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 ああ、ここでいっそのこと。
(私は遥が一番好きだ、と言えればどんなに楽か!)
 了はさすがにもう、自分の気持ちに気づいていた。
 私は、この小さなオメガの子を愛してしまったんだ。
 気持ちは、抑えられそうもない。
(だが、ここで私が遥に好意を押し付けても、彼には迷惑なだけだろう)

「航大くん、手術がうまくいくと良いな」
「はい。僕、お百度踏みました」
 お守りも買った、と遥の目は真剣だ。
「あまり、根を詰めるなよ。手術は6時間もかかるからな」
「はい……」
「心配するな。航大くんは、アルファだろう。その生命力を信じてくれ」
 同じアルファの私が言うのだから、大丈夫。
 そう遥を励ましながら、了は考えていた。
(敵に塩を送る気持ちだ)
 遥を、自分のものにしたい。
 しかし、その遥を幸せにできるのは、航大なんだ。
 私では、ない。

「よかったら、実家まで車で送ろう」
「え、でも」
「遠慮するな。お金は、大切だろう?」
 ありがとうございます、と頭を下げる遥に、了はうなずいた。
 それは、自分に向けたものでもあった。
 私は、彼をサポートする役に徹しよう。
 そう心に決め、今まで通りに遥を愛することに決めた。
 たとえ、実らない恋だとしても。

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