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「私の子を、産んでくれるのか?」
「産んでも……いいですか?」
 もちろんだ、と哲哉は微笑もうとした。
 だが、視界がにじんでくる。
 涙が、湧いてくる。
(この私が、父親に)
 それは、暗がりの人生をさまよっていた頃には、思いもしなかった希望だった。
 玲衣によって差し込んできた光は、まぶしい輝きとなって哲哉を照らした。

「哲哉さま?」
「すまない。あまりに、嬉しくてね」
 すう、と大きく息を吸って、哲哉は明るく振舞った。
「育てよう、子どもを。君と私とで、幸せを育もう」
「ありがとうございます、哲哉さま!」

 ただ、と哲哉は玲衣の頬に優しく手のひらで触れた。
「それには一つ、条件がある」
「何でしょう」
「私のことは今後、『哲哉さま』ではなく、『哲哉さん』と呼んで欲しい」
「え!?」
 そう。
 私と玲衣は、対等なパートナーになるのだ。
 哲哉さま、だなんて他人行儀な物言いは、不自由だ。

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