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1話 俺は、まだまだ。
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「こんにちは」
サングラスをかけた背の高い男に、そう呼び止められて、郁実は立ち止まった。
「もしかして……五条さん? ですか?」
当たり、と颯真はサングラスを外した。
「どうして君は、素顔の俺が解らずに、変装した姿なら判るのかな?」
「そのマフラーで。もしかしたら、って」
そう。
颯真は、郁実と交換したマフラーを巻いていた。
ラスタカラーの、ポップなマフラーを。
「君の方こそ、俺のマフラー使ってくれてるんだね」
「嬉しくって。それで」
頬を染める姿が、初々しい。
二人は並んで、郁実の父が経営するカフェに向かった。
颯真の再びの訪問に、郁実の父は喜んだ。
「まさか本当に、また来てくださるなんて。あれから、五条さんの番組は全部見てますよ!」
こいつも、あなたのことをようやく覚えました、と息子の頭をぐりぐりする、マスターだ。
「でも、バラエティだけ、でしょ?」
その言葉に、郁実が照れ笑いする。
颯真は、衣装の自由が利く番組では、必ずこのマフラーを付けて出た。
顔が解らなくても、このマフラーで郁実くんは判るはず。
そう考えての、作戦だった。
「マスター。今日は、ご挨拶に来ました」
「挨拶、ですか?」
「はい。駅の近くに、マンション買いましたので」
ええっ、と郁実は驚いた。
「五条さん、この近所に住むんですか!?」
「さすがにまだ、それは無理なんだけど」
颯真は、いたずらっぽく笑って見せた。
サングラスをかけた背の高い男に、そう呼び止められて、郁実は立ち止まった。
「もしかして……五条さん? ですか?」
当たり、と颯真はサングラスを外した。
「どうして君は、素顔の俺が解らずに、変装した姿なら判るのかな?」
「そのマフラーで。もしかしたら、って」
そう。
颯真は、郁実と交換したマフラーを巻いていた。
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「君の方こそ、俺のマフラー使ってくれてるんだね」
「嬉しくって。それで」
頬を染める姿が、初々しい。
二人は並んで、郁実の父が経営するカフェに向かった。
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こいつも、あなたのことをようやく覚えました、と息子の頭をぐりぐりする、マスターだ。
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「マスター。今日は、ご挨拶に来ました」
「挨拶、ですか?」
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