上 下
78 / 89

5

しおりを挟む

「貴士さん。僕、お兄様とお会いできることになりました!」
「良かったな、悠希」
 そこで、と貴士は悠希の手を取った。
「では、その場に私も同席して構わないだろうか」
「貴士さんも?」
 悠希は、危惧した。
 貴士を病的にまで恐れている、兄だ。
(本人を急に目の前にしたら、倒れちゃうかも……)
 不安げな悠希に、貴士は微笑んだ。
「大丈夫。意地悪を言ったりするためじゃない。ただ、私には君という愛する人がいることを、納得してもらうためだ」
 貴士の笑みは、優しかった。
「もう『氷の貴公子』はこの世にいないと、知ってもらうためだよ」
「ありがとうございます、貴士さん」
 確かに、氷のような心の人間は、こんな風に温かく笑えやしない。
 悠希は安心して、明後日を待つことにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

恋した貴方はαなロミオ

須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。 Ω性に引け目を感じている凛太。 凛太を運命の番だと信じているα性の結城。 すれ違う二人を引き寄せたヒート。 ほんわか現代BLオメガバース♡ ※二人それぞれの視点が交互に展開します ※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m ※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

その咬傷は、掻き消えて。

北月ゆり
BL
α以上にハイスペックなβ・千谷蒼は、高校時代からΩ・佐渡朝日に思いを寄せていた。蒼はαでない自分と結ばれることはないと想いを隠していたが、ある日酷い顔をした朝日が彼に告げる。 「噛まれ……ちゃった」 「……番にされた、ってこと?」 《運命になれなくとも支えたい一途な薬学部生β ×クズ男(α)に番にされた挙句捨てられた不憫Ω、のオメガバース》 ※BSSからのハッピーエンドですがタグ注意 ※ ストーリー上、攻めも受けも別の人とも関係を持ちます

ねえ、お姫様〜初恋の子を見つけたけど彼は別人が好きなようなので影からそっと見守りたい〜

天宮叶
BL
幼い頃、叔母の結婚式で立ち寄った公爵家の花が咲き誇る中庭で俺は天使に出会った。 君の名前も、君の住んでいる場所も、何も知らないけれどきっと見つけてみせるよ……俺のお姫様。 ※作品中別CPになることがあります。苦手な方はご自衛ください ※身代わりの花は甘やかに溶かされるのスピンオフ作品です ※身代わりの花のキャラの子供のお話です

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

出世したいので愛は要りません

ふじの
BL
オメガのガブリエルはオメガらしい人生を歩む事が不満だった。出世を目論みオメガ初の官僚としてバリバリと働いていたは良いものの、些細な事で体調を崩す様になってしまう。それがきっかけで五年程前に利害の一致から愛の無い結婚をしたアルファである夫、フェリックスとの関係性が徐々に変わっていくのだった。

処理中です...