時の舟には二人で乗ろう~自分を隠して偽り生きるイケメン俳優とモフモフあやかし少年は、愛を通して心を取り戻す~

 桐生 隼人(きりゅう はやと)は、人気の高いイケメン俳優だ。
 役者の家系に生まれ、子役としてデビューした時から、天才と謳われてきた。
 それでも決して驕り高ぶることのない優しい性格は、公私ともに愛されている。

 ところがある日、マネージャーの笹山(ささやま)から、芸能活動25周年を迎えるに当たって、新企画の動画配信を始めようと持ち掛けられる。
 プライベートまで切り売りしなくてはならない昨今の芸能事情に、疲労の色が隠せない隼人。
 しかも笹山は、住み込みのハウスキーパーまで選べという念の入れようだ。

 偶然にタップした画面に現れたのは、安達 比呂(あだち ひろ)。
 まだ幼さの残る、19歳の男の子だった。
 早急に辞めてもらうようにお願いしよう、と考えた隼人だが、比呂の明るい笑顔とキュートな容姿に目が留まる。
 さらにアンバランスな色香を感じ取り、ドキリとしてしまう。
 そんな比呂と、すぐに電話で話す機会が設けられたが、彼の第一声に驚かされた。

「もしもし! 採用ありがとう! 僕、一生懸命がんばるね! 僕のことは、比呂って呼んで!」
 いきなりの、年下からのタメ口に、隼人は不安になる。
 しかし、その明朗な声は彼の気分を少しだけ上げてくれた。
 比呂は、どんな少年なんだろう。
 そして、彼との生活に、どんな出来事が待っているんだろう。
 隼人のデビュー25周年は、波乱の幕開けになりそうだった。

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