上 下
1 / 40

門前払いされること、百回超えた話。正直、心折れそう。

しおりを挟む
 泣きたい。
 もう、泣きたい。
 泣いていいかな??

「うーん、ウチではスキルがひとつしかない方はちょっと」

 そうやって、様々な冒険者クランを訪れて、所属を断られること百回。

 この数日間。
 次こそは、次こそはと頑張って来たけど、もう心が折れていいと思うんだ。
 十回断られた時にはまだまだ、と頑張った。
 三十回を越えたあたりで、あれ?もしかして自分、社会に必要とされてない?となってきた。
 そして、今しがた記念すべき百回を越えたのだ。
 断られ続けること、百回。
 ちなみに【クラン】というのは、冒険者で構成される大所帯のチームのようなものだ。
 実に百個の冒険者クランから入会を断られ続けた。

 どの冒険者クランでも、実力を測る手合わせまで行かず、ステータスを確認して終わる。
 中には、俺の体格を見ただけで門前払いするところもあった。
 一つ目から門前払いだったっけ、そういえば。

 受付さんが俺のステータスを見て、【あっ⋯⋯(察し)】という顔をみることほぼ百回。

 実家の方ではそこまでステータス表示は重要視されていなかったから、まさかここまで影響が出るとは思っていなかった。
 そんな俺のステータスはというと、こんな感じだ。

 ■■■


 ○名前:ウィン・アキレア・フール・キングプロテア
 ○年齢:15
 ○状態:普通
 ○体力:999
 ○魔力:0
 ○職業:【冒険者】【渡航者】
 ○技能:[身体強化]
 ○特殊:[無し]


 ■■■

「ここも、ダメだった」

 世間は厳しい。
 思っていたよりも、ずっと厳しい。
 俺は、とぼとぼと百個目の冒険者クランの建物を出た。
 どうしよう。
 しばらく一人で活動するしかないかな。
 友達や仲間、出来るとおもってたのになぁ。
 ぐすん。
 はっ!
 いやいや、こういう時こそ笑顔笑顔!!
 父さん達に教わったじゃないか!
 ニコニコしてれば楽しくなるし、楽しいことがやってくるって!!

「ファイトだ、俺!!」

 と、そこで何かの商店のガラスに映った自分を見た。
 そこには、今にも泣き出してしまいそうな顔をした、ヒョロがりのチビが映っている。
 肩に引っ掛けているのは、傍から見れば布に包まれた細身の棒に見えるだろう。
 それは、この旅に出ると決めた時、父さんが祝いとしてくれたものだった。
 旅の友であり、相棒を布越しに握りしめる。
 こいつを使うのも、もう少し先になるだろうな。

 スキルは一個しかないし。
 顔だって十人並。
 せめてイケメンだったらなぁ。
 なんて、また落ち込んでしまう。
 我ながら、才能が花開く可能性が低いんだよなァ。
 魔力ゼロだし。
 ははははは。
 泣きたい。
 いやいや、母さんだって細かったけどめちゃくちゃ強かったし!!
 なんなら、もう一人の父さんも、魔力無しだったのに普通に強かったし!
 ちなみに、俺には三人の育ての親がいる。
 父が二人、母が一人だ。
 と説明すると高確率で、複雑な家庭環境なのか、と思われるがそうではない。

 それは、さておき。

 諦めるにはまだ早い、と思う、うん!
 暗く考えるのは、アレだ、お腹が減ってるからだ、きっと。
 ご飯を食べて、再挑戦だ。
 うん。
 何しろ、この王国内だけでも千を超える冒険者クランがあるし。
 贅沢を言わなければ、生産系のとこでもいいわけだし。
 でもなぁ、やっぱり戦闘系のとこに入りたいんだよなぁ。
 強くなりたいのに、そのスタート地点にすら立てない。

「でも、スキル1個だけだと、やっぱり無理なのかなあ」

 ハアっと、大きくため息をついた。
 いや、魔力無しなのもクランに入れない理由だろう。
 腕には自信があるほうだ。
 でも、腕試しすらさせてもらえないなら、意味が無い。

 景気づけに、お肉食べたいな。
 お腹空いた。
 でも、先々のこと考えると節約しないとだよな。
 けど、今日くらい。

 なんて、考えながら歩いていた時だ。
 たまたま通りかかった路地。
 その向こうで、男二人に取り囲まれている女性が視界に入った。
 ガラの悪い男たちだった。
 何やら鱗を模した刺青が、腕や首、刈り上げた頭に掘られている。
 そんな男達の手には、きらりと光る刃物。
 俺はそちらに走った。
 そして、跳んで膝を片方の男の横っ面にくらわせた。
 うし、まず一人!!

「え?」

 女性と、

「んな?!」

 残った男が声を上げる。
 因みに、飛び蹴りを喰らわせた一人目は完全にのびていた。
 俺は身をかがめ、残った男の顎を下から勢いよく蹴りあげた。
 男の手から、刃物が落ちた。
 刃物はカランっと転がってしまう。

「大丈夫ですか?
 お怪我は、ありませんか??」

 失礼にならない程度に聞きつつ、俺はその女性の手を取って大通りへと歩き出す。

「え、あ、はい!」

 女性が答えて、ホッとする。
 怪我が無くてよかった。
 そして、そのまま近くの衛兵の詰所へと向かう。
 詰所へと女性と共に駆け込んで、事情を話す。
 すると衛兵はすぐに女性を保護してくれた。
 そして、詰めていた衛兵が先程の路地へと駆けていく。
 俺は、そこで詰所から去ろうとしたが、グッと腕を引っ張られた。
 引っ張ったのは、女性だった。
 女性、というよりも少女といった方が正しいかもしれない。
 よくよく見れば、それは少し大人びた少女だった。
 俺と同い年か、少し上くらい。
 腰まで伸ばした銀色の髪と、紅い瞳をした美少女だった。
 美少女は、俺の腕を掴んでいた手を離すと、

「あ、あの、なんてお礼を言ったらいいか!
 本当にありがとうございました!!」

 そう言って、深々と頭を下げてきた。

「いえいえ」

 ヒラヒラとなるべく美少女が気負わないように、軽薄な感じで手を振って、俺はその場を後にしようとする。
 なんなら、頭の中は今日の宿と食事のことに切り替わっていた。
 腹減った。
 しかし、また、ガシッと腕を掴まれた。

「あ、あのあの!!」

 美少女が、なにやら忙しなく言ってくる。

「はい?」

 のんびりと、俺は返した。

「お礼させてください!!」

 美少女がそう言った直後。
 美少女の言葉が聞こえていたのだろう。

「ごめんねぇ、この後、詳しく聴取するから二人とも帰らないでねぇ」

 なんて、衛兵に言われてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【緊急】村で人喰いモンスターが暴れてるらしい【事態】

一樹
ファンタジー
サメ映画をパク……、オマージュした異世界パニックモノです。 掲示板話です。 ジャンルにパニックが無かったので、ファンタジーにしてます。

田舎あるある~嘘のようなホントの話~

一樹
エッセイ・ノンフィクション
タイトル通りの内容です。 あと愚痴も含まれます。 どんな内容でも大丈夫、という方のみ閲覧をお願いします。 盛ってるとか、嘘でしょ、と言われそうですけど。 残念なことに令和でも残ってるんですよ、一部ですが悪習が(´;ω;`) 悪習に関しては、早く滅びてほしいです(´TωT`)

【ねwえww】転生して現在進行形で悪役令嬢シチュが展開してる件【助けてwww】

一樹
ファンタジー
悪役令嬢モノの王道シチュの中、突如前世の記憶が戻った主人公。 何故かスレ立て出来ることに気づき、スレ民に助けを求めることにした。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

島流しなう!(o´・ω-)b

一樹
ファンタジー
色々あって遭難したスレ主。 生き延びるためにスレ立てをした。 【諸注意】 話が進むと、毒虫や毒蛇を捕まえたり食べたりする場面が出てきますが、これはあくまで創作です。 絶対に真似しないでください。

七番目の魔王の息子

一樹
ファンタジー
五歳の時に要らない子だから、と親戚の家の子になったユウ。 十年後、兄達が次期魔王候補としてお互いを潰しあったがために、ユウがその候補にあがってしまう。 実家からの手紙を破り捨て、陰キャな彼は今日も妄想に浸る。 けれど、実家は何故か追い出したユウを魔王に就かせたいらしく、教育係兼許嫁(めっちゃ美少女)を送り込んできたのだった。

【採取】そして誰も居なくなりそうなやつ【依頼】

一樹
ファンタジー
ジェシーとハルは、二人っぼっちの冒険者パーティ。 それでもその実力は折り紙付きで、つい先日も高難易度のドラゴン討伐を終えたばかりだった。 そんな彼らの次の仕事は、とある【花】の採取依頼。 けれど、蓋を開けてみれば、【花】に関わった者が変死を遂げていた、所謂いわく付きの依頼だった。 ※こんなタイトルですが、掲示板回はありません。

生き残り冒険者の戯言

一樹
ファンタジー
冒険者ギルドに併設された酒場には、必ずといっていいほど酔っぱらいの中堅・常連冒険者がたむろっている。 この日、とある常連と新人冒険者が殴り合いの喧嘩になった。 その喧嘩はすぐおさまったものの、常連は酒場のアルバイトにぶちぶちと愚痴のようなものを話し始めた。

処理中です...