上 下
98 / 163

2

しおりを挟む

「うん? 何だか甘っちょろい声が聞こえたが?」

『大丈夫です、詩央さん。真さんは、きっと皆さんを守ってくれます』

 遠田の耳は、杏の言葉をさとく拾っていた。
 声のした方に目をやると、そこには先日食った詩央が。
 そして、見慣れぬ少年が立っていた。
「何だなんだ。可愛いお子ちゃまが、いるじゃねえか」
 店のスタッフだろうか。
 それにしては、スレていない雰囲気を身にまとっている。
「解った! おい、北條。こいつがお前の情夫か。家政夫くんかぁ?」
 真は、ぞっとした。
 まさか、勝負に出る前に、遠田に杏を知られるなんて!
「オメガか、お前。たっぷり可愛がってやるからな」
 いやらしい笑いの遠田は、涎を垂らす勢いで杏を舐め回すように眺めている。
 これは、絶対に負けられない。
 真は、ずいと一歩、前へ出た。
「遠田さん、それはお断りしますよ」
「何だとぉ!?
 途端に遠田は、ひどく不機嫌になった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王の運命は後宮で王妃候補の護衛をしていました。

カヅキハルカ
BL
騎士候補生内での事件により、苦労して切り開いてきた初のΩの騎士という道を閉ざされてしまったエヴァン。 王妃候補が後宮に上がるのをきっかけに、後宮の護衛を任じられる事になった。 三人の王妃候補達は皆同じΩという事もあるのかエヴァンと気軽に接してくれ、護衛であるはずなのに何故か定例お茶会に毎回招待されてしまう日々が続いていた。 ある日、王が長い間運命を探しているという話が出て────。 王(α)×後宮護衛官(Ω) ファンタジー世界のオメガバース。 最後までお付き合い下さると嬉しいです。 お気に入り・感想等頂けましたら、今後の励みになります。 よろしくお願い致します。

オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない

潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。 いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。 そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。 一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。 たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。 アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー

【R18】番解消された傷物Ωの愛し方【完結】

海林檎
BL
 強姦により無理やりうなじを噛まれ番にされたにもかかわらず勝手に解消されたΩは地獄の苦しみを一生味わうようになる。  誰かと番になる事はできず、フェロモンを出す事も叶わず、発情期も一人で過ごさなければならない。  唯一、番になれるのは運命の番となるαのみだが、見つけられる確率なんてゼロに近い。  それでもその夢物語を信じる者は多いだろう。 そうでなければ 「死んだ方がマシだ····」  そんな事を考えながら歩いていたら突然ある男に話しかけられ···· 「これを運命って思ってもいいんじゃない?」 そんな都合のいい事があっていいのだろうかと、少年は男の言葉を素直に受け入れられないでいた。 ※すみません長さ的に短編ではなく中編です

たとえ月しか見えなくても

ゆん
BL
留丸と透が付き合い始めて1年が経った。ひとつひとつ季節を重ねていくうちに、透と番になる日を夢見るようになった留丸だったが、透はまるでその気がないようで── 『笑顔の向こう側』のシーズン2。海で結ばれたふたりの恋の行方は? ※こちらは『黒十字』に出て来るサブカプのストーリー『笑顔の向こう側』の続きになります。 初めての方は『黒十字』と『笑顔の向こう側』を読んでからこちらを読まれることをおすすめします……が、『笑顔の向こう側』から読んでもなんとか分かる、はず。

ベータの兄と運命を信じたくないアルファの弟

須宮りんこ
BL
 男女の他にアルファ、ベータ、オメガの性別が存在する日本で生きる平沢優鶴(ひらさわゆづる)は、二十五歳のベータで平凡な会社員。両親と妹を事故で亡くしてから、血の繋がらない四つ下の弟でアルファの平沢煌(ひらさわこう)と二人きりで暮らしている。  家族が亡くなってから引きこもり状態だった煌が、通信大学のスクーリングで久しぶりに外へと出たある雨の日。理性を失くした煌が発情したオメガ男性を襲いかけているところに、優鶴は遭遇する。必死に煌を止めるものの、オメガのフェロモンにあてられた煌によって優鶴は無理やり抱かれそうになる――。 ※この作品はエブリスタとムーンライトノベルズにも掲載しています。 ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。普段から作中に登場する事柄に関しまして、現実に起きた事件や事故を連想されやすい方はご注意ください。

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

愛孫と婚約破棄して性奴隷にするだと?!

克全
BL
婚約者だった王女に愛孫がオメガ性奴隷とされると言われた公爵が、王国をぶっ壊して愛孫を救う物語

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

処理中です...