上 下
76 / 280

76

しおりを挟む
リミッターを全解除し、身体能力が元に戻った俺はハーネストの首をすれ違い様に斬り飛ばす。

「私の負けだな…ユウヤよ、貴様との戦い、楽しかったぞ」

ハーネストは首だけになっても少しの間は生きている様で、俺に話しかけてきた。

「ああ、俺も楽しかったよ」

「だが、最後に一つだけ気になっている事がある…聞いていいか」

「良いぞ」

ハーネストは俺に一つ聞きたい事がある様なのでそれを聞く事にする。

「最期の攻撃、俺はお前の動きを視認する事すら出来なかった、あの動きが出来るなら何故最初からやらなかったのだろうと思ってな、アレなら一瞬で俺を倒せただろうに」

俺はハーネストの質問に答える。

「確かに俺が最初から全力で戦っていれば直ぐに戦闘は終了する。
だけど俺がそれをしない理由は…」

俺はハーネストに理由を話した。

「そうか…ユウヤ、死ぬ前に俺から一つ教えておこう」

俺の理由を聞いて納得したのかハーネストは一度頷いてから何か俺に教えたい事があるらしい。

「俺が邪神の魂を取り込むと言った時に世界を征服する為と言っただろう…だが、それは正しい答えじゃ無い」

「どういう事だ?」

ハーネストがあの時話した世界征服の為に邪神の魂を取り込もうとしているというの自体が違うのか?

俺が少し考えているとハーネストは話す。

「現在、魔界では新しい魔王を決める為にとある事をしているのだ」

新しい魔王?

「それが邪神の魂を取り込むって事か?」

「ああ、古に伝わる邪神、その邪悪なる力を国の最深部で封印されている事が発覚してな、魔王候補の悪魔で邪神の力を取り込んだ者が次の魔王になるという事になっている」

魔王の後継者を決める為に邪神の力を取り込むという条件を作った訳か。

邪神の魂の残滓とも言える力を取り込もうとするという事は国としては全力でそれを阻止しなければならない。

となれば国の最高峰と言える人物との戦闘に発展する事は容易に想像できる。

人間達の最強格を倒し、邪神の力を手に入れたのなら魔王となる資格があると認められるという事か。

「それで、世界征服と言ったのは何でだ?」

「邪神の力を取り込んだ場合、取り込んだものに逆らえる者や対抗できる者は居なくなるだろう。
誰にも負けない力を一個人が持つ、それがなされた場合魔界の民は地上に宣戦布告をするだろう。
そうなれば否応にも世界征服は達成されるからな」

ブラフの類では無く実際に誰かが力を手に入れたら起こるって訳か。

「それで、何故そんな事を俺に教えようとしてるんだ?」

先程までは敵として戦っていたのだ、俺に教える義理は無い。

「なに、最後まで楽しませて貰った礼だと思ってくれ…それで、俺の他の魔王候補だがな、皆それぞれ特別な能力を持っている、俺の場合は驚異的な再生能力と肉体強度と言った感じにな」

成る程、だから無名の攻撃を魔力で身体強化を発動させただけの腕で受けることが出来たし、腕が吹っ飛ばされても再生する事が出来た訳か。

「他の魔王候補は厄介な能力を持っている。
だから魔王候補にあった場合は俺の様に様子を見ながら戦わず、一瞬でケリをつけた方が良い」

「分かった、気をつける事にするよ」

「さて、もうそろそろ俺の生命活動は停止する。
俺が死んだらこのダンジョンのスタンスピードは収まるだろう…さらばだ我が友よ」

ハーネストはそう言い終わったと同時に死んだ。

「友よ…か」

ハーネストが死ぬ前に放った俺の事を友と言った一言はなんの違和感も感じることも無く納得できた。

あの戦闘は短い間だったが素晴らしく楽しかった。

「さらばだ友よ」

俺もハーネストに一言話してからハーネストの死体をアイテムボックスに入れる。

「さて、これでスタンスピードは収まるだろうし、地上に戻るか」

邪神の力や魔王候補か、また新しい問題が出来てしまったな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ハズレスキルも組み合わせ次第!?付与とリセットで成り上がる! 孤児として教会に引き取られたサクシュ村の青年・ノアは10歳と15歳を迎える年に2つのスキルを授かった。 授かったスキルの名は『リセット』と『付与』。 どちらもハズレスキルな上、その日の内にステータスを奪われてしまう。 途方に暮れるノア……しかし、二つのハズレスキルには桁外れの可能性が眠っていた! ハズレスキルを授かった青年・ノアの成り上がりスローライフファンタジー! ここに開幕! ※本作はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

土下座で女神に頼まれて仕方なく転生してみた。

モンド
ファンタジー
ドジな女神が失敗を繰り返し、管理している世界がえらい事になって困っていた。 ここに来て女神は「ここまできたら最後の手段を使うしかないわ。」と言いながら、あるカードを切った。  そう、困ったら「日本人の異世界転生」と言うのが先輩女神から聞いていた、最後の手段なのだ。 しかし、どんな日本人を転生させれば良いかわからない女神は、クラスごと転生を先ず考えたが。 上司である神に許可をもらえなかった。 異世界転生は、上司である神の許可がなければ使えない手段なのだ。 そこで慌てた女神は、過去の転生記録を調べて自分の世界の環境が似ている世界の事案を探した。 「有ったこれだわ!・・何々・「引きこもりかオタクが狙い目」と言うことは・・30歳代か・・それから、・・「純粋な男か免疫のない男」・・どういうのかわからなくなったわ。」 と呟きながら最後は、 「フィーリングよね、やっぱり。」 と言い切ってカードを切ってしまった、上司の許可を得ずに。 強いのか弱いのかよく分からないその男は、女神も知らない過去があった。 そんな女神に呼ばれた男が、異世界で起こす珍道中。

前世が官僚の俺は貴族の四男に転生する〜内政は飽きたので自由に生きたいと思います〜

ピョンきち
ファンタジー
   ★☆★ファンタジー小説大賞参加中!★☆★        投票よろしくお願いします!  主人公、一条輝政は国際犯罪テロ組織『ピョンピョンズ』により爆破されたホテルにいた。 一酸化炭素中毒により死亡してしまった輝政。まぶたを開けるとそこには神を名乗る者がいて、 「あなたはこの世界を発展するのに必要なの。だからわたしが生き返らせるわ。」 そうして神と色々話した後、気がつくと ベビーベッドの上だった!? 官僚が異世界転生!?今開幕! 小説書き初心者なのでご容赦ください 読者の皆様のご指摘を受けながら日々勉強していっております。作者の成長を日々見て下さい。よろしくお願いいたします。 処女作なので最初の方は登場人物のセリフの最後に句点があります。ご了承ください。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

異世界でもマイペースに行きます

りーさん
ファンタジー
 とにかくマイペースな少年、舞田理央。 ある日、異世界に行ってみないかという神の誘いを受ける。  詳しく話を聞くと、自分は魔力(魔素)を吸収する体質で、異世界で魔力(魔素)が多くなりすぎているから、回収してほしいらしい。  いつかはのんびりと暮らしてみたいと思っていたし、そのついでなら、ということで了承した。  伯爵家の次男として目覚めた彼は、とにかくのんびりマイペースをモットーにいろいろ好き勝手しながら、異世界に旋風を巻き起こしたり巻き起こさなかったりするお話。 ーーーーーーーーーー 『手加減を教えてください!』とリンクしています。これだけでも、話は成立しますが、こちらも読んでいただけると、もっと深読みできると思います。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...