二つの顔を持つ二人 ～イケメン俳優×カフェの少年～ 彼の前でなら本当の自分を見せられる

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　今日は貸し切りで、店長の婚約パーティーをしましょう！

　そんな佐藤の提案で、カフェは午後の17時には通常営業を終えることになった。
　その後に準備をし、エンゲージリングを選んで帰って来た颯真と郁実、二人のお祝いだ。
「だが、それまでは、通常業務だ。浮足立って、お客様に失礼の無いようにな」
「はいはい。久野さんは、真面目だなぁ」
「特に、佐藤くん。しっかり頼むぞ」
「名指しで注意！？」
　カフェは笑いに包まれ、佐藤が頭を掻いたところで、ドアベルが鳴った。
　お客様が、入って来たのだ。
「いらっしゃいませ！」
「おはよう。寒くなってきたね」
「もう、冬ですからね。いかがですか、体調の方は」
　常連客を席に案内する佐藤も、ずいぶん頼もしくなったものだ。

　動き出した、カフェの空気。
　郁実は、その雰囲気を深く味わった。
　ああ、とっても懐かしい。
　だけど、何だか新鮮。
　それはきっと、颯真さんのせい。
　彼が、魔法をかけたから。

（あれっ？　何か、思い出せそうな気が……）
　難しい顔の郁実に、颯真が声を掛けた。
「指輪を見に行く前に、コーヒーを一杯いただこうかな」
　郁実、君が淹れてくれる？
　そんな嬉しいリクエストに、郁実は元気に返事をした。
「はい！」