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しおりを挟む青原が帰った後、比呂はソファで隼人に抱っこしてもらっていた。
ゴロゴロと喉を鳴らし、甘えていた。
「比呂くん。本当に、いいのかい? 猫神様にならなくても」
「うん!」
どこか、吹っ切れたような、返事だ。
「実はね。僕、考えてたんだ。隼人さんが先にいなくなっちゃう、ってこと」
それは悲しくて、怖くて、途方もなく空虚だった。
ぶるりと震え、しがみついてくる比呂を抱き止めながら、隼人は考えた。
(だから青原さんは、比呂くんを心配してくれたんだ)
隼人は、青原の言葉を思い返していた。
(しかし、もう一つの言葉。比呂くんの変化、成長、とは?)
それは、比呂本人の口から、聞くことができた。
「猫神様に会ってから、隼人さんと一緒に生きて、一緒に死のう、って思えるようになったよ、僕」
「ありがとう。でも、私が比呂くんを独り占めしたら、可哀想なネコたちに悪いなぁ」
「それは、問題ないよ。僕、生きてる間は、ネコたちのために頑張るから」
限りある命の中で、できるだけの努力をする。
そして未来のことは、次の世代へと繋いでいく。
「英介さんや達夫さんの心が、隼人さんに引き継がれたみたいに、ね」
「比呂くん……立派になったね……」
隼人の目は、自然と潤んだ。
そこにいるのはもう、愛に飢えた痩せネコではない。
活き活きとした瞳を輝かせる、美しい生命だった。
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