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(あ、芳樹さんが行っちゃう)
 ずるり、と芳樹が体内から去って行った。
 体を縛るものが全て無くなり、青葉はころんと仰向けに転がった。
「熱い……」
 身体が熱い。
 心も熱い。
 芳樹も、その身も心も火照らせていた。
 青葉の隣に横になると、小さな声で、ごめん、と言った。
「ちょっと、意地悪しちゃったかな」
「いいえ。あの、すごく感じました……」
 思いきり抱かれた後の青葉は、余計なことを考える余裕を失っていた。
 はぁはぁと息を整え、芳樹と体の拭き合いをした。
 身じまいを整え、彼の腕枕に寝る頃になると、ただ落ち着いて現実を見た。
「明日、さっき言った封書をお見せします」
「青葉のお父様に、お会いしてみたかったな」
「写真があります。それも、明日に」
「そうだね。今夜は、もう休もう」
 青葉はすぐに眠りに就いたが、芳樹はやはりなかなか寝付けなかった。
「お見合いの件、すんなりお断りできればいいが」
 青葉に瓜二つの少年・怜。
 いつまでも、彼の姿が頭から消えてくれなかった。


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