、似たようなものよね。じゃあ、どうせあと5年で死ぬし、楽しく元気よく生きちゃおうかしら!」
ルーネ・ゼファニヤは今できることを精一杯やろうとする性質だった。
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