星をあなたに ～不思議ちゃん・伊予の正体は……男の娘！ それを知った上司の英治は……？～

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　いつもならば、こっそりと。
　そっと無人のデスクの上に、缶コーヒーの差し入れをする、伊予だ。
　しかし今日は、声を掛けずにはいられなかった。

「おっと。まずいところを、見られちゃったな」
　笑顔の英治は、すでに背筋を伸ばしている。
　ただの眼精疲労だ、と強がってみせる。
　しかし、と伊予は食い下がった。
　この鈍感な不思議ちゃんでも、彼の事となると、やたら心配性になってしまうのだ。

「公園遊具の立案、皆がこぞって新しいアイデアを、大沢さんに提出しているじゃないですか」
「いいんだ。斬新な発想は、社の追い風になる。良い傾向さ」
「でも。それで大沢さんの業務が、二倍三倍になってます」

　英治は、つい笑い出してしまった。
　空気が読めないはずの鹿久保くんが、一体何を伝えたいのだろう。
「少し休め、とは言ってくれるなよ。心配なら、目薬でも持って来てくれないか」
　出過ぎた真似を、と伊予は慌ててかしこまった。
（それでも大沢さんは、お疲れなんだ……）
　彼への心配を、胸の内で膨らませながら、伊予は英治のデスクを離れた。