ロマンス ～草食アルファと肉食オメガの間に、夢より素敵なリアルが始まりました！～

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　夜も、章は志乃の足を冷やし続けた。
　冷却時間は20～30分程度。
　１～２時間の間隔をあけて行う。
　彼は、医師の教えをしっかりと守った。
　志乃が深夜に目を覚ますと、必ず章が傍にいる。
　医師の教えだけでなく、志乃の身も、しっかりと守っているのだ。
　そんな章に、志乃は明け方にそっと話しかけた。
「章さん。僕、ね」
「眠れないの？」
　ううん、と首を横に振り、もう一度口を開いた。
「僕、小さな家に生まれて、育ったんだ」
　志乃は静かに、自分の身の上を告白し始めた。
　外に恋人を作って、いなくなってしまった父に代わり、母は一人で必死に働いた。
　志乃や、幼い弟妹は、祖母が面倒を見ていた。
「でも。おばあちゃんが、早くから認知症になってしまって」
　祖母は、瞬く間に要介護3のレベルまで進行した。
　介護保険を申請し、給付金で訪問介護のサービスや福祉用具のレンタルをした。
　それでも、自己負担額は3万円近くかかる。
　その思わぬ支出は、家計を圧迫した。
「僕も、できるだけの介護をして。弟や妹の世話も、見て」
　すると、祖母は涙を流しながら、謝るのだ。
「おばあちゃん、いつも言うんだ。ごめんね、ごめんね、って」
　幼い志乃は、そんな祖母に、笑顔を向けた。
　元気よく、明るく振舞い、心配を掛けまいと頑張った。
　志乃の思わぬ告白に、章は聞き入っていた。