二つの顔を持つ二人 ～イケメン俳優×カフェの少年～ 彼の前でなら本当の自分を見せられる

1話 魔法をかけられたカフェ！

　颯真が、郁実宅近辺のマンションに居を構えてから、わずか2日後。
　その早朝に、彼の言っていた『魔法』がカフェへやって来た。
「おはようございます。オカモト工芸です！」
「お、おはようございます。よろしくお願いします」
　郁実の父は、どぎまぎと魔法使いの使者たちと、あいさつを交わしていた。
「オープンまでには、終わらせますんで！」
「どうも、ありがとうございます」

　急な騒ぎに、二階から降りてきた郁実は、目をぱちくりさせた。
「父さん、内装工事でも頼んだの？」
「いや、こないだ五条さんがおっしゃってた『魔法』だ」
「魔法？」

　スタッフたちは忙しく、配線を引いたり、大きなクリスマスツリーを運んだりしている。
　彼らを見ながら、父親もテンションが上がってきたようだ。
　明るく弾んだ声で、郁実に言った。
「この喫茶店を、クリスマスモードに変えてくれるらしいんだよ」
「ホント！？」
　てきぱきとスタッフは動き、あっという間に店内は飾られた。
　白とシルバーを基調に、緑と赤の差し色が映える。
　それはシックな、大人の雰囲気を持つクリスマスのデコレーションだった。