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本編

No.9~シュウと顔合わせ

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「さて、みんな起きたしそろそろ移動するか」
「今、近くに夢喰いバクの気配はないよ」

とりあえず街にでもいくかー、とユメアが歩き出した。

……街?

「街って……?」
「街は街だよ、人が沢山いるの」

なんとなーく、理解した。
さっきの会話の中にもあった通り、夢姫ゆめたちのような能力がない
ごく普通の人間も存在してる。
ということはつまり、建物や都市が存在しててもおかしくない。

「なんだかなぁ……」

夢なのに。

夢なのに、歩けば疲れるし
頬をつねると痛いってどういうことなんだろう。

まず痛いって時点で夢だとは思えない。

そう思いながら夢姫ゆめは皆の後ろをひとりトボトボと歩いていた。
根拠はないが、彼らの後ろ姿がなんとなーく「ここは夢だよ」って言っているようだ。
ライカは目が不自由だと言っていた、彼の横にアリスが居てお世話をしてる。
ユメアは独り言……ではなく、
おそらくドールがテレパシーでユメアに話しかけてるのだろう、何かを話している。

夢姫ゆめ疲れた?大丈夫?」
「大丈夫だけど、皆歩くの早すぎ…」

普通に歩いて気がつくと、とんでもなく距離を置かれたので夢姫ゆめは少し急ぎ足で歩いていた。
キーリとの会話が聞こえたのか、ドールがくるりと振り返ってこちらに歩いてきた。

「…そうそう、飛ぶように歩くのがいいんだよね」

と、キーリが言う。
ドールと会話したのかな?
ほかの3人も足を止めてくれていた。

「……夢姫ゆめ、もしかしてドールの声聞こえてない?」
「は?」
「え?」

ライカの一言に驚くユメアとアリス。
ドールも夢姫ゆめの顔をじっっと見ている。

「え……と。な、なにも、聞こえてな、いけど……」

そう言うと、ドールは瞬きをして下を向いてしまった。

「すぐ気づかなくてごめん。そうだよな、能力も使えないのにテレパシーが通じるはずない」
「わ、私こそ聞こえてないって言わなかったのごめんねドール」

マフラーで口を隠しているから表情はわからない。
というか、今初めて至近距離でドールの顔を見たけど
眉毛がない……前髪で隠れてるだけ?
どちらにしても、綺麗なエメラルドグリーン色の目しか見えてないから彼が今どんな気持ちで何を思ってるのかさっぱりわからない。

「大丈夫だよ、だって」

肩に座っていたキーリが夢姫ゆめに言った。
よかった、怒ってもいないし落ち込んでもいなさそう。

「あのー……」

前のほうから小学生くらいの男の子が声をかけてきた。
服装は夢姫ゆめたちとは違って、現実世界にいるような普通の、ほんとにごく普通の格好をしている。
能力を持たない「普通の人間」、とか説明されたが
格好まで普通ではないか……!!と夢姫ゆめは心の中でツッコミを入れた。

「どうしたの?」
「お母さん見ませんでしたか?はぐれちゃって」

お母さんって……、親子も存在しているのか。
夢の世界なのに現実世界と違うのは夢喰いバクという怪物がいるかいないかのパラレルワールドみたいだ、と夢姫ゆめはこの状況になんとかついていこうと必死になっていた。

君のお母さんってどんな感じの人?と、聞くアリス
そんな中キーリが周りをキョロキョロしだした。

「キーリどうしたの?」
「ん……なんとなく、夢喰いバクの気配がする」

その一言にドキッとする。

実際見たのは昨日1度きり
これから嫌でも見る存在なのだろうけど
いざ、こう……近くにいる、とか目の前に突然バーン!とか出てこられると気絶しそうだ。

「……あ!お母さん!」

ぱぁっ、と笑顔になる少年。
振り返ると大きな、
それはそれはとても大きな夢喰いバクが大きな口から大量のヨダレを垂らしながらゆらゆらと揺れていました。

…………おいおいおい?!

「お、お母さんって、どうみても夢喰いバクだよね……?!?!」

そう言って振り返ると少年はころりと寝て、ライカの腕の中にいた。

ちょ……現実逃避、じゃなくて
なにこれ、夢逃避……?

夢姫ゆめ!ぼうっとするな!」

ユメアの声にはっとして夢喰いバクを見るとグローブの3倍……いや、5倍くらいある大きな手が迫ってきていた。

殴られる……?!

ぎゅっと目を瞑って手で顔付近をガードする。

肉を裂く音。

でも痛みはなくて、目を開けてみるとドールが夢喰いバクの腕を切り落としていた。
地面で這いずり回る手をよそに、夢喰いバク本体からはボコボコと音を立てて切り落とされた断面から新しい手が生えてきていた。

「下がってろ」

ユメアにぐいっと首根っこをつかまれて後ろに無理やり引きずられる。
転びそうになりながらも、なんとか尻餅をつくのは耐えて少年を抱いてるライカの元へ行った。

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