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 黄色と赤のチェック柄のハンカチに包んである、小さな弁当箱。
 それを、180㎝を越す身長の、筋肉質の男子生徒が持っている。
 その姿を見て、弦という人間を知る者はみな、ギョッとした。
 しかし、彼に美少年の後輩がいることもまた、よく知られている。
 次の瞬間には、全員が納得していた。

 あれは、河島の弁当箱だ。

 後輩ではなく、恋人だろう、という冷やかし声を、弦は時折耳にする。
 確かに、女子以上に可愛いと評判の顔立ちと、抜群のスタイルを持つ千尋だ。
 幼い頃は、それがいじめの原因になっていたが、今は大丈夫だろうか。
 そんな風に、弦は考えていた。
(もう、高校生だ。俺の心配など無用かもしれないが……)

 容姿がいいだけでなく、心優しい千尋は、特に女子の間で人気だった。
 入学当初は何かと気を配って、世話してくれていたものだ。
 だが、人気は高じると、からかいの対象になる。
 今ではすっかり、いじられキャラになってしまった千尋を、弦は心配していた。 

 以前、男子からラブレターをもらったと、悩んだことのある千尋。
 差出人を締め上げると、数人で仕組んだいたずらだと白状した。
 冗談半分でやったことだ、許してくれ、と悲鳴を上げながら必死で言い訳していたが……。
(冗談半分ということは、あとの残り半分は本気なのでは!?)
 いまさらながら、どきりとした。

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