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しおりを挟む「私はまだ小さな時に、この街へ遊びに来たことがあるんだ」
要は、幼い頃の思い出を、目を輝かせながら語った。
豊かな海を、チャーターしたヨットで風を切って走ったこと。
海は青いと思っていたが、初めて深い緑色の波を見たこと。
ヨットの上で食べた海の幸が、素敵に美味しかったこと。
「私はすっかり、ここの海が大好きになってね。いつかまた、訪れたいと思っていたんだ」
「そうだったのかぁ」
要がヨットで遊んだ海に、宇実の会社の真珠も育っている。
「何だか、縁を感じるね」
「そうだね。私がこうして清水くんに出会うことは、あの頃から決まっていたのかもしれない」
乾杯、と要はティーカップを、宇実のそれに軽く当てた。
「嬉しいな。友達とこうして、寄り道してお茶を楽しめるなんて」
要の肥えた舌には、正直このお茶は渋みが強すぎて薄すぎる。
それでも、宇実と共に口にする紅茶は、今まで飲んだどれより鮮烈な印象をもたらした。
「ね。これからも時々こうして、一緒に寄り道してくれるかな」
「うん、いいよ」
「ありがとう」
そして要は、少しためらった後、照れ笑いをしながら言った。
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