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しおりを挟む池崎の運転する車中で、哲哉は心から玲衣に詫びていた。
「私がもっと、しっかりしていれば。怖い思いをさせて、すまなかった」
「いいえ。哲哉さまは、僕を助けに来てくれたじゃないですか」
その言葉に、哲哉はうなだれた。
「実は。一瞬でも、君を疑った自分が恥ずかしい」
「え?」
「玲衣が、私の元から逃げてしまったのではないか、と考えたんだ」
玲衣は微笑んで、哲哉の大きな手に、自分の手のひらを重ねた。
「僕は、哲哉さまから逃げたりしませんよ」
「ありがとう、玲衣」
うなずく玲衣に、今度は池崎が声を掛けた。
「謝らなくてはならないのは、僕だよ。玲衣くん」
「池崎さんが?」
「君が逃げるんじゃないか、と疑ったのは僕も同じさ。服に、GPS端末を付けておいたんだ」
「それで、僕のいる場所が解ったんですね」
だが、だからこそ玲衣をすぐに救いに行けた。
結果オーライです、と言う玲衣は、心底素直な少年だった。
二人の男は、この時心から安堵した。
玲衣は、逃げ出したりするような子ではない。
かと言って、嫌々ながら屋敷にとどまる子でもない。
(おそらく、立ち去る時は堂々と私に言うのだろう)
そう、哲哉は噛みしめていた。
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