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「別に礼をいう必要はないさ」

「そうか…おい、戻るぞ、誰かコイツを担いで行ってくれ」

「隊長!?」

兵士達の隊長は部下達に撤収の命令をだした。

部下は何故撤収するのかと声を上げる。

「馬鹿野郎!自分に斬りかかってきた奴が居る様な所と取引をしてくれる奴が居るか!居たとしてもそれは先ほど斬りかかられたから、取引に応じないと殺されると思ったからだ、そんな恐喝紛いの行為で取引をしたところでアルバレス卿の顔に泥を塗るだけだ」

ふむ、どうやら隊長だけは冷静に考えているらしい。

隊長の言った通り、現状部下の1人だとは言え、取引をしたいと言っている相手に斬りかかってしまったのだ、そんな事をすれば取引なんて出来るわけが無い。

普通の人なら斬りかかられた時点でどの様な契約内容であっても取引をする事はないだろう。

激昂して襲ってくる奴が居るところと契約をしたところで何らかの理由で切り捨てられる可能性が出てくるし、そもそも契約がしっかりと執行される保証が無いからな。

そして、部下の暴走とは言え、斬りかかられた事で取引に応じなければ殺されるかも知れないという可能性が出てくるから、死にたく無いと考える人だったら取引に応じてしまうだろう。

だが、それで取引に応じた場合では、アルバレス卿の部下が「取引に応じなければ殺すぞ」と脅して無理やり協力させたという話が出てきてしまう。

書状を出したり、部下達の態度から、アルバレス卿とはこの国で良い地位に就いている事が予想できる。

だからアルバレス卿は、自分の目的の為には手段を選ばない等と言った、悪い噂が出てきたらイメージが悪くなるし、信用が得られにくくなるからな。

部下達は仲間が店主に斬りかかったという事で動揺していたみたいだが、その分隊長はこのまま店主と交渉した場合のデメリットをしっかりと理解して部下に撤収を命令した。

「店主よ、本日は本当にすまなかった、後日謝罪の品を持ってくる…」

隊長は店主に再度謝罪して、後日に再度謝罪をすると言った

「ふん、別にアンタが謝る必要はないわい、だが、ワシは戦争に使う為に武器を売る事は無い、アルバレス卿にもしっかりと言っておくんだな」

が、店主は謝罪の必要は無いと言って、取引に応じる気は無いと明言した。

「了解した、主には一応言っておこう、だが、我々もこの国を守りたいから協力を申し出ている事を覚えていて欲しい…行くぞ!」

店主にそう言われた隊長は店主にそう言って、部下達と共に店から出て行った。

「…迷惑をかけたな」

店主は俺に向かってそう言った。

「いえ、流石にあのまま放置していたら流血沙汰になりそうだったんでつい…」

俺がそう言うと店主の親父さんは俺の方を見る。

「はぁ…それで、あんたは俺に何の用が有るんだ?」

親父さんはため息をついた後、俺にそう言ってきた。

「あれ?いきなりどうしたんですか?」

先程まで反応すらしてくれなかったのに…やっぱり兵士から助けたというのが良かったのだろうか?

「お前さんが俺に何かを聞きたいというのは知っていた」

まぁあれだけ目の前で声を掛けてたからな…ガン無視だったけど

「最近色々とゴタゴタが有ってな、さっきの様に国に武器を作れと行ってくる連中が多いんだ」

成る程、それで俺もそれの一つだと思って無視してた訳だな。

「だが、さっき兵士達がアルバレア卿の名前が言っただろう?」

俺は親父さんの言葉に頷く。

「アルバレア卿とはこの国トップである四大貴族の一つ、アルバレア家の当主の事を言うんだが…この国に少しでも居たのなら名前を知らないという事はあり得ない」

そういうことか…つまり、親父さんは戦争に自分の作った武器を使うのを嫌がっているから、公国の貴族に武器を売らないようにしている。

公国の戦争に関わっている人物なら国のトップに君臨しているアルバレア卿の事を知らないわけが無い。

逆に、アルバレア卿の事を知らないって事は戦争に関わっていないという事になるから、親父さんも俺に話しかけてくれたという事なのだろう。
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