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「…主、魔法消して良いよ」

「あ、ああ」

いきなりフェルが小さくなるという状況に驚いていた俺はフェルの言う通りに魔法を解除した。

「じゃ、行こっか」

小さくなったフェルはそう言うと大通りの方向に歩き始めた。

「ああ…ってちょっと待て!」

フェルの後ろについて行こうとした所で停止していた思考が戻り、フェルを止める。

「どうしたの?」

俺に止められたフェルは何かおかしい事でもある?とでも言いたげな表情でこっちを振り向く。

「どうしたの?じゃ無い、いきなりなんでそんなに小さくなってるんだ?」

今のフェルの姿はユグドラシルで見慣れた姿だ。

多分変化系の能力を使って以前の姿に変身したのだろうけどなんで今それをしたのかが分からない。

「主、小さくなったんじゃ無いよ、元に戻っただけ」

「元に戻っただけ?」

元に戻ったってどう言う事だ?確かに見た目はユグドラシルに居たの時の姿になってるけど…

「そう…説明するね」

フェルの元に戻ったと言う発言について考えている俺にフェルは説明をする。

「成る程、元に戻ったってのはそう言う事だったのか」

フェルの説明によると、さっきまでの大人の姿はフェルが変化の能力を使って変身していた姿でユグドラシルの時と変わらない今の姿が本来の姿らしい。

だから今の姿になった事を元に戻ったと言った訳だな。

「俺はてっきりこっちにきてから成長したんだと思ったんだが、フェルの姿は変わってなかったって事だな」

俺がそう言うとフェルはむっとした表情をしてこう言った。

「そんな事は無い、こっちに来て私も成長してる」

「そうだったのか、気付かなくてごめんな」

具体的には身長が2センチ伸びた、と自慢気に言ったフェルに対して謝る。

「別に気にしなくても良いよ、元々フェンリルは長命種だから成長し切るまでに長い時間が必要、つまり私は現在進行形で成長期」

フェルはそう言うと自慢気に胸を逸らす。

「そうだな」

フェンリルの寿命はユグドラシルの設定だと1000~1500年位だったし、そう考えると約70歳のフェルはまだまだ子供って事か。

「じゃあ今度こそヤヨイの所に行こ」

俺がフェルの言った事に納得しているとフェルは俺に一言声をかけて大通りに向かって歩き始めた。

「フェル、少し気になる事があるんだけど聞いて良いか?」

「なに?」

フェルと一緒に大通りを進みながら俺はさっきの件で気になった事をフェルに聞いてみる事にした。

「6日前に俺がフェルに会いに行った時は何で変身を解除しなかったんだ?」

6日前、俺がフェルに会った時、フェルは変身を解除しないでずっと大人の姿だった。

さっき変身を解除したから、あまり身体が大きくなってない事を俺に知られたく無かった、という訳でも無いだろうし…きっとあの場で変身を解除できなかった理由があったのだろう。

「…この姿を集落の皆に見られたら、絶対にメンドくさい事になる」

フェルはソレを想像したのかブルッと体を震わせた。

「あ~そういう事ね、完全に理解した」

確かにあの人達が今のフェルを見たら大騒ぎになるだろう。

それを一番理解しているフェルは絶対にこの姿が見られる事のない様にあの場で変身を解除しなかったって事だな。

「いや~、それにしてもあの人達もよくフェルが集落から離れるのを許してくれたよな」

今でもあの集落の人たちが自分たちの元からフェルが居なくなるって聞いて素直に納得するとは思えない。

「そう?私が居ると集落の皆が成長出来ないから、とかそれっぽい事を話したら納得してくれたよ」

「へぇ~そうだったのか」

まぁ結局の所、集落の人たちが素直に納得したのはフェルが言ったからなんだろうな、多分俺が同じ事を言っても絶対に納得しないだろうし。

俺がそんな事を考えていると携帯から着信音が鳴った。

「電話…誰からだ?」

俺はポケットから携帯を取り出し、表示を確認する、どうやらフェニから電話が来たみたいだ。
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