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しおりを挟むソファに転がっても、誠はなかなか寝付けなかった。
「露希の本領が覚醒した、といったところか」
オメガ男性を抱いたことは何度もあるが、あそこまで抗いがたいフェロモンは初めてだ。
「外山さんも、組長も、お喜びになるだろうな……」
そして、その露希をここまでに養育した誠は、高く評価されるに違いない。
若頭補佐筆頭に昇進も、あり得る話だ。
だがしかし。
「嬉しくは、ないな」
露希を取り上げられたら、自分はどうなるか。
抜け殻になって、しばらく立ち直れないかもしれない。
そこまで考え、誠は気が付いた。
「私は、露希を手放したくないと考えているのか?」
それほど深く想っているのに、なぜ今夜抱いてあげなかった。
「……外山さんと組長への、義理のためだ」
なぜ自分は、そんなヤクザの世界に足を踏み入れてしまったのか。
誠もまた、クッションを噛んで耐えた。
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