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しおりを挟むではここで、その後の玉置 郁実(たまき いくみ)くんからのメッセージをどうぞ。
MCがそう振ると、モニターにはあの時の少年が映し出された。
首には、颯真と交換したグレーのマフラーが巻いてある。
『こんにちは、五条さん。先日は失礼しました』
『五条 颯真さんを、覚えましたか?』
『はい。ネットで調べて、頭に叩き込みました』
『また五条さんがこの町を訪ねてきたら、その時は解る自信ある?』
『えっと……多分』
スタジオは、再び爆笑で沸いた。
颯真は、頭を抱えた。
『また、美味しいコーヒーを飲みに来てください。待ってます』
郁実からのそんなメッセージで、番組はほのぼのと締めくくられたが、颯真の心は乱れていた。
その後の進行など、覚えてもいなかった。
「玉置 郁実、か」
移動中の車の中で、颯真はニヤニヤ笑っていた。
本当に、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ。
だが、一方で嬉しさも感じていた。
この世界で、俺のことを全く知らない人間がいる。
それが、郁実少年だ。
「じゃあ、君に本当の俺を教えてあげよう」
仮面を着けた、営業用の俳優・五条 颯真ではなく、個人の五条 颯真を。
「ちょっと、買っといて欲しいものがあるんだけど」
颯真は隣に座るマネージャーに、そう持ち掛けていた。
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