上 下
12 / 67

4

しおりを挟む


 それから1か月後、瑞樹は大学を中退した。
 柔道部は辞めたが、あの時の4年生たちが、彼につきまとうようになったからだ。
 もう一回、ヤらせろ、というわけだ。
 それだけは死んでも嫌だった、瑞樹だ。
 残された道は、逃げること。
 彼らの手が届かないよう、大学を離れるしかなかった。

 もちろん、勝手に退学した瑞樹に、両親は怒りをあらわにした。
 大声で怒鳴り、説教し、別の大学に入学し直せと、命じてきた。
 苦しみも悲しみも、ただ受け止めて耐える瑞樹は、兄の言葉を思い出した。

『我慢できなくなったら、遠慮なく連絡しろよ。すぐに迎えに来るから』

「声を、聴くだけ。兄さんの、優しい声を聴くだけ、だから……」
 そんな思いで電話をした瑞樹だったが、兄は全てを察していた。
 両親から、彼が大学を辞めた、という愚痴は聞かされていたのだ。
 約束通り、兄はすぐに瑞樹を迎えに来てくれた。
 両親との間を取り持ち、瑞樹をこの暗い家から救い出した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

幼馴染から離れたい。

June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。 だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。 βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。 誤字脱字あるかも。 最後らへんグダグダ。下手だ。 ちんぷんかんぷんかも。 パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・ すいません。

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

花開かぬオメガの花嫁

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
帝国には献上されたΩが住むΩ宮という建物がある。その中の蕾宮には、発情を迎えていない若いΩや皇帝のお渡りを受けていないΩが住んでいた。異国から来た金髪緑眼のΩ・キーシュも蕾宮に住む一人だ。三十になり皇帝のお渡りも望めないなか、あるαに下賜されることが決まる。しかしキーシュには密かに思う相手がいて……。※他サイトにも掲載 [高級官吏の息子α × 異国から来た金髪緑眼Ω / BL / R18]

二つの顔を持つ二人 ~イケメン俳優×カフェの少年~ 彼の前でなら本当の自分を見せられる

大波小波
BL
 五条 颯真(ごじょう そうま)は、人気絶頂のイケメン俳優だ。  アクターとしてだけでなく、ミュージシャンやデザイナー、タレントなど、多岐に渡って活躍している。  海外からのオファーも多く、この国を代表する芸能人の一人だった。  しかし、颯真は旅番組のロケ中に、彼を全く知らない男子高校生・玉置 郁実(たまき いくみ)に出会う。  プライドを傷つけられた颯真だが、爽やかで愛らしい郁実の気を引こうと、悪戦苦闘を始める。  自分を印象付けて、郁実に認識してもらいたい、と始めた颯真の工夫や作戦の数々。  そんなプッシュに始めは戸惑っていた郁実だったが、次第に彼に好感を持つようになる。  颯真もまた、郁実の隣では心からリラックスできる自分を、発見していた。  惹かれ合い、触れ合うようになった二人。  しかし郁実には、次々と不幸が襲い掛かる。  颯真は、彼を支えることができるのだろうか……。

主よ、人の望みの喜びよ 【御曹司アルファが恋した相手は、底辺オメガのピアニストでした】

大波小波
BL
 神 雅臣(じん まさおみ)は、資産家の御曹司だ。  そんなアルファの雅臣は、社会勉強のために編入した公立高校で、家計のために体を売るオメガの少年・小室 空(こむろ そら)に出会う。  ただ、空が他のオメガと違う点は、天性のピアニストだという事だった。  二人はすぐに惹かれ合ったが、ある日突然、空から別れの言葉が紡がれた。  父親の借金返済のために、空自身が商品となって売買される、と言うのだ。  必ず君を救って見せる。  雅臣は決意し、父親に空への投資を持ち掛ける……。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

処理中です...