上 下
147 / 203
本編

No.141~ダンジョン解放前イベント15

しおりを挟む
「食え」

いきなり言われた事に俺は一瞬思考を停止させ、だが直ぐに起動した

「ちょ、ちょっと待て、えーと、アルンは死んでいると思われる奥さんや子供に会うために死にたい、それで死ぬ方法が吸血鬼の力を誰かに譲渡しなければいけない、ここまでは合ってるな」

「ああ、その通りだ」

「じゃあ何で俺はそんなにグロテスクな物を食べさせられそうになってるんだ!」

流石の俺もアルンの体内に有ったグロい玉をいきなり食えって言われても理解できない。

そう伝えるとアルンはお前は分かってないな見たいな顔をしてため息をついた。

「ユウヤよ、話の流れで分かるだろう、これは我の吸血鬼の力を凝縮した物なのだよ、簡単に言うと吸血鬼の力の根幹だ」

そう言うとアルンはそれについて話始める。

「吸血鬼に噛まれると吸血鬼になるという話があるだろう。
あれば規模の小さい吸血鬼の力の譲渡なのだよ、両者の同意の元に吸血行動を行うことで吸血鬼としての力を少し譲渡するといった感じにな」

「この力は爵位が上がる毎に強くなり、力や吸血鬼としての能力、治癒速度や範囲まで変化する、だから爵位の高い者に噛まれて吸血鬼になったものは強いのだよ、力が1000の者から10貰うのと100の者から1貰う様にな」

成る程、納得できるな。

「そして、この力は同族から吸血する事で奪うことも出来る、つまり共食いをすることで力が増えるので、中には同族を狙って殺す輩が出たりもした、基本的には爵位の高い者が勝つし、自分より弱い奴から吸血しても対して強くならないから無差別に殺すって訳でもなかったのだがな」

自分より弱い者を吸血しても対して強くならず、逆に自分より強い者を吸血すると大幅に強くなる…か、なんだが経験値みたいだ。

「そしてこの吸血鬼の根幹と言える力を失った者は必ず死ぬという訳だ。
ユウヤは吸血鬼では無いから吸血による力の譲渡は不可能、そして一度我が吸血してユウヤを吸血鬼にしてからの吸血も出来ない」

「なんでだ?」

俺は疑問に思ったことを質問する。

「簡単に言うと噛まれた事で吸血鬼になった者が吸血鬼にしてくれた者を吸血してもあまり力が譲渡されないのだ」

親殺しをすると力が手に入らないのか、普通なら考えられないが、この世界は神が作った設定が組み込まれてるからな、身内を殺しても経験値は余り手に入らないように設定をしたのか?

「そこで我は自分の体からこの力を結晶化させ、すべての力を譲渡するという考えに至った」

「それで、なんでそれを食うって考えになんだよ」

「それはだな…我らの力は体内に入る事で定着するのだ、だから結晶化させた力を譲渡するにはユウヤに食べてもらうしかないのだ」

納得は出来るが流石にこれを食べるのはなぁ…自分の本来の体じゃ無いのは分かっているが抵抗感がヤバイ。

現実とほぼ変わりのない事による弊害を発見してしまったぞ…得られる物は多いのにグロい物を食べるのに躊躇してしまうという物が。

(仕方ない、覚悟を決めるしかないか)

俺はアルンから赤黒い玉、もとい力の結晶を受けとる。

アルンの体内から取り出したそれは血に濡れていてヌメヌメする。

このまま口に入れる事は出来ないので水魔法を使って力の結晶をきれいに洗う。

ヌメヌメは取れたがまだ抵抗感が拭えない。

(よし、あれをやろう)

俺は時空魔法を発動させ、力の結晶の周りに空間を発生させ、結晶を閉じ込める。

そして俺は空間ごと力の結晶を丸のみする。

幸い俺はゲームのアバターなので苦しいけれど窒息するなんて事は無い。

喉を通っていき、胃に結晶がいったのを確認した俺は時空魔法を解除する。

「ユウヤ、ありがとう…これで妻の元に逝ける、本当に感謝してる」

アルンは足元から光となって消えていく中、俺に礼を言う。

「ああ、俺も少しの間だったけど楽しかったぜ、あっちで奥さんに会えるといいな」

そう伝えるとアルンは「うむ、妻に会ったらユウヤの事を伝えておこう、じゃあな」と言って笑顔で消えていった。

アルンが消えた後、城の窓から光が差し込む。

俺にはそれが何かを祝福している様に見えた。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...