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しおりを挟む藍が、雅貴の部屋まで招待されたことを、渡辺はひどく喜んだ。
「まさに、青天の霹靂! お祝いをしなくては!」
「少し、オーバーじゃないですか?」
ただ、中に入れてもらっただけだ、と藍は言う。
だが、渡辺はそれこそが一大事なのだ、と興奮している。
「やはりあなた様は、雅貴さまの御心を解き放つ、運命の御人だったのですね!」
「運命、だなんて。そんな」
運命のつがい、という伝説が、藍の脳裏によぎった。
赤い糸と同じく、宿命的に出会い結ばれる、アルファとオメガのおとぎ話だ。
(でも、そんな。僕と雅貴さんが、運命のつがいだなんて)
いけない、と藍は首を横に振った。
(これ以上、何かを望んじゃだめだ。期待しちゃ、だめだ)
「渡辺さん。雅貴さんは、そんなつもりで僕を部屋に入れたのではないと思います」
「何と、『雅貴さん』ですと!? 雅貴さまは、そう呼ばれることをお許しになられたのですね!?」
「ええ、まぁ……」
やはりお祝いだ、と渡辺は藍の部屋を足早に出ていく。
「雅貴さまがお名前を呼ぶことをお許しになるのは、久しぶりですからね!」
ディナーは奮発します、と言い残し、渡辺は消えた。
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