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しおりを挟む長かった梅雨も、まもなく明けようという頃、玄馬は一つの決意をしていた。
「松崎、あのカフェをどう思う?」
「なかなか陥落しませんね。やはり、トラックで突っ込みますか」
「それは、できない」
「若。まさか、あの少年ですか?」
玄馬は、瞼を閉じた。
浮かんでくるのは、あの笑顔。
(幸樹。こんなにも君が、私の心に食い込んでくるとは思わなかった)
彼の思いを読んだかのように、松崎は釘を刺してくる。
「あなたは九丈組を背負って立つ御人です。それをお忘れなく」
「解っている」
だが、理性が感情に追いつかないのだ。
(カフェのマスターが、幸樹と私の仲を認めてくれるには)
気付くと、そればかりを考えている。
幸樹との逢瀬は続いているが、彼はいつもマスターのことを気に病んでいる。
『僕、遠山さんに隠れて玄馬さんとお付き合いしていることが、苦になるんです』
先だっても、そう言って悲しそうな表情だった。
明日、久々に朝からカフェへ行こう。
(その時、片を付けよう)
そんな決意を、固めていた。
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