上 下
24 / 86

4

しおりを挟む

「池崎さん。哲哉さまに、このこと伝えた方がいいですか?」
「それは、伝えた方がいいよ。言いにくいなら、僕から話すけど?」
「いえ。それは、僕が自分で話します」
 玲衣は、心を決めていた。
 発情したら、哲哉に抱いてもらおう、と。
 彼の冷たい仮面の下に覗く、優しさ。
 それに触れた時から、そうしようと決めていたのだ。
 だがしかし。

(どうしよう。やっぱり、恥ずかしいよ!)
 二人でティータイムを楽しみながらも、なかなか言い出せない玲衣だ。
「今日のコーヒーは、ブルーマウンテンか」
「はい。爽やかな酸味を、お楽しみください」
「菓子は?」
「北海道産の、クリームチーズケーキでございます」
 気が付けば、哲哉は池崎とばかり話している。
 そんな玲衣に、助け船が出された。

「今日は、玲衣くんから哲哉さまに報告があるそうです」
「ほう?」
 これでは、言い出さずにはいられない。
 玲衣はどぎまぎしながらも、池崎に心の中で礼を言い、哲哉に告げた。
「僕、発情期が来ました……」
「……」
 ぽかん、と何も言わない哲哉だ。
 あまりに突然のことで、思考が飛んでいた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

はじめてを君と

マイユニ
BL
とある理由で度々襲われるようになった見目麗しい海堂理仁。しかし、彼はそれをいつも撃退してきた。 いつものように襲われそうになって撃退したところをある男に見られて笑われる。 その男とは度々会うようになった。 ある日、男から付き合ってほしいと言われる。断ると本当に付き合うのではなくフリをしてほしいと言う。尚も断ると試験で勝負をしようと持ちかけられる。学年1位をキープし続けている男は負けることはないと高を括り勝負を受けて立つことに。 惜しくも勝負に破れた理仁は彼、須藤拓海と付き合うフリをする事に……。 オメガバース設定。薬の開発が進んでいて発情を抑制できている世界です。 *マークは背後注意シーンあります

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

処理中です...