48 / 78
48
しおりを挟む
まぁ、そうは言っても向こうも連れてこいと指示されているので、代理で俺か、ウカノ兄ちゃんに来て欲しいと言われてしまう。
「じゃ、仕方ないから行くか」
と、ウカノ兄ちゃん当人が言い出した。
お城行くのはとくに何とも思ってないんだな。
女装がバレないようにしたいだけなんだろう。
予定が狂ってしまうがいいのだろうか。
なんて考えていたら、そのウカノ兄ちゃんに頼まれた。
「時間があったら、不動産屋に行ってこの条件に合う部屋相談してきてくれ」
メモを渡される。
うぇー、めんどくせぇ。
「まぁ、行けたら行く」
とりあえず、そう返しておいた。
そうしてウカノ兄ちゃんを見送ってから、リアさんに聞かれた。
「お兄さん、ここに住まないの?」
「みたいですねぇ。
多分一人暮らしをしてみたいんだと思います。
憧れてましたから」
「えー、でも掃除に洗濯、仕事しながらの家事は大変だよ」
「大丈夫ですよ。
その辺は、ずっと家でもやってたんで」
親父やじいちゃんからは、そんなのは女の仕事なんだからやるな、恥ずかしいと散々言われていたのに、やり通した。
今ならわかる。
母や姉妹達への味方をするという意味もあったんだろうけど、きっとウカノ兄ちゃんなりの反抗だったんだと思う。
やりたいことも夢も否定されて、ずっとずっと押さえつけられていたのを見てきたし、知っている。
それでも、ヘラヘラ笑って受け入れて、八つ当たりは盗賊達へぶつけてきた。
今までなら、それで我慢出来たはずのウカノ兄ちゃんが、もう本当に我慢の限界に来ている。
弟としては、兄ちゃんが自由になるのはいい事だと思う。
あんな家にいるよりは、絶対に良いと思う。
「そっかー」
リアさんは、それだけ言って厨房に戻った。
それから、俺はエリィさんと合流して今日の仕事にあたる。
本当は、この前見つけたダンジョンの探索をしたかったけれど冒険者ギルドから直々にとある開拓村周辺に出る賞金首だらけの盗賊退治を依頼されたので、そちらを優先させることにした。
開拓村へ行って話を聞き、アジトを見つけ出して奇襲をかけて壊滅させた。
そうして昼過ぎには王都へ戻ってくることが出来た。
冒険者ギルドに行って、今日の仕事分の金をエリィさんと一緒に受け取る。
そして、さぁ、遅めの昼食だ、となったのだが。
「あ、兄ちゃん」
どこの店にしようか。
そうエリィさんと、話している時に城から帰ってきたらしいウカノ兄ちゃんとばったり遭遇した。
「お、お仕事おつかれー。
不動産屋は行ってきてくれたか?」
と、何気なく言ってくるウカノ兄ちゃんだが、とても変な格好をしていた。
いや、ウカノ兄ちゃんが貴族なら普通に仕立てのいいスーツだな、と思うだけだ。
そう、基礎様が来ているような、高価そうな服を着込んでいたのだ。
お礼としてお城で貰ったのかな?
そう思って聞けば、違った。
「んー、なんか曲者?
侵入者? そういう招かれざるお客さん的なのを、つい反射的にヤッちゃったら返り血で汚れちゃってさ」
「はい?」
「はい?」
俺とエリィさんが、同じ反応を返した。
「そしたら、それを見てたお前の友達だって言う、エル、エル?
エルドラド殿下?? とかいう子が服とお風呂かしてくれたんだ」
惜しい、エルドレッド殿下だよ、兄ちゃん。
「とりあえず、綺麗になったのはいいけど俺の服没収されちゃって。
洗濯終わったら届けるからって言われてさ。
その侵入者騒ぎでお城の中も外もバタバタしてるしで、やることも無いからしばらく着替えてぼぅっとしてたんだけど、しばらくしたらとりあえず今日は帰ってくれって言われたから帰ってきた」
えー、マジか。
「お前ら、これから昼か?
兄ちゃんも腹減ったよ。疲れたし。サッパリはしてるけどさ。
そうだ! この際だし肉でも食いに行くか?」
ひと仕事終えたウカノ兄ちゃんは、そう提案してきた。
「じゃ、仕方ないから行くか」
と、ウカノ兄ちゃん当人が言い出した。
お城行くのはとくに何とも思ってないんだな。
女装がバレないようにしたいだけなんだろう。
予定が狂ってしまうがいいのだろうか。
なんて考えていたら、そのウカノ兄ちゃんに頼まれた。
「時間があったら、不動産屋に行ってこの条件に合う部屋相談してきてくれ」
メモを渡される。
うぇー、めんどくせぇ。
「まぁ、行けたら行く」
とりあえず、そう返しておいた。
そうしてウカノ兄ちゃんを見送ってから、リアさんに聞かれた。
「お兄さん、ここに住まないの?」
「みたいですねぇ。
多分一人暮らしをしてみたいんだと思います。
憧れてましたから」
「えー、でも掃除に洗濯、仕事しながらの家事は大変だよ」
「大丈夫ですよ。
その辺は、ずっと家でもやってたんで」
親父やじいちゃんからは、そんなのは女の仕事なんだからやるな、恥ずかしいと散々言われていたのに、やり通した。
今ならわかる。
母や姉妹達への味方をするという意味もあったんだろうけど、きっとウカノ兄ちゃんなりの反抗だったんだと思う。
やりたいことも夢も否定されて、ずっとずっと押さえつけられていたのを見てきたし、知っている。
それでも、ヘラヘラ笑って受け入れて、八つ当たりは盗賊達へぶつけてきた。
今までなら、それで我慢出来たはずのウカノ兄ちゃんが、もう本当に我慢の限界に来ている。
弟としては、兄ちゃんが自由になるのはいい事だと思う。
あんな家にいるよりは、絶対に良いと思う。
「そっかー」
リアさんは、それだけ言って厨房に戻った。
それから、俺はエリィさんと合流して今日の仕事にあたる。
本当は、この前見つけたダンジョンの探索をしたかったけれど冒険者ギルドから直々にとある開拓村周辺に出る賞金首だらけの盗賊退治を依頼されたので、そちらを優先させることにした。
開拓村へ行って話を聞き、アジトを見つけ出して奇襲をかけて壊滅させた。
そうして昼過ぎには王都へ戻ってくることが出来た。
冒険者ギルドに行って、今日の仕事分の金をエリィさんと一緒に受け取る。
そして、さぁ、遅めの昼食だ、となったのだが。
「あ、兄ちゃん」
どこの店にしようか。
そうエリィさんと、話している時に城から帰ってきたらしいウカノ兄ちゃんとばったり遭遇した。
「お、お仕事おつかれー。
不動産屋は行ってきてくれたか?」
と、何気なく言ってくるウカノ兄ちゃんだが、とても変な格好をしていた。
いや、ウカノ兄ちゃんが貴族なら普通に仕立てのいいスーツだな、と思うだけだ。
そう、基礎様が来ているような、高価そうな服を着込んでいたのだ。
お礼としてお城で貰ったのかな?
そう思って聞けば、違った。
「んー、なんか曲者?
侵入者? そういう招かれざるお客さん的なのを、つい反射的にヤッちゃったら返り血で汚れちゃってさ」
「はい?」
「はい?」
俺とエリィさんが、同じ反応を返した。
「そしたら、それを見てたお前の友達だって言う、エル、エル?
エルドラド殿下?? とかいう子が服とお風呂かしてくれたんだ」
惜しい、エルドレッド殿下だよ、兄ちゃん。
「とりあえず、綺麗になったのはいいけど俺の服没収されちゃって。
洗濯終わったら届けるからって言われてさ。
その侵入者騒ぎでお城の中も外もバタバタしてるしで、やることも無いからしばらく着替えてぼぅっとしてたんだけど、しばらくしたらとりあえず今日は帰ってくれって言われたから帰ってきた」
えー、マジか。
「お前ら、これから昼か?
兄ちゃんも腹減ったよ。疲れたし。サッパリはしてるけどさ。
そうだ! この際だし肉でも食いに行くか?」
ひと仕事終えたウカノ兄ちゃんは、そう提案してきた。
5
お気に入りに追加
1,995
あなたにおすすめの小説
ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!
矢立まほろ
ファンタジー
大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。
彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。
そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。
目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。
転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。
しかし、そこには大きな罠が隠されていた。
ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。
それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。
どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。
それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。
果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。
可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
【無双】底辺農民学生の頑張り物語【してみた】
一樹
ファンタジー
貧乏農民出身、現某農業高校に通うスレ主は、休憩がてら息抜きにひょんなことから、名門校の受験をすることになった顛末をスレ立てをして語り始めた。
わりと強いはずの主人公がズタボロになります。
四肢欠損描写とか出てくるので、苦手な方はご注意を。
小説家になろうでも投稿しております。
【救世主】さぁ、世界を救おうじゃないか少年【プロジェクト】
一樹
ファンタジー
とある少年が、世界が滅んで家族とか全滅して、それをなんとかする話です。
なんとかしようってとこで終わってます。
肥やしにしとくのもアレなんで投下します。
気まぐれに、続きを書くかもしれないので完結設定にはしていません。
よろしくお願いします。
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる