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 二人が唇を重ねた瞬間、ぴくん、と昴は身を震わせた。
 暁斗は口で昴の唇を覆い、その甘味をたっぷり味わった後、顔を傾けて何度も何度もキスをした。
 彼を受け入れた昴は、のぼせた頭で考えた。
(あぁ、とうとう。暁斗とキスしちゃった……!)
 過去に、恋人とキスをした時は、客観的に自分の姿を見ていたものだ。
 どこか冷めた心で、自分だけを見ていた。
 バラ園で、他人と抱き合い口づけを交わす自分を、一幅の絵画のように捉えていた。
 こうした方が、美しいから。
 美しい僕を、素敵に演出できるから。
 そんな理由で、ただ愛のないキスをしていた。
 それがどうだ。
 放牧場で不格好な所を見られた相手に、すっかり酔った醜態を晒している。
 あげくに、唇を許すとは。
「……んッ、ふ。ん、ぅん……」
 それでも、短いブレスの合間には、甘い声が漏れる。
 これまでの、どんなキスより体が疼く。
 昴の真っ白だった頭は、バラ色に塗り替えられていった。
 暁斗の浴衣を握りしめ、忍び込んできた彼の舌を受け入れていた。
 こわばって動かない昴の舌を、暁斗が優しく舐め、絡ませてくる。
 何度も何度もそうされているうちに、昴も同じように暁斗の舌を慈しみ始めた。

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