二つの顔を持つ二人 ～イケメン俳優×カフェの少年～ 彼の前でなら本当の自分を見せられる

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　父親は郁実のスマホを受け取り、何もない所にしきりに頭を下げている。

「本当に、何から何まですみません。ありがとうございます」
『電気料金も、私が負担しますので。イルミやツリーの灯りは、どんどん点けちゃってください』
「いえいえ、そこまでしていただくわけには！」

　大人の会話を聞きながら、郁実はツリーの飾りに触れていた。
　美しい、磁器でできた繊細なオーナメントだ。
「壊したら、大変だな」
　でも、五条さんなら、笑って許してくれるんだろうな。
　郁実は、彼の性格の一端を、ちゃんと捉え始めていた。

　会話を終えた父から携帯を受け取り、郁実は颯真と再び話した。

「ツリーのオーナメント、とっても綺麗です」
『ありがとう。コーディネートしたかいがあったよ』
「これ、五条さんが考えたデザインなんですか！？」
『君とお父さんのカフェを、素敵に飾ってみたくなってね』

　クリスマスには、きっと遊びに行くから。
　そう約束し、颯真は通話を切った。
「五条さん、何て？」
「クリスマスに、うちに遊びに来るって！」
　親子は二人で喜び、当日のディナーメニューなどを言い合いながら朝食を摂った。
　颯真の出現によって、カフェはが明るく賑やかになり始めていた。