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 ダンジョン攻略について、打ち合わせをした後。
 予定をすり合わせて、準備も万全にして挑もうとなった。
 SSSランクの冒険者になってわかったことだが、このランクはこのランクで中々に自由が利かないのだ。
 SSSランクの冒険者、その人数が少ないため、あっちに行け、こっちに行けと冒険者ギルドから命令されるのだ。
 低級ランクの時のように適当に依頼を見繕って受ける、という自由が極端に少なくなってしまった。
 
 とりあえず打ち合わせを終わらせると、冒険に必要なものを買いに行き、その日は解散となった。
 下宿に戻ると、ウカノ兄ちゃんも帰って来ていて、なぜか食堂で実家から持参したらしき自家製の酒をあおっていた。

 「都会、怖い」

 グズグズと鼻をすすり、管を巻いている。
 どうやら都会の洗礼を受けたようだ。
 
 「俺たちが何したってんだよー!!
 毎年毎年、汗水垂らして雑草刈って種まいて、野菜作って、それ狙ってくる狸とか狐とか狼とかドラゴンとか災害級のモンスターとかから野菜とか米守ってんのに。
 だれのおかげで市場に野菜が出とると思ってんだ!
 食卓の守護者だぞこちとら!!

 あと商人さんと配送さんいつもありがとうございます!!」
 
 そんなウカノ兄ちゃんの愚痴を聞きつつ、テトさんが美味しそうに我が家のというか、ウカノ兄ちゃんお手製の酒をちびちびやっている。
 ……あれ、かなり強いし別の意味であんまり飲まないほうがいいんだけど。
 まぁ、バレなきゃ大丈夫か。
 いや、そういや兄ちゃん資格持ちだったから大丈夫か。

 「荒れてるなぁ」

 俺が呟くと、ウカノ兄ちゃんがこちらに気づく。

 「シーン! 傷心のお兄ちゃんを癒してくれ~!!」

 「はいはい。
 でも、今年誕生日来たら兄ちゃんも三十路なんだから、自分で自分の機嫌をとってほしいなぁ」

 俺はよしよし、とテーブルに突っ伏してグダグダ管を巻き続ける、もうすぐ中年に突入する長男の頭を撫でた。
 と、食堂にいた他の人たちがシン、と静まった。
 その場にいた人たちを代表するように、テトさんが訊いてきた。

 「え、お兄さん、もうすぐ三十路なの?」

 マジかよ、と下宿の人たちがざわざわする。
 どうやら童顔だからかだいぶ若く見られていたようだ。

 「バラすなよ~!!」
 
 あと離婚歴もある。
 それも、三回離婚している。
 まぁ、これは言わなくてもいいことか。
 別れた理由は、嫁さん側の問題だったり、ウカノ兄ちゃんの問題だったり、糞親父のモラハラパワハラだったり色々だ。
 婚約破棄も経験しているので、人生経験だけは豊富なんだよなぁ。
 
 「ウカノ兄ちゃん、十男五女の頂点に立ってるんですよ。
 十歳以上年上の兄弟なんてあるあるですよ」

 ちなみに、俺は男兄弟の中だと一番下になる。
 冒険者になった兄たちの中には行方不明者もいたりする。
 いまのところ居所が分かってるのは、目の前のウカノ兄ちゃん、別の部落にお婿に行った次男のフェイ兄ちゃんと三男のカイ兄ちゃん、あとは冒険者をやってる八男のクレイ兄ちゃんと九男のフィリップ兄ちゃんだ。
 四男五男六男七男の兄ちゃんたちは、行方不明だ。
 死んだかどうかもわからないので葬式すら出せないでいる。
 でも、あの兄たちが死ぬとは思えないのでたぶんどっかで生きていると思う。

 「セクハラ発言になるかもだけど、言っていいかな?」

 テトさんが顔を引きつらせながら、そう言ってくる。

 「なんですか?」

 「シン君のお母さん、頑張ったんだね」

 「頑張ったほうですねぇ。
 十五人産むのは、なかなか大変だったと思いますよ。
 俺の二つ下に妹がいるんですけど、その妹を最後にしたらしいですし」

 ちなみに、俺も本当は産む気が無かったそうだ。
 いろいろあって産んだとは聞いた。
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