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しおりを挟む「来ると思ったよ」
響が玄関に入ると、ようやく奥から廊下へ出てきた、豊だ。
ジャンピング・勇気で訪ねて来た響を、彼は快く迎えてくれた。
「上がって。はい、スリッパ」
「ありがとう」
会話が生まれると、響はようやく人心地着いた。
「それにしても、大きな家だね。うらやましいなぁ」
「大きいだけさ」
不愛想な返事の豊に連れて行ってもらった先は、明るく広いフロアだった。
天窓が設けられ、自然光たっぷりの、天井が高い部屋。
「ここが、アトリエだよ」
「本格的! さすが、芸術家だね!」
「父も画家だったんだ。俺が小さい頃亡くなったけど」
「そうなんだ……」
「母はいつも遅いから。気兼ねなくゆっくりしてくれ」
「うん。ありがとう」
何と、おやつのケーキや紅茶まで用意してある。
くつろぎながら、響は豊と共に、お喋りを楽しんだ。
ほとんどが、響の推しである『ケロタン』の話題だったが。
それでも豊は、嫌な顔をしなかった。
子どもっぽいと、バカにすることもなかった。
響が、豊への信頼を、どんどん深めていったその先にあったものは。
「さて、と。そろそろ始めようか。じゃ、服を脱いで」
そんな豊の言葉だった。
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