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その日の19時、本当に颯真がカフェへやってきた。
「五条さん。この度は本当に、ありがとうございます」
「お父さん、堅苦しい話は抜きにして。点灯式、しましょう!」
カフェには小さいながらも前庭があり、そこにはちゃんとシンボルツリーが植えられている。
「郁実が生まれた時に植えた、オリーブなんですよ」
「素敵ですね」
その、まだ背の低いオリーブにはLEDが取り付けられ、点灯を待っている。
「じゃあ、郁実くん。カウントダウンを、どうぞ!」
「え!? ぼ、僕ですか!?」
突然の颯真からの御指名に、郁実は焦った。
「ここは、父さんのお店だから。やっぱり、父さんが……」
「いや、飾ってくれたのは五条さんだ。どうぞ、カウントダウンを!」
そんな風に、互いが譲り合って話が進まない。
最後には、三人で一緒に、ということに落ち着いた。
「3、2、1、0!」
颯真がスイッチを入れ、オリーブの木は温かな金色の光に包まれた。
「おぉ……!」
「うわぁ……!」
「上出来だ!」
曲線を描いた、植込みのレンガ。
入り口ドアまでの、小さな階段。
そこここに、程よい明かりが灯っている。
道行く人が、思わず足を止めて眺めるほどに美しい。
では、記念写真を撮ろう。
そんな颯真は郁実の肩を抱き寄せ、彼の父と自分との間に挟んだ。
「はい、笑って」
自撮りした颯真の端末で見る写真は、きれいに撮れていた。
「これ、郁実くんのスマホに転送するよ」
「はい、お願いします」
颯真はさっそく、郁実へ画像を送った。
「五条さん。この度は本当に、ありがとうございます」
「お父さん、堅苦しい話は抜きにして。点灯式、しましょう!」
カフェには小さいながらも前庭があり、そこにはちゃんとシンボルツリーが植えられている。
「郁実が生まれた時に植えた、オリーブなんですよ」
「素敵ですね」
その、まだ背の低いオリーブにはLEDが取り付けられ、点灯を待っている。
「じゃあ、郁実くん。カウントダウンを、どうぞ!」
「え!? ぼ、僕ですか!?」
突然の颯真からの御指名に、郁実は焦った。
「ここは、父さんのお店だから。やっぱり、父さんが……」
「いや、飾ってくれたのは五条さんだ。どうぞ、カウントダウンを!」
そんな風に、互いが譲り合って話が進まない。
最後には、三人で一緒に、ということに落ち着いた。
「3、2、1、0!」
颯真がスイッチを入れ、オリーブの木は温かな金色の光に包まれた。
「おぉ……!」
「うわぁ……!」
「上出来だ!」
曲線を描いた、植込みのレンガ。
入り口ドアまでの、小さな階段。
そこここに、程よい明かりが灯っている。
道行く人が、思わず足を止めて眺めるほどに美しい。
では、記念写真を撮ろう。
そんな颯真は郁実の肩を抱き寄せ、彼の父と自分との間に挟んだ。
「はい、笑って」
自撮りした颯真の端末で見る写真は、きれいに撮れていた。
「これ、郁実くんのスマホに転送するよ」
「はい、お願いします」
颯真はさっそく、郁実へ画像を送った。
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