期限付きの恋なんて!

大波小波

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1話 桜の出会い

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 桜の季節だ。
 新しいテキストを受け取るため、学校へ行った時、校庭は花開いた桜でいっぱいだった。
 春風にかすかに揺れる枝に、華やかに美しく咲き誇る、桜の花。
 そして、高校二年生の春休みも、おしまいだ。
 最終学年の、三年生に上がる心構えを、桜は祝福してくれているようだった。
 清水 宇実(しみず うみ)は、晴れ渡る青空に映える桜を見上げた。
 マッシュカットの黒髪が、さらりと流れる。
 眉毛の上でそろえた短い前髪が、少しやんちゃな少年のようなイメージだ。
 宇実は、意識して眉を整えたことが、あまりない。
 放っておいても、薄すぎず濃すぎず、きれいな形に収まるのだ。
 すっきりとした顔立ちだが、丸い二重瞼の目が印象的に見える。
 その目は、希望と決意に輝いていた。
「とうとう僕も、三年生だ」
 高校に通うのも、今年で最後。
 大学へは進学せずに、家業を継ぐつもりだが、それで勉強をおろそかにするつもりは、ない。
 どんな知識も、今後の自分に、いつか必ずプラスになる。
 そう、宇実は信じているのだ。
「明日からの一年間、悔いの無い日々を送るんだ。そして……」
 立派な大人になる!
 一人前になって、父さんの跡を継ぐんだ!
 新たな出発にふさわしい桜の道を、宇実は進んだ。

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