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 父の話から得た情報は、少なかった。
 なにせ彼は悠希に対して、趣味は何か、だの、どんな音楽を聴くのか、だの。
 そんな、どうでもいいことばかりを訊くのだから。

『第二性はオメガです』

 これだけ確認できれば、充分だった。
 世継ぎが産めなくては困るので、まず間違いないだろうとは思っていたが。
「貴士は、アルファだよ。アルファとオメガで、運命のつがい、と言うわけか!」
 自分が巧いことを言ったと勘違いして笑う父が、疎ましい。
 運命のつがい。
 そんな話は、言い伝えだ。
 過去の、都市伝説だ。

 貴士はワインを飲みながら、ただ悠希を観察していた。
 その身なり。
 食事の作法。
 会話の仕方。
(残念ながら、及第点だ)
 さすがは九曜家のお坊ちゃん。
 しつけは、良くされている。
(後は、屋敷に行ってから、だな)
 共に暮らすとなると、その化けの皮も剥がれるだろう。
(私に恐れをなして、逃げ出してもいいんだよ)
 どうせまた、この縁談も流れる。
 そう予想しながら、貴士はただワインを飲んでいた。


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