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だって、確認は大切じゃん

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【数日後】

「じゃ、ビクター死んだん?」

 これが、【堕悪皇帝ブラック・エンペラー】壊滅の知らせを聞いた俺の第一声である。
 場所は、よく利用する冒険者ギルド。
 その建物内にある、一室だ。
 机を挟んで、ギルドマスターが深刻そうな顔をして座っている。
 このギルドマスターに呼び出されたのだ。

「君ね、そんなあけすけに言うもんじゃないですよ」

 そう横から窘められた。
 ラインハルトだ。
 こいつも、ギルドマスターから招集されたらしい。

「だって大事なことだろ。
 察するに、そのダンジョンに俺たちを向かわせる気だろ?
 このオッサンは」

 ギルドマスターは難しい顔をしている。
 構わず、続けた。

「そうでないと、わざわざ俺やラインハルトみたいたSSSランクの冒険者を呼び出したりしない。
 それも、クランとしてじゃなく、個人として呼び出してる」

 その為、エールはこの場にいない。
 いつもの受付カウンターにでも座って、待っているはずだ。
 ちなみに、ビクターもSSSランク冒険者だ。

「……君、ただの喧嘩バカじゃなかったのか」

「褒め言葉として受け取っておく」

 そんなやり取りを見ていたギルドマスターが、そこで、大きな息を吐き出した。

「……【堕悪皇帝ブラック・エンペラー】壊滅の件については、その通りなんだが。
 もしかしたら、ダンジョンにはまだ生存者がいるかもしれない。
 だから、件のダンジョンに二人で赴いて生存者の救出と、何が起きたのか、それを調べてきてほしい」

 ギルドマスター直々の依頼だ。
 受ける以外にないだろう。
 こう言ってはなんだが、【堕悪皇帝ブラック・エンペラー】も決して弱いクランではない。
 けれど、壊滅した。
 何かが起きたのだろうと想像するのは、簡単だった。
 そもそも、そのダンジョンの攻略難度はA。
堕悪皇帝ブラック・エンペラー】なら、難なく終えられる依頼だったはずだ。
 それが、壊滅したのだ。
 なにも起きなかったと言う方が、無理である。

 ラインハルトはすぐに承諾した。
 そして、ラインハルトは俺を見た。
 君も、もちろん受けるよね?
 そんな視線を向けられる。
 俺も、依頼を受けることを承諾した。
 その直後、ラインハルトがこんな言葉を呟いた。

「それにしても、二年前を思い出しますね」

 それはギルドマスターへ向けられていた。

「嫌なことを、思い出させるな」

 ギルドマスターは、それだけ言って黙りこくってしまった。

「…………」

 俺はその様子を観察し、声を出した。

「ちなみに、その壊滅についてはどうやって知ったんですか??
 あと、生存者の可能性についても、誰かが教えたんですよね?
 そうでないと、依頼内容に組み込まれてることに説明がつかない」

 俺の質問に、ギルドマスターは答えてくれた。
 それによると、【堕悪皇帝ブラック・エンペラー】の構成員の一人がやっとの思いでこの事を伝えにきたらしい。

「ふむ、なにもかも二年前と同じだ」

 そう言ったのはラインハルトだ。

「……その伝えにきた人は、魔物の凶暴化とかそういうことは言ってませんでしたか?」

「それが、詳しく話を聞く暇もなく息を引き取ったんだ」

 とにかく、自分の所属するクランの状況を伝えに来たのだろう。
 そして、力尽きた、と。

「わかりました。
 とにかく行って調べてみないことには、なにも分からないってことですね」

 そして、俺たちの話し合いは終わった。
 受付まで行き、エールを探す。
 ラインハルトも、連れてきていた副総長を見つけてそちらに向かった。

「あの、なんのお話だったんですか?」

 エールは依頼の貼られた掲示板を見ていた。
 部屋から出てきた俺に気づいて、訊ねてくる。
 俺は、依頼のことを説明した。
 でも、二年前と類似点があることだけは黙っておく。
 まぁ、類似点といっても今のところは構成員から情報がもたらされたことくらいしかないけど。

「あー、だろうな、とは思いました。
 では、すぐに出発ですか?」

「そ、あと、今回はラインハルトとパーティを組むことになったから」

 言いつつ、チラリと俺は【白薔薇騎士団ナイツ・ローズ】の総長と副総長を見た。
 副総長は、炎のように真っ赤な髪と緑色の瞳をした美女だ。
 名前は、ミーアという。

「え、えええ?!
 あの、私、お役に立てるでしょうか?」

 エールは、すっかりいつも通りに戻っていた。
 あのスライム討伐時に出会った青年の話題は、彼女から出ていない。
 そこまではさすがに踏み込めないからなぁ。
 ただのそっくりさんの可能性の方が高いし。
 理由は色々あるけど、まず一つがあの青年がエールのことをガチで知らない素振りだったから。
 そして、なによりも【死者】は蘇ったりしないのだ。
 まぁ、知り合いに一人、死んでるのに動いてる人いるから一概に言えないけど。

「大丈夫大丈夫。
 むしろエールの回復魔法は絶対必要だから、来てもらわないと困る」

「わかりました!
 私、頑張ります!」

 そう、この一ヶ月で思い知らされたことは山ほどある。
 そのひとつがエールほどの回復魔法の使い手は、滅多にいないということだった。
 具体的に言うと、回復魔法で手足を繋げたりできる使い手が物凄く珍しいらしい。
 それなら、エールもSランクに上げてくれればいいのにな。
 この依頼が終わって、戻ってきたら交渉してみようかな。
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