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しおりを挟むビルの地下へ続く階段を下りながら、松下は了に新しい商品候補の履歴を説明した。
「氏名は、南海 遥(みなみ はるか)。第二性はオメガで、年齢は自称20歳です。身長161㎝、体重50kg、健康状態は良好です」
「少し痩せてはいないか?」
「病的ではありません」
地下1階のドアを開け、フロアの一番奥へ進む。
了は、基本4階までなら、階段を使う男だった。
ジムだけでなく、生活の中にも体を鍛える場を設ける。
そんな彼の肉体は引き締まり、ほどよい筋肉が付いていた。
やがて奥の事務所前へと到着し、松下は素早くそのドアを開け、了を通した。
中のスタッフたちが一斉に立ち上がり、挨拶をする。
今夜、了がここへ来ることは皆が周知していた。
絶対に、失礼があってはならない人だ。
緊張感が、室内に張り詰めていた。
「そのまま仕事を続けてくれ」
「はい!」
了の言葉に、スタッフは一斉に仕切られたデスクの中で、モニターに集中した。
このモニター内に、商品とお客様とのやりとり一部始終が、リアルタイムで流されているのだ。
必要とあれば、ここから各部屋にアナウンスがなされる。
「103号室のお客様、お帰りです。生ビール2杯、スモークチーズ、生ハムで、お会計76万円です」
「お客様、それ以上の商品へのご行為は規約違反となります。お気を付けください」
「お客様の年会費は、今月末に口座から引き落とされます。お忘れなきよう、お願い申し上げます」
地上は表向きの健全なクラブだが、その地下へ潜ると、そこは高級闇クラブへと変貌していた。
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